#159 無知
「ほんといい武器使ってるわね!」
青池はそう言うと何度も何度も剣でゾンビを斬った。しかし青池は普段からゾンビと戦っていないせいでゾンビとの距離を詰めすぎてしまった。そんな青池にゾンビは飛び付いた
「あっ」
青池は噛みつかれる直前にゾンビを見た。しかしその時にはすでにかわせるほどの距離はなかった……
ガブッ!
ゾンビは青池の左腕に噛みついた。青池はすぐに右手に短剣を持つと、その短剣でゾンビの顎を斬った。するとゾンビの顎は外れ青池の左腕は自由になった
「伊東!右をやれ!」
伊中はそう言うと青池に噛みついたゾンビの左足を切り飛ばした。それに続くように伊東もゾンビの右足を切り取った。するとゾンビは足がないため床に倒れてしまった
「この野郎!」
青池はそう言うと剣を投げ捨てた。その代わりにゾンビ対策課の警察官に支給される短剣を両手で持った。そして青池は短剣でゾンビの首を斬った。しかし短剣というだけあってかなり斬りづらかった。なので何回も斬るとやっとのことでゾンビの首は体から離れた……
「青池さん……」
そう言ったのは戸田だった。ゾンビを倒し終えたとき青池は腕から血を流していた。しかし青池は戸田を見ると笑みを浮かべた
「班長、撃ちますよ」
笛中にそう言ったのは部下の風戸だった。ゾンビに噛まれた人間は気絶させた状態で刹所に運ぶ。そういう法律があるため、風戸はテーザーガンを手に持っていた
「分かった。説明は俺がする」
笛中がそう言うと風戸はテーザーガンを持って青池の前に移動した。そして少しすると青池は床に倒れてしまった
「何やってんだ!」
そう言ったのは有木だった。しかし笛中は有木を無視して風戸にこう指示した
「風戸は彼女を上まで運んでおいてくれ」
「了解」
そう言うと風戸はテーザーガンをしまい、指示通り青池を運び始めた。しかし身長が青池より低いため、引きずってしまっていた
「笛中!これはどういうことだ?」
有木は怒りながらそう聞いた。すると笛中はこう言った
「彼女はゾンビに噛まれた。もちろんあなた方も知ってると思いますが、ゾンビに噛まれた人間は数時間でゾンビになってしまう。だから噛まれた人が出た場合は麻酔銃やスタンガン、テーザーガンなどで動きを封じ、殺所まで運ぶことになってるのです」
ゾンビに噛まれるとゾンビ化してしまう。このことは誰もが知っていることだった。しかし有木達は青池がゾンビになってしまうことが信じられなかった。彼女は行いはそこまでよくなかったものの、ゾンビ対策課では一番強かった。なので、そんな青池が居なくなってしまうと思うと現実から目を背けたい気持ちでいっぱいだった
「ゾンビに噛まれると99.9%の確率でゾンビになってしまう。君達は残りの0.1%…… つまり彼女がゾンビに噛まれても平気な体だと信じるか?」
笛中は戸田にそう言った。すると戸田は笛中にこう質問した
「笛中さんは過去にゾンビに噛まれた人間がゾンビ化しなかった例をいくつ知ってますか?」
笛中はそう質問されるとはっきりとこう言った
「俺はこの仕事は五年以上やってるが、生きて現代社会に戻ってきた人は一人しか知らない」
「その人は今何をしているか分かりますか?」
「もちろんだ。そいつはゾンビ対策官として働いている。かなり強いぞ」
笛中はそう言った。そんな時だった。エレベーターから宇土の部下である米田が降りてきた。そして皆の前に出ると拡声器を使ってこう言った
「地上は制圧完了した!地下も制圧完了したら撤退せよ…… だってよ」
米田は宇土からの伝言を地下にいる対策官に伝えると、拡声器をおろした
「地下も制圧済みだ。とりあえず上に行こう」
笛中はそう言うとエレベーターに向かって歩き始めた。しかしエレベーターに乗り込む前に立ち止まると、有木にこう言った
「言い忘れてましたが、彼女がゾンビになった場合、我々はすぐに彼女を殺します。それとそのときは報告します」
笛中はそう言うと他の対策官と共に地上へと上がっていったてん……
「笛中さん。わざわざ殺すことを伝えなくても良かったのではないですか?」
そう言ったのは部下の墳本だった。すると笛中はこう言った
「それについては知ってると思ったんだよ。あの人達は一応、俺達と同様ゾンビを相手に戦ってる人間だし……」
笛中はそう言うと上を見た。このエレベーターには天井や壁が無く、あくまで床だけが上下するものだった。なので地上までドのくらいだかは上を見ればすぐに分かった
「もう少しで地上だ。一応武器持っておけ」
「了解」
笛中が指示すると、一緒にいた墳本、伊東、中畑は自分の武器を、米田は拳銃を取り出した
「だけど警察官とはいえ、ゾンビ対策課何だからもう少し色々なことを知ってほしかったな……」
笛中はボソッとそう言った。警察官はゾンビ対策官よりゾンビを倒す技術も無く、知識とほとんどなかった。なのでゾンビ対策官からすると作戦に警察官が関わってくるのは邪魔だった
「多分知識面では無理かと。殲滅局が情報提供するなら話は別ですが」
伊東は笛中にそう言った時だった。五人の乗るエレベーターは地上に到着した
「さぁ正門に行こう。そこに宇土や他の班がいるはずだ」
笛中はそう言うと正門へと歩き始めた。地下で警察官達が悲しみにくれているとも知らずに……
中橋悠斗
一等ゾンビ対策官
武器……剣
短刀
拳銃




