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僕らはゾンビ対策官  作者: ソーダ
第二章 弱体化
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#091 不可能

九月八日、東京美術館


午前三時……


海外から来る絵はまだ太陽が昇っていない時刻にやって来た。なので絵を守るために笛中班は他より早く美術館にいた。しかしまだ秋だといっても寒かった。なので夏の時とは違い、支給されている上着を着ないと凍りそうなほどだった……


「こんな朝から仕事とは大変だね……」


笛中は貴重な絵をトラックから下ろしている美術館の職員を見てそう言った。しかし自分達も変わらなかった。美術館に来る絵を守るためにこんな時間から仕事をしているのだ。しかも、ゾンビは夜の時の方が通報数が多い。ゾンビは何故か暗い所を好む。なので昼間は下水管や建物の隙間などの暗いところにいるところが多い。しかし夜になると全体が暗いので外に出てくるのだ。


「今日はゾンビ出てきませんね。普段なら外にいるだけでゾンビの声が聞こえるのに……」


笛中の隣にいた墳本がそう言った。確かにいつもは外に出るだけでゾンビらしき姿を見るものなのだが、今日は違った。絵が美術館に到着する三十分前に笛中達は美術館の裏側などの暗い所をまわって歩いたが、その時から一体も見つけていなかったのだ。見落としたのかも知れないと思うかも知れないが、五人もいるのだから一人は気付くはずだ。しかもそこらにいる素人ではなく国から認められているゾンビ対策官だ。ゾンビに対する反応はとてつもなく早い。


「もしかしたら襲撃されるかも知れない……」


少し前に起きた東京駅攻防戦…… この時、他の班よりも早く来ていた染井が言っていた言葉を思い出したのだ。


「攻防戦の夜もゾンビが見つからなかったらしい…… だからもしかしたらあの夜みたいに……」


「まさかそんな事がまた起きる訳ないじゃないですか!脅かさないでくださいよ」


そう言ったのは部下の橋中だった。強がっている橋中だったが、彼は他の人と違って顔をこわばらせて震えていた。


「100メートル……」


突然風戸がそう言った。しかし他の人達にはなんの数字なのか分からなかった。


「なにそれ?」


「そこにゾンビが集まってる」


風戸がそう言った時だった。突然笛中の肩に手が置かれた。笛中はこの話の流れからゾンビが来たのだと思い、剣を振ってしまった。すると鈍い音がした……


「笛中二佐、殺さないでくださいな」


笛中はそう言われると後ろを見た。するとそこには部下を連れた林がいた。


「脅かさないでくれよ!」


笛中はそう言うと剣を下ろした。


「何か脅かすようなことしました?」


林はそう言うと剣をしまった。すると笛中は林に一枚の地図を渡した。林はその地図を見ると、それは東京美術館の案内地図だった。


「今の所はゾンビも出ていない平和な状態だ……」


笛中はそう言うと林の足下に何かが転がってきた。暗くてよく見えなかったので、懐中電灯で照らすとそれはゾンビの首だった……


「前言撤回。今は別だ」


笛中はそう言うと剣を抜いた。そして首の転がってきた方向を見た。するとそこでは笛中の部下達がゾンビと戦っていた。


「結構いるな……」


笛中はボソッと言うと剣を持って部下達の所に行ってしまった……


笛中の持つ剣は他の対策官の持つロングソードではなく、フォルシオンを使っていた。なので使い方もよく分からないうえに、この武器を持ち始めたのは東京攻防戦後からだった。なので実質この武器でゾンビを倒すのは今回が初めてだった……


「林!正門からゾンビが入ってきてる!」


そう言ったのは冨沢だった。今、笛中班が倒しているゾンビは正門から入ってきているのだろう。しかし、正門に行こうにもすでにゾンビが入ってきており近づくことすら出来なかった……


「林!全員を建物の中に入れろ!二班だけでこの量を倒すのは無理だ」


笛中はそう言うと走って建物の方へと行ってしまった。林はあまりにも突然の指示で一瞬迷ったが、笛中班が逃げてきた方向を見るとすぐに部下を引き連れて建物の方へと走り始めた。そして、この建物に避難した時には美術館の敷地内に大量のゾンビが入っていた……



「全員屋上に避難してください。ここは危険ですので」


笛中は美術館の職員にそう言った。すると近くにいた職員は階段をのぼっていった。しかし、一部の職員達は絵を守るために屋上へ運ぼうとしていた。しかもその絵は大きかったのでかなり登るのが遅かった。その姿を見た笛中は部下の橋中と今に運ぶのを手伝うよう指示をした……




ピッ!


そんな音がすると小牧は無線機をしまった。


「林三佐、どうやら小橋班がこちらに向かっているようです」


小牧は林の指示で宇土に助けを求めていた。しかし、予想より本部に人が足りず今行けるのが小橋班だけだったらしい。かといって一班だけで大量のゾンビを倒すことなど無理に等しかった。


「最低でも新宮部隊が来ないとこのゾンビを相手にするのは無理だ」


林はそう言うと窓から外を見た。そこには大量のゾンビが敷地内を歩き回っていた。しかし、この建物の中は安全だった。建物にある入り口に鍵を閉めシャッターまで下ろしたのだ。なので何かがない限りは安全だった。


「そんなに絶望って感じの顔するなよ。一時間いないには本部の連中がくるはずだ。それまで耐えればいいんだよ」


笛中はそう言うと絶望に浸っている林の肩を叩いた。しかし、ゾンビがいる限り安全な場所はない。過去の戦いでそう学んだ小牧は槍を持ち、何か異変がないか耳をすませていた……



笛中叶多ふえなかかなた


二等ゾンビ対策佐官


武器……フォルシオン

フォールディングナイフ

ダガーナイフ

拳銃

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