#168 脱走
それから数時間、林班は唯一生き残った襲撃者の調査をした。しかしこの男は何も話さないどころか、身元が分かるような物を何も持っていなかったので、今のところ、この男について何も分かっていなかった
「一回休憩しよう。この調査は別の角度から見る必要がある」
林はそう言うと部下を連れてこの監獄スペースから出ていった。林達が監獄スペースから出ると、そこにはどこかで見たことのあるような女性が立っていた
(確か榎本と一緒にいた人では?)
林はそう思いながらも階段へと向かった。いくら顔を知っているとはいえ、話したことのない人だ。しかも榎本と違っていかにも真面目そうなオーラを放っている。そんな人に林は話しかける事は出来なかった……
「やっと出ていったか」
及川は林班が階段を下りていくのを見るとそう言った。そして扉を開き監獄スペースへと入った。そして一直線に、さっきまで林班が調べていた男のいる牢獄へと向かった……
「及川です。用件をお願いします」」
及川は牢獄の前に立つとそう言った。すると牢獄の中にいる男性はこう言った
「エイトが死んだのは知ってるだろ?」
「はい。死体も本部が管理しているので把握してます」
及川はそう答えた。エース達の仲間だったエイトは、マル食品羽町工場作戦にて、伊中に殺されていた。なのでエイトの遺体は東京本部が回収していたのだ
「実はあの後、生き残ったナインとネイブが何者かによって殺害されたんだ」
「え?それは誰によって……」
「殺したのはエースだよ」
その男は及川にそう言った。しかしエースが仲間であるナインとネイブを殺したというのは信じられないことだった。それに何故殺したのか理由が分からなかった
「殺害理由は自分達と意見が違ったから。エース達の考えは『あくまでゾンビに全てを任せ、自分達はあくまで戦わない』という考えで、エイト達の考えは『自分達が直接手を下してでも殺す』という考えだったんだ。だからナインとネイブは殺されたと噂されてるよ」
エース達の組織についてはまだ詳しくわかっていない。しかし仲間だろうと考えが違っていれば、殺してしまうほどある意味凄い組織というのだけは分かった
「けれど何で仲間を…… アイツにとっては仲間は多い方が良いはずじゃ……」
「確かにそうだ。けれど聞いた話だと、エイト達の考え方では本来の仕事はできないという理由らしい。さすがに六年間潜入捜査してるけど、その本来の仕事ってのはまだ分からないんだけどね」
男はそう言うとニヤっと笑った
「そうですか……」
及川はそう言うとポケットから鍵を取り出した。そしてその鍵を使って男の入っている牢獄の鍵を開けた
「そう言えば及川って潜入捜査官辞めたの?」
その男は及川にそう聞いた。及川が潜入捜査官を辞め、情報管理課に入ったのは今から五年前…… なのでほとんどの人が、情報管理課の人間だと知っている。しかし、この男は及川がまだ潜入捜査官だった時に、エース達の組織に潜入捜査を開始したため、それを知らなかったのだ
「辞めましたよ。今は情報管理課の人間です」
及川はそう言った。しかし情報管理課が出来たのは上野公園新平地作戦の後…… つまり五年前だ。なので情報管課がの存在自体この男は知らなかった
「まぁいいや。詳しくはこの仕事が終わったら聞こう。それより及川に渡すものがある」
男はそう言うと及川に一枚の小さな紙を渡した
「それじゃあそろそろ行くよ。それと拳銃の件については多分俺だから疑っても意味ないよ」
「そうですか。白井さん。任務が終わり次第私のことについては話します」
及川がそう言うと白井と呼ばれる男は牢獄から出た。そして白井にこう言った
「悪いけど今は白井じゃないんだ」
「え?」
白井の突然の言葉に及川はそう行ってしまった。しかし白井は及川を見ながらこう言った
「今はとある組織のメンバー、『ファイ』なのさ。それじゃあまたね」
白井はそう言うと走ってどこかへ行ってしまった。及川は白井がどこかへ行くとすぐに牢獄の鍵を閉めた
いくら白井が潜入捜査官だとはいえ、この事は一部の人間しか知らないことだ。もちろん当然林班もこのことを知らない。なので及川は白井が脱走したように見せかけなくてはならなかったのだ
「さて、こんなもんでいいかな……」
及川はそう言うと、白井の入れられていた牢獄に細工をしてから監獄スペースを出た……
それから十分後、休憩を終えた林班が監獄スペースに戻ってきた
「林!確か襲撃してきたやつの牢獄ってここだよね?」
そう言ったのは冨沢だった。すると林はこう言った
「そうだよ。それくらい分かるでしょ」
「いや、そうじゃなくて……」
小牧は何かあったのか知りたくて、襲撃者の収容していた牢獄の中を見た。すると冨沢の言いたかったことがすぐに分かった
「林二佐!牢獄に誰もいません!」
「はい?」
小牧がそう言うと林はすぐに襲撃者を入れていた牢獄まで駆けつけた。そして扉についている食事を入れる穴から中を見ると、そこには本来見るはずの男がいなかった……
「中鈴!事務室に伝えてこい!敷地内を捜させるんだ!」
「了解」
中鈴は林からの伝言を伝えるために監獄スペースから出ていった。中鈴が伝えにいっている間に林達は、誰もいなくなった牢獄を調べるために扉を開けた
「扉を無理矢理開けようとしていないということは、どうやって脱走したんでしょうね」
佐伯はそう言った。この牢獄からはこの扉を通らない限り抜け出すことはできない。確かにこの牢獄には窓もあるが、その窓には鉄格子があり、人が通ることなど不可能だった
「これ普通に考えて脱走なんて無理だろ。奴等の仲間が外から開けたとしか思えないわ」
冨沢は分からなくなり、適当にそう言った。するとその発言を聞いた林がこう言った
「冨沢それだ!この殺所の人間を全て調べればもしかしたら共犯者が出てくるかも知れない。この事については俺が本部に連絡する!」
林はそう言うと無線機を取り出し、本部に連絡をし始めた。その間小牧達は他に手がかりになるものがないかを探し始めた。しかし手がかりになりそうなものは何一つとなかった……
白井政晴
潜入捜査官
武器……拳銃
その他は不明




