表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

〇.――standby

 冷たい金属の感触が全身を覆っていた。けれど不思議と動きが阻害されることはなく、むしろ普段よりも動きやすい気さえする。

 ボクは確かめるように掌を開閉する。そして背中から翼のように広がる機械類、いくつかの兵器類を動かす。手足のような感覚で操作できるそれらは金属やコードの塊だったけれど、無機物からボク自身の身体の一部となって息を吹き込まれる。機械から生物へと変化する。

 こうしてボクは戦士として戦場に立つことができる。やっと守りたいものを、守るべきものを守るようになれる。自分の居場所はここにしかないのかもしれない。そんなネガティブな思考も、同時に浮かんできたりもするけれど。

 ああ、再びやつらとの戦いが始まってしまう。またたくさんの人が死んでしまうのだろう。これから自分はどれだけの人を救うことができるのか。それはボクにだってわかるはずのないこと。だけど今は、せめて目の前にいる大切な友人を守りたい。救ってあげたい。


「……もう一度、ボクに力を貸してくれるかい? 相棒(AAI)


 呼応するように、ナビゲーターシステムが青白い光を薄く点灯させた。

 あとは飛び立つだけだった。そのためのエネルギーは十分にある。足につけたメカメカしい靴の形をした機械。そのかかと部分に備え付けられたジェット噴射装置を作動させるだけでいい。何の事はない。簡単なことだ。

 けれどここから飛び立つということは、普通の生活には戻れないということを意味している。少なくともスペース・アンノウンと呼ばれる未知の怪物たちとの戦いが終わるまでは……。

 でもそれだって考え方を変えれば簡単なことでしかない。だってただあの頃に戻るだけだから。今までが特別だったと思えばいい。思えばいいだけなのに、後ろ髪を引かれるような気持ちが晴れてくれない。嫌だと思っている自分がいる。戦いたくないと震えている自分がいる。今ならまだ普通の生活に戻れると弱気になっている自分がいる。

 ……。

 …………。


 全部無視した。


 不安や執着心を心の奥深くに追いやって、ボクは強く拳を握りしめた。

 これでいい。こうでなくちゃいけない。ボクは戦う力を持っている。誰かを救える力を持っている。だったら戦わなくちゃいけない。そのためのAAI(兵器)だ。そのためのボクだ。


「行こう」


 迷いを断ち切る。前へ進むことだけを考える。

 噴射装置を起動させる。メカメカしい靴の形をした機械。そのかかと部分が変形する。力を吐き出すための噴射口が駆動音を鳴らす。


「みんなを、守るために!」


 そうしてボクは空へと飛び立った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ