#195 絶望的
東京本部、対策2専用室……
「速報速報!本部長室に凄い人達が集まってるよ!」
そう言って部屋に入ってきたのは、対策3の米田だった。米田は宇土司令部隊所属のため、宇土の行動は嫌でも把握してしまっている。なので米田は本部長室に色々な人が集められていることを知っていた
「凄い人達って具体的に誰だ?」
そう言ったのは神尾だった。神尾が班長であるC班は、米田が入ってきた扉から一番近くにあった。なのでその中でも一番米田に近かった神尾はそう質問した
「本部長室に宇土と榎本、あと特殊部と警備部、テロ対策部の人が一人づつ……」
米田はそう言った。米田は司令官とはいえ、対策部の人間しか名前は知らず、他の部の人はいることは知っているが名前は知らないという状況だった
「話し合いに他の部が入るということは、余程のこと何でしょうね」
そう言ったのはA班の佐瀬だった。佐瀬は米田の声が聞こえたため、話を聞きにやってきたのだ
「何を話しているかまでは分からないのか?」
そう聞いたのはB班の川中だった。しかし米田は部屋に入っていなかったため内容までは分からなかった
「部屋に入ったわけではないのでそこまでは……」
米田はそう言うと周りを見た。すると来たときとは違い、自分の周りには先程質問してきた三人の他にも、冨沢、小橋、相須、九条がいた
「あくまで予想ですが、愛護団体に関することかと…… あくまで我々が潰したのは本部だけで、他県にはまだ狂信者がいますし」
「確かに九条の言う通りだな。それならテロ対策部がいる意味が分かる」
川中は頷くとそう言った
テロ対策部……この課は名前の通りゾンビに関わるテロ行為を未然に防ぐための集団である。危険な人間、組織と戦うことが多いため、特殊部と合同作戦を行うことがある
「けど、それだと近いうちに何か起きるってことですよね?」
佐瀬はそう言った。確かに普通に考えれば、このメンバーが集まっているのに何も起きないわけがない。しかも今回は対策部だけの話ではなかった。なのでかなり大きな事件が起きるのではないかと、誰もが考えた
「もしかして愛護団体支部が報復しようとしているのでは?それなら規模もかなりのものになるかと……」
小橋は今までの話を聞き、そう予想した
「十分あり得る話だな。だとすると他の県の偉い人間も慌ててるはずだが……」
佐瀬がそう言ったときだった。突然後ろにある扉が開いた。なので皆そろってその扉を見た
「ん?皆さんどうされました?」
そう言ったのは対策1、第四部隊副隊長の鏡谷だった。鏡谷は部屋に入るやいなや、何故か皆に見られ困惑していた。
「いや、何でもない。それよりどこに用事があるんだ?」
川中は鏡谷にそう聞いた。すると鏡谷は手に持っていた紙を広げ、それを川中に見せながらこう言った
「明日行う作戦を手伝って頂けないかと思いまして……」
鏡谷がそう言うと神尾と佐瀬もその紙を見た
その紙には、『スーパーマーケットLIV、羽町店、強制捜査』と書かれていた
「この作戦は?」
「これが明日行う作戦になります。この店は愛護団体の資金源ですので、他県の店も同時に行う予定です」
鏡谷はそう言うと紙を折ってしまった
スーパーマーケットLIV、これはゾンビ愛護団体が資金確保のために作った店である。と、いっても従業員のほとんどはゾンビ愛護団体と関係ない
「分かった。じゃあ俺の班と林班が行こう」
神尾はそう言うと林班専用スペースを見て「良いよな?」と言った。林は作業をしながらとはいえ、話を全て聞いていたため「はい」と答えた
「林二佐、まさかとは思いますが、明日……」
「あぁ、そのまさかだ」
林は小牧の質問にそう答えた。すると小牧は恐る恐る後ろの棚を見た
「まだまだ沢山ありますね」
佐伯はそう言うと棚の近くに置いてあった段ボール箱から冊子を取り出した
林班は小橋、北音寺班と共にゾンビ愛護団体、及びゾンビに関する資料を探していた。すでに林班専用スペースに五つの段ボール箱が置いてあるが、資料庫にはこれ以上の資料があった。なので本来は明日の作戦に参加している余裕などなかったのだ
「この作業を三日で終わらせろとは絶望的な任務ですね」
中鈴はそう言うと立ち上がり、米田の話を聞いている冨沢を無理矢理連れてきた。けれどこういう作業を得意としない冨沢が手伝ったところで、作業は早くなるのだろうか?むしろ冨沢が何かやらかさなければ良いと思う林だった……
東京本部、本部長室……
「スーパーマーケットLIV、全国に六十店舗あり、そのほとんどが関西、中部地方にあります。東京には二店舗だけです」
榎本はそう言うと手帳を閉じた。すると柏木かこう言った
「二店舗だけなら対策部だけでいけるか?」
「はい。羽町店は布田部隊、田街店は宗部隊が担当します」
「そうか。何にせよこの店を潰さない限り愛護団体に金が入る。その店は大丈夫なのか?」
テロ対策課の秋好が三ツ木を見ながらそう言った。すると三ツ木は腕を組んだままこう言った
「問題ない。決定的な証拠が出るようにしている」
三ツ木がそう言ったときだった。突然スマートフォンのバイブレーションが聞こえてきた。榎本が誰だろうと思っていると、三ツ木が「失礼」と言い、スマートフォンを取り出した
そして画面をつけるとここにいる皆にこう言った
「工作成功。あとは対策官次第だ」
鏡谷斗哉
二等ゾンビ対策佐官
武器……斧槍
剣
拳銃




