#169 裏表
午後一時、東京本部本部長室……
バンッ!
「脱走です!」
突然扉が開くと中に宇土が入ってきた。宇土の慌てかたからして、良からぬことが起きたことを察した仲野は宇土にこう言った
「少し落ち着いてくれ。何があったんだ?」
仲野にそう言われると宇土は大きく深呼吸した。そしてこう言った
「殺所から例の男が脱走しました!」
宇土は仲野にそう言った。すると仲野は宇土にこう言った
「分かった。殺所付近を今すぐ調べろ。警察に検問もしてもらえ!」
「了解」
宇土はそう言うと部屋から出ていってしまった。多分これから宇土は対策2専用室に行き、班を集めるのだろう。そして殺所付近を調査しにいくのだう……
ガチャッ!
突然扉が開いた。しかし今回は宇土の時とは違い、入ってきた人は慌てていなかった
「仲野本部長。少しお話が……」
そう言ったのは情報管理課の榎本だった。そして榎本の後ろには部下である元町も一緒にいた
「ここで話すのは嫌でしょ?いま第三会議室空いてるからそこで話そう」
仲野はそう言うと壁にかけてあった鍵を手に取り、部屋を後にした。この殺所から脱走したという情報が届いてからすぐ、情報管理課の人間が来たということは、今回の脱走事件は何か裏があるに違いない。仲野はそんなことを考えながら第三会議室の鍵を開け、中に入った
「話って殺所での脱走事件のことだよな?」
仲野は榎本にそう聞いた。すると榎本はこう言った
「もう知ってたんですね」
「あぁ。さっき宇土から聞いたばかりなんだけどな。それより今度は何をしたんだ?」
仲野は榎本にそう聞いた
「あの脱走は情報管理課が起こしたものです」
「情報管理課が関わったということは、脱走した男ってのは潜入捜査官でいいのか?」
「はい。潜入捜査官であってます」
榎本は頷きながらそう言った。すると今度は後ろにいた元町が仲野にこう言った
「しかしこの潜入捜査官は、伊中の時とは少し違います」
「違う?どこが違うの?」
「それは伊中が潜入捜査していたときよりも、階級がうえ。つまりエースやデュースといった人間より立場が上なのです」
元町はそれから、その潜入捜査官は六年前から活動を行っていること。そして一年に一回、こうやって情報交換していることなどを仲野に説明した
「裏ではそんな事が起きてたのか。ほんと驚きだな」
仲野はそう言った。しかし潜入捜査はいつから行われているのだろうか。仲野はてっきり上野公園新平地作戦後から行われているものだと思っていた。なのでつくづく東京本部は凄いなと感心するしかなかった
「驚いている場合じゃないですよ。それよりこれを見てください」
榎本はそう言うと仲野に一枚の写真を見せた。その写真にはメモ用紙が写っており、そのメモ用紙にはこう書いてあった
『アルファ、ベータ、ガンマ、シータ、パイ、デルタ、ナブラ、ラプラシアン、ダランベルシアン、ノルム、サイン、ベクトル、シグマ(関係良好)、ファイ、』
「何だこれは?」
仲野はそれを見ると、ついこう言ってしまった
「これは潜入捜査官が調べたコードネームです。これらは数学記号から取られたものだと思われます」
そう言ったのは元町だった。どうもこれを見たとき頭が痛くなったと思ったら、やはり数学に関するものだったのか
「嫌なコードネームだな」
仲野は過去の苦い思い出を頭によぎらせながらボソッとそう言った
「それよりどれが潜入捜査官のコードネームなんだ?」
仲野は二人にそう聞いた。するとその質問には榎本が答えた
「『ファイ』というのが潜入捜査官のコードネームです。その潜入捜査官の名前は白井政晴といい、確か仲野本部長と同じ時期に入局しています」
「そ、そうか」
そのとき仲野は困惑していた。自分が入局したときに白井という男がいただろうか。ただそれだけが引っ掛かり、気になった。しかし今はそんなことを聞いている暇はない。なので仲野は二人にこう言った
「分かった。今回の脱走については俺がはぐらかしておく」
「有難うございます。それではまだ任務が残っていますので……」
榎本と元町はそう言って会議室から出ていってしまった。それにしても東京本部は凄い組織である。今まで本部の表側しか見てきていなかったというのもあるけれど、裏側がここまで凄いことになっているとはさすがに予想できなかった
「さて、今回の件について郡山に詳しく聞いておくかな」
仲野はボソッと言うと会議室から出ていった
東京本部の表の顔を仲野が担当し、裏の顔を郡山が担当する。こんなやり方でも組織としてうまくいっていることはある意味凄いのではないか?
そう考える仲野だった……
仲野昂祐
ゾンビ殲滅局東京本部長
武器……拳銃




