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三節『理想』

【0】



 魔術士と魔術によって栄えた世界エルトキア。

 魔法の発展は人類の文明を進化させていった。

 しかしそれは同時に魔術を使った争いの前章に過ぎなかった。

 やがて【大魔戦争】と呼ばれる大きな戦争が四回あり、その四回の戦争で人類は疲弊し、ようやくつかの間の平和が訪れた。


 それでも魔術の研究と魔術士の育成がやめられる事は無かった。

 そしてそんな世界に、唯一安全な場所があった。


【ゼロスティル学園】


 世界樹の麓に作られた学園である。

 全世界から集められた魔術士の卵は、そこで一流の魔術士を目指す。この学園は一種の独立地域の様になっており、戦争からは干渉されない。

 そしてここはあらゆる国は、魔術士の卵を送る。

 この学園は国の価値観、宗教、理念などのあらゆる垣根を越えて、生徒を集め、魔術とは何か? 魔術士とはどういう存在か? を教えて行く。

 この学園を卒業した生徒は、総じて優秀であったため、エルトキアのありとあらゆる国が、ここに魔術士を送った。

 優秀な人材を育ててもらうために。


 世界一、安全な場所は、世界の戦争の火種を育てているという皮肉な場所であった。それはどの国にも共通の認識であったが、全く違う意図があることを、学園の人間以外誰も知らない。



【0】



 一人の少年が、世界樹の枝に乗って寝そべっている。

 少年の容姿は短い銀髪で、ウツラウツラと開きそうで開かない目からは黒曜石のように黒い瞳がチラチラ見えており、顔は整っているほうで、身長は百七十センチ程度で少し童顔である。服装は灰色のパーカーとインナーに黒いTシャツに紺色のズボン姿である。


 少年の名はレイガ・ゼロスティル。ゼロスティル学園に身を置いている者である。


 少しすると、レイガは腕を伸ばし起き上がる。


「ふぁ――――あ」


 大きな欠伸を一つする。そして辺りを見渡し、広がる草原と城下町と城のように大きな学園の校舎を見る。朝もまだ早いため、いつもの喧しげな喧騒は聞こえてこない。


「はぁ、静かだ……。おはようユグ」


 そんな事を呟くと、木の枝がモコモコと盛り上がり、人の形を成す。そして少女の姿を成すと、先ほどのレイガの真似をするように、ぐぐっと腕を伸ばす。その時、美しい長い金髪が揺れる。


「おはよう。レイ。いい陽気ね。それに今日も平和ね。夜襲の恐れも無いし」


 彼女はユグドラシル。世界樹の人格として存在している分身である。その容姿は長いストレートの金髪で、瞳は透き通るような薄緑をしていて、身長は百六十センチの美少女である。服装は白いワンピースとシンプルであるが、それがまた一層良さを引き出している。

 二人は長い付き合いで、レイガはユグドラシルを『ユグ』と呼び、ユグドラシルはレイガを『レイ』と呼んでいる。


「それ、ここ何年同じ事を言ってるぞ。俺がお前を守るって言ったの、まだ信じてなかったのか?」


「だってぇぇぇ。レイってば、すぐ浮気するからぁぁぁ」


 ユグドラシルはそんな事をいい、枝の上でゴロゴロと転がる。


「浮気って……、俺とお前って、そんな仲じゃないだろ。それにさっきの話、関係ないし」


 そんな事を言うと、ユグドラシルは、ガバッと起き上がる。


「違うの!?」


「違う。つか、何をさも当たり前の様にそんな事を言う?」


「それはまあ、アタシとレイの仲だし」


「どんな仲だ……」


 ため息を吐くと、ユグドラシルがレイガの肩に頭を預ける。


「ここも平和になったね。ちょっと前までは、昼夜を問わずいつも人がアタシを手に入れるために争っていたっていうのに」


 感慨深くユグドラシルが言う。


「そうだな。現状まだどうしようもないが、でも世界から争いを無くす事が、俺の理想だから」


 レイガは青空を見上げ、まるで呪文のように、呟いた。



【0】


《よくわかる『ただ一人の【ゼロ】』用語その三》


 大魔戦争……

 強大な魔術が行使された、または多大な犠牲を出したなどの理由により、記録されており、世界情勢を変えるほどの戦争の総称。

 四回発生している。一番酷かったのは、泥沼化し、都市を一つ吹き飛ばした最悪の魔術が使用され、多くの犠牲を出したため、第四次大魔戦争が最悪の戦争だと言われている。

 それ以降、小さな戦争は続いているが、大きな戦争は起きていない。

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