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五節『暗躍する騎士団と課外授業』

《よく分かる『ただ一人の【ゼロ】』用語その六》


 エイン・クロムウェル……

 腕利きの魔術士。

 現在はゼロスティル学園一年S組の担任にして、シルヴァル湖国のスパイ。

 氷結魔術の奥義【氷巨人(アイスザスルト)】を会得し、最年少で【氷大魔術士(ザ・アイス)】の称号を与えられる。

 その功績を認められゼロスティル学園の教師となる。

【0】



《シルヴァル湖国》騎士団宿舎


 騎士団の宿舎の薄暗い部屋に、男達が集まっていた。


「密書はどうだ?」


 この男はシルヴァル湖国騎士団の団長で将軍である男、レクスだ。シルヴァル湖国はエインの出身地である。エインはここのスパイをしている。


「先程到着しました。どうやら、年に一度、結界が弱る時があるようです」


「時期はいつだ」


「あと二月ほどです」


 それを聞くと、レクス将軍は拳を掌に叩きつけ頷く。


「よろしい。では、出陣準備だ。『全ては美しき湖のために(オールレイクアリア)』」


 レクス将軍の言葉を聞き、男たちは立ち上がり、敬礼する。


『はっ! 『全ては美しき湖のために(オールレイクアリア)』!』


 それを気に男は慌ただしく、出陣準備を始める。


「それで小娘はどういたしましょう?」


 レクス将軍に男の一人に聞く。


「出陣を延期すると伝えておけ。その小娘にはあの学園に最後までいてもらう」


 その言葉はエインにとって死を意味した。



【0】



《ユグの森》


「今日は課外授業です。皆さん、大変だとは思いますが、真剣に取り組んでくださいね」


 エインの、その声を皮切りに、生徒が散り散りになっていく。

 今日は、世界樹の裏手にある森。通称、ユグの森に来ていた。

 今日の授業は、薬学と魔術学の合同授業である。


 課題は指定された薬草を採取しつつ、魔術で、襲いかかる脅威を排除するといったものだった。

 全員が薬草を採取して行く中、一人、この少年は通常運転していた。


「ふぁーあ」


 木の上で頭の上で腕を組んで、レイガは授業をサボっていた。


「レイガ君! ちゃんと授業を受けてください!」


 サボっているレイガに気付き、木の下でエインが注意する。


「んぁ。あれ? エイン先生じゃないすか? ひょっとしてサボってるの、バレました?」


 昼寝から目を覚ましたレイガは悠長にして、腕を伸ばし、欠伸をする。


「当たり前ですぅ! いいから、そこから降りて来なさい!」


 顔を真っ赤にしてエインが怒る。


「はいはい。分かりました。降りますから。落ち着きましょう。折角の美人が台無しですよ。ね?」


 白々しい事をいい、レイガは苦笑する。


「うるさい。「痛い」レイガ君。真剣に授業に出てください。この前の魔術実技もそうでしたよね?」


 説教をしながらレイガの頭に拳骨を落とす。


「そう言われましても……」


「言い訳しない!」


「……はい」


 それからレイガは、エインから説教を食らっていた。

 すると突然、女子の悲鳴が聞こえる。


「キャァァァァァァァ!」


 何事かと思い、悲鳴がした場所に二人が向かうと、そこには生徒達を見下げるドラゴンの姿があった。生徒達は、歯をガチガチと鳴らし、体を震わせている。

 いくら魔術士とはいえ、生徒達は経験が浅く、半人前でしかも、まだ子供だ。

 しかしそんな怯えた生徒の事は、お構い無く、ドラゴンは火炎を吐く。

 エインはそれに素早く対応する。魔力を手から放出し、魔術を唱える。


「炎よ、凍れ! 『アンチ・フレイム・アイス』!」


 その魔術によって、ドラゴンから吐き出された火炎は、凍りつく。更にエインは続けて魔力を放出し、魔術を発動する。


「風にのり、凍てつけ。『アイス・フロウ・ウインド』!」


 冷気が瞬時にドラゴンの翼を凍てつかせる。ドラゴンは羽が動かず、落下する。

 一見すると、エインがドラゴンを圧倒している様に見える。しかし、一人ならともかく、今の行動は生徒がいる教師の引率としては悪手だ。

 ドラゴンはその後、生徒ヘッピリ腰になっている生徒に襲いかかる。


「グルァァァァァ!」


「ひぃぃ!」


 エインは生徒に逃げるように言い、魔術を発動しようとする。


「逃げなさい! くっ! い……」


 しかしエインの横を風が通り抜けた。そして、ヘッピリ腰になっている生徒の前には一瞬で移動したレイガの姿があった。


「え?」


「レイガ君!?」


 レイガは手を前に出し、また瞬間移動し、ドラゴンの懐に潜り込む。


「魔法式【波動衝(ブレイ)】」


 ボソボソと言葉を紡ぎ、掌底をドラゴンの体に叩き込む。

 それを食らい、ドラゴンは吹き飛ばされ、木に激突し、気絶する。そしてレイガがパンと指を鳴らすと、木から枝が伸び、ドラゴンを拘束する。


「先生。授業は中止です。それから、さっきの戦闘について、俺からありがたいお説教をあげますよ」


 レイガ笑顔でそう言い、エインの二時間ほど説教した後、ドラゴンの尻尾を持ち、引きずりながら、学園帰った。



【0】


《よくわかる『ただ一人の【ゼロ】』用語その七》


 シルヴァル湖国……

 シルヴァル湖のほとりにある小さな国。

 エルトキアの中でも、国土が最小の部類に入る国。

 エインはここのスパイ。

 現在エルバフ大国から宣戦布告を受け、停戦中。

 力を手に入れるために、騎士団が独断で、世界樹を手に入れようとしている。

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