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終節『ただ一人の【ゼロ】』

【0】



 現在、レイガはエインと一緒にシルヴァル湖国のレクス将軍の元に赴いていた。

 ただし、レイガはエインを抱え、空を浮いて、レクス将軍を見下ろしている状態でだが。


「どうも、レクス将軍、二十年振りくらいですね」


「ぐ、やはりいたか。【ゼロ】」


「それはそうでしょう。俺が学院をいるのを知っているはずだ。大方、世界樹を狙ってきたんだろう? だが、本当に構わないんだな?」


 レイガは強烈な威圧を放つ。


「どういうことだ!」


「俺を敵に回して、構わないかと聞いている」


「っ!」


 レイガの言葉を聞き、レクス将軍は動揺する。


「我々には力が必要なのだ。【ゼロ】、例え、あなたが相手でも押し通る」


「その覚悟はしかと受け取った。それで、エイン先生はどうする気だ? エイン先生はお前らのスパイだろ?」


 レイガが言うと、エインとレクス将軍は驚く。


「知っていたんですか?」


 エインが聞くとレイガは平然と答える。


「そりゃそうですよ。ま、大した事はしてこなかったし、関係無いですけど」


 それを聞くとレクス将軍は笑う。


「ははは。やはり、【ゼロ】に小細工は通じなかったか。安心していい。今のところは何もするつもりは無い」


「そうか、良かった彼女は優秀な教師だからね。失うわけには行かない。じゃ、エイン先生、ちょっと捕まってて。すぐ終わらせるから」


「は、はい!」


「準備は良いかな? 【ゼロ】。では始めようか! 全軍突撃!」


 いつの間にか戦闘準備を終えた騎士団が、レクス将軍の号令で突撃してくる。騎馬隊に竜騎士、歩兵などが、一気ニ突っ込んでくる。

 それに反応し、レイガはエインを抱えたまま、少し後退し、高度を上げる。


「いっそ、潔いいな。だけど、俺は二百年前に決めたんだ。俺に向かってくる奴は全てなぎ倒すってな! 『起きろ、七本の神槍』」


 そうレイガが詠唱すると、空中に七本の色取り取りの槍が現れる。


「あれは、まさか! 全ての神樹七槍!?」


 レクス将軍が、驚愕の声を上げる。


「『全て滅ぼす、神なる神槍。七を束ね、全て終焉に導く、終わりの笛となれ』変換合体魔法【創成(クリエイティブ)】」


 そうレイガが詠唱すると、七本の槍が強大な龍を象った角笛となる。

 レイガはいま信じられないことを行った。基本すでに魔力を帯びている魔道具、特に神具などに魔術をかける事はできない。


 レイガが行ったのは魔術ではなく魔法だ。魔法とは、世界の法則などに沿って発動する魔術とは違い、膨大な魔力を消費し、世界の法則や概念を捻じ曲げる。世界の法則である、魔道具いや、神具に魔術をかけられないという概念を捻じ曲げ、七本の神槍を笛に変えた。


「終焉の笛を鳴らせ【ギャラルホルン】」


 レイガは笛をギャラルホルンと呼ぶ。そして膨大な魔力を笛に注ぎ、増大させる。


「終焉魔法式、発動【ラグナロク】」


 笛から強大な音が鳴り響く。騎士団を魔法陣が囲い、その中で天変地異が起きた。


 隕石が振り、業火と地割れが大地を蹂躙し、荒波が、全てを飲み込む。

 その魔法陣の中から、悲鳴が上がる間も無く、騎士団は全滅した。


「これほど、とは……」


 レクス将軍は、悔しげに地を這う。


「悪いな」


「これを使う気はなかったが、致し方あるまい!」


 そう言って、レクス将軍は懐から、一つの宝石を取り出し、握りつぶす。

 すると、エインが苦しみ出す。


「おい! レクス将軍! あんた、エイン先生に何をした!」


 レイガが怒鳴る。すると、レクス将軍は笑う。


「私は、一つ嘘を言った。『安心していい』と言ったことだ。私は言った。『今のところは』と、つまり状況は変わったから、何かするということだ! 彼女がスパイになったのには理由があってな。彼女の母が、魔物の樹木に寄生されていた。それを彼女は自分の体に移植することで母を救った。だが、彼女の体に移植するには多額の金がかかる。そこで、金額を騎士団が立てけることを条件として、スパイになった。そして、今、彼女に移植した魔物を開放した! さあ! どうする? 【ゼロ】!」


 チッとレイガは舌打ちする。そして、レクス将軍の言った通り、エインの体は魔物に侵食される。しかもその魔物は、世界樹喰らいと呼ばれる【ベノム】と呼ばれる世界樹を好物とする魔物だった。


「レイガ…………たす……けて……」


 エインの言葉を聞き、レイガは魔法式を練り、組み上げる。


「まかせろ、俺はこの世界でただ一人の【魔法使い(ゼロ)】だから!」


 そうレイガが言うと、その場は光に包まれた。



【0】



 この事件は後に、【シルヴァル狂乱】と呼ばれた。

 エインに移植された魔物は摘出し、破壊した。

 そして、シルヴァル湖国は帝国に潰されたかというと、そうではない。シルヴァル湖国は【ゼロスティル学園】の属国という扱いになり、結果として救われた。元々、これが目的だった。敵国が、攻めてきた倍賞として属国とする。そして最終的に全ての国を属国にして、世界から戦争を無くす。

これがレイガの理想。

 つまり、レイガの戦いはまだ、始まったばかりであった。


「ま、俺は【ゼロ】だから死なないし、ゆっくり行くか」


「そうだね――」


 今日もレイガは世界樹の枝で、ユグドラシルとともに世界を見ている。



【0】


《よくわかる『ただ一人の【ゼロ】』用語その十》


 魔法……

 魔法とは、世界の法則などに沿って発動する魔術とは違い、膨大な魔力を消費し、世界の法則や概念を捻じ曲げる。

 世界の概念を捻じ曲げるため、魔力を練り上げる必要はあるが、放出する必要は無い。

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