#143 苦
東京本部、対策4専用室……
「あれ?どこに置いたっけな~」
そう言ったのは榎本だった。すると近くにいた元町はこう言った
「今回は何を無くしたんですか?」
「あれだよ。マル食品作戦の序章について書かれてるやつ」
榎本は机の上を漁りながらそう言った。榎本は整理整頓が苦手だった。なので重要な書類も度々無くしていた
「何やってるんですか!だから私が預かると言ったのに……」
「すまん。探すの手伝ってくれない?」
榎本がそう言うと元町は榎本の机にあった書類を一枚一枚確認し始めた
「あの情報はまだ一部の人しか知らないのに……」
元町はそう言いながら書類に目を通していった。榎本の無くした書類。それは十一月に行われる「マル食品羽町工場作戦」についての書類だった。この作戦については一部の人間しか知らず、本来ならば厳重に扱わなくてはならないものだった。そんな書類は榎本は無くしてしまったのだ
「もしバレたら伊中さんが殺されるかも知れないんですよ」
「反省してます」
榎本は元町にそう言った。榎本はこの対策4情報管理課の中で一番偉い立場にいた。しかし榎本はほぼ毎日のように部下の元町に迷惑をかけていたため、立場が逆転しかけていた
「何か心当たりはないのですか?」
元町はそう聞いた。なので榎本は考え始めた。するとさっきまで作業していた「中宮マンション」に関する資料を思い出した。この資料は林に頼まれてやっていたものだった。しかも運の悪いことにこの資料はすでに林に渡してしまっていたのだ
「あの紙、頼まれた資料と一緒に林に渡しちゃったかも……」
「林二佐ならその作戦について知ってるので大丈夫でしょう。ですが、今すぐ受け取りに行って下さい」
榎本はそう言われると資料を取り戻すために部屋から出ていった。林班の小牧達がその資料を読んでいるとも知らずに……
「ほんと、榎本さんは何を考えてるのかしら」
元町はそう言うと榎本の席に置いてある資料を片付け始めた。するとそんな元町の所にフードを被ったいかにも怪しい人物が近付いてきた
「伊中は大丈夫なの?」
その人はそう聞いてきた
「大丈夫。貴方の出番はまだよ。復帰は伊中さんが帰って来てからかしら」
元町はそう言うとカレンダーの十一月五日の所に赤ペンで丸をつけた
「それより私が死んでないことバレてないかしら」
「それは大丈夫。伊中が貴方を殺したことになってるみたいだから」
元町はそう言うと榎本の机においてあった資料本を棚に片付けた。そのときだった。突然扉が開くと、中に榎本が入ってきた
「元町、終わった……」
榎本がそう言うと、元町はこう聞いた
「何があったんですか?」
「例の資料を林の部下に読まれた」
榎本はそう言った。すると元町は榎本の両肩を掴んでこう聞いた
「その紙は取り戻してきましたか?」
「それなら大丈夫だ」
榎本はそう言うと元町に一枚の紙を渡した。元町はその紙を受け取り、見るとそこにはマル食品羽町工場作戦での一番大切な情報が書かれていた
「仕方ない。これも事故だ」
榎本はそう言うと机の上に広がっていた資料を手に取った
「あの、本当に大丈夫なのでしょうか?」
そう言ったのはフードを被っている人だった。どうやら榎本が極秘情報が書かれた紙を普通の対策官にバラしたことを知り、不安になって聞いてきたのだ。すると元町はこう言った
「大丈夫よ。この事は私達に任せて。貴方は情報管理課が全力で守るから」
そんな元町の姿を榎本は少し離れた所から見ていた。元町も初めて情報管理課にきたときは色々と失敗していた。なのに今では自分より使える人材になったと考えると嬉しかった
「さて、仲野本部長に謝罪してくるか。謝罪なら慣れてるしね」
榎本はそう言うと部屋から出ていってしまった。榎本のいなくなった対策4の部屋では元町がフードを被っている人とまだ会話をしていた……
東京本部、対策3専用室……
「宇土、少しいいか?」
そう言ったのは今井だった。今井は宇土を応接室に連れていくと、こう言った
「今から話すことは絶対他人に話すな。いいな?」
「はい」
宇土はそう言った。宇土は約四年間ほど今井のいる対策3で司令官として働いてきたが、こんな今井を見るのは初めてだった。普段の今井は基本宇土に話しかけなかった。ましてや応接室に連れていくことなど一度もなかった。なので宇土は不思議そうに今井の話を聞き始めた
「宇土に話す内容をざっくり言うと、伊中の件だ。そして次に行われる大規模作戦での事も話す」
「それって俺や新宮が退室させられてから上層会議で話していたことですか?」
宇土はまだ仲野に上層会議を退室させられたことを根に持っていたのだ。なので宇土はそう聞いた
「あぁ。宇土が退室したあと上層会議では俺や藍卯を混ぜてその話をしていた。この話は宇土を信用して話すことになったが、腰を抜かすなよ。かなり凄いことになってるから……」
今井はそう言うと、伊中が蒔村を殺害したことや大規模作戦について話始めた……
及川咲絢
中等製作官
武器……拳銃




