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Ⅱ.過去と今

 “恋する”という気持ちを初めて実感したのは五年前のこと。ボクがまだ高校一年生だった頃の話だ。

 それまでのボクは色恋沙汰というものに興味はなく、そして煩わしいとさえ思っていた。そんなボクが初めて恋をした相手。それが桐谷拓海だった。

 拓海は同い年の少年。正義感の強く傷つく人のためならば、たとえ自らの身体がボロボロになろうとも立ち上がる、そんな奴だ。

 彼に一目惚れしたとかいうわけではなく、初めのうちは好意とは反対の思いを抱いていた。当時メタリック・チルドレンとしてとんでもない戦果を挙げたばかりの拓海を、けれどボクはどうしても認められなかった。たとえば本当は彼ではない別の誰かがその戦果を挙げ、弱みを握るなりなんなりし、脅しをかけて自分の戦果にしたとか。そんな風な疑念を抱いていた。なぜなら拓海はメタリック・チルドレンになったばかりであったし、何より雰囲気も見た目もおよそトップクラスの戦果を挙げる者とは思えなかったからだ。


 認めたくないという思いが、ボクに拓海に対しての敵愾心に似た感情を抱かせた。

 けれど、ある日ボクは拓海に命を救われた。そして強くならなくちゃという焦りの心を和らげてくれた。でもそれで拓海に恋をしたわけじゃない。どこかのツンデレチョロインでもあるまいし、そんなわけない。

 ただ少し気になり始めたのは事実だ。拓海のことがもっと知りたいと思った。だから彼の元へ行くようになった。

そうして彼と時間を過ごし、彼の熱い正義感に触れるうちに、だんだんと恋心が芽生えていった。

 でも、その想いを伝えられることはなかった。どこかのツンデレチョロインことアリス・グランべに拓海を取られたから。拓海とアリスは恋人になったのだ。

それが二年半前のこと。戦争の終わりが見えてきた頃だった。

 戦争が終わるまでの半年間、ボクは戦うことだけを考えて行動した。そうでもしないとやっていけなかった。周りからはまるで拓海に救われる前のボクに戻ったように見えたらしい。拓海は寂しそうな視線をボクに向け続けていたのを感じていた。


 拓海は何度もボクと話そうとしてくれた。けれどボクはそれを無視し続けた。本当はいっぱい話したかったけど、話をしたら心が折れるような気がして、無視し続けた。

 そして戦争が終わると、ボクは拓海から逃げるように地球防衛機構日本支部から実家へと帰った。

 あれから二年。ボクは拓海とも、共に戦った仲間とも会っていない。どんな暮らしをしているのかすら知らない。





「ミナ!」


 なんとなく昔のことを思い出していると、そんな声が聞こえてきた。声のほうを見ると女の子がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。ボクの友人、木崎真琴だった。


「講義まだ終わってないんじゃないの? 時間的に」


 真琴がボクの側に来るのを待って、そう聞いてみる。


「ミニレボ書いた人から帰っていいよってなったから」

「ああ、なるほど」


 ボクはベンチから腰をあげる。


「じゃあ行こっか。真琴のオススメのカレー屋さん」






 かつて、ボクはメタリック・チルドレンとして世界をかけた戦争を繰り広げていた。戦争が終結した今、世界は嘘のように穏やかなものへとなった。平和、というやつだ。

 そんな平和な世界で、ボクは今大学に通っている。

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