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無空間、有空間  作者: Capso
7/11

新参者

エイトは困っていた。

「ん・・・・?ここはどこだ・・・」

身体が痛い。つーか動かねぇ。

あれ?女の子がいない。さっきまで一緒にいたのに。

「ん~?あれ、オレ何してたんだっけ?アレ?」

ここは、バーじゃない。

なんか暗い。

「ザクと変な道通ってここに来て、バーに行って、可愛い子ちゃんを発見して、酒飲んで、あれ?酒飲んで」

何だっけ?

とりあえず何でオレは動けねぇんだ?

ぼうっとした頭で状況を整理していると、足音が聞こえてきた。

あれ?誰か来る?

ハイヒールのような音だ。

「あら。何でここに男の子がひとりいるの?夜這い?」

扉から、女が1人現れた。赤い口紅、黒いドレス、赤いバッグ。

どうやらオレは、ベッドの上にいるらしい。

「まぁ、まぁ。若いのね~んん?」

そう言って、ベッドに乗り上げてきた。

女がオレの口元に顔を近づけてきた。

「あんた、ユウジの酒のんだわね?」

「・・・酒?そういや飲んだけど」

「なるほどね~じゃあ、あなた、新参者なのね。なつかしい響き!」

この女は何を言ってるんだ?

「あのぉ、お姉さん、何でオレ動けねぇの?」

とりあえず、動きたい。

女は笑って、ベッドを降りた。

「だから、ユウジの酒を飲んだからよ。あの、銀髪イケメンくんの」

銀髪イケメン?ああ、あのバーテンか。

「何でそいつの酒飲んで動けなくなっちゃったわけ?中にクロロホルムでも入ってんの?」

プッと女がふきだし、アハハと笑い出した。

「クロロホルム~?そんなの入ってないよ、たぶん。私もよく知らないけど」

女がそう答えると、突然、オレの腹の音が鳴った。

「まぁ、とりあえず、しばらくは動けないだろうから、そこで寝てなよ。ご飯作ったげる」

待ってて、と言うと部屋を出て言ってしまった。

「ハァ~。動けねぇ」

指先は動かせるようになってきたが、他は、金縛りにあったみたいに動かない。

そういや、ザクはどうしてっかな?

最後に見たのは、部屋の隅で、見知らぬ男3人と話している姿だった。

「オレ、のこのこ、こんなとこまで来て何してんだ~?ザクと離れちまってよぉ」

1ヶ月ほど前、

いつも退屈そうなザクの様子が、突然変わった。

なんか、生き生きしてる?輝いている?かんじになった。

アイツが、いつも、眼球のない左目で変なものを見る事は知っていた。

そして、その正体を突き止めようとしていたのも。

1週間前、あのうさんくさいメールが送られてきて、ザクがそこに行こうとしているのを知った。

オレは止めようとしたが、アイツは聞こうとしなかった。だから、心配で、ついてくる事にしたんだ。

そんなことを思い出していると、扉の向こうからいい匂いがしてきた。

女が料理を持って入ってきた。

「あら、まだ動けないの?じゃあ、まだ食べれないわね。食べさせてあげよっか?」

「いらねぇよ。また変なもん食わされて、気ぃ失ったら何されるかわかんねぇ」

女は、料理ののったトレイをベッドのそばにあったテーブルのせた。

「失礼ね。クロロホルムなんて入ってないわよ。ほら?」

そう言って、スープを口に含む。

あ。口紅がスプーンにべったりついた。

「わかったから。置いといてくれ」

女は、満足そうに頷くと、イスに座り、こちらをじっと見つめた。

金色のロングヘアーに、真っ黒な睫毛、赤い唇。歳は、オレよりも少し上だろうか。

「それで。あなた、何で私の寝室にいたの?やっぱり夜這い?」

「ちげぇよ。気づいたらここにいたんだよ」

「ふ~ん?じゃあ、あのバーからどうやってここまで来たのかも、わかんないのね。そもそも、ここはあそこからずいぶん離れたところにあるから、道をしらないと来れないはずなんだけど」

煙草の煙を吐き出しながら、女は何か考えるように言った。

「離れたところって、どれくらい離れてるんだ?そもそもここはどこなんだよ?」

「どこって、もちろんカプソの中だよ。そんで、ここは西ブロック」

「カプソ?て何だ?あのバーに他に出入口はなかったし、ここはもう地上なんだろ?」

オレはあの青色のバーの中を思い出して言うと、女はきょとんとした顔をした。

「だからここはカプソだってば。地上じゃない。カプソってのは、この地下の城のこと。あのバーは入口なの。地上からここに入るための数少ないね」

「地下の城?」

「そうよ。あなた、本当に何も知らずにここへ来たのね?」

地下の城・・まさか。

あの、ザクが行ってた青い線の中ってやつなのか?

まさか、本当にあるなんて。いや、ザクを疑ってたわけじゃねぇよ?でも。

「地下って、あのバーより下ってことか?オレ、早く戻らねぇとザクとはぐれちまう」

「何?あなたの知り合い?ってそれより、戻るってバーに?無理よ。どんだけ時間かかると思ってるの」

女は呆れたようにため息をつく。

「知らねぇよそんなの。そんなにこっから離れてるのか?」

「離れてるもなにも、ここは西ブロック。ユウがいるバーは東ブロックの頂上なのよ?こっから何日かかると思ってるの?」

そんなに遠いのか。

何日もかかるって。

ん?何日も?

おい、待てよ。

まさか

「まさか、もうあのバーにいた日から何日もたってるっなんてことは」

「まぁ、そういうことになるね。バーからここまで来るのに最低3日はかかるから。それも朝から晩まで歩き続けての話だけど」

「っ!嘘だろ!マジかよ!今日は何日だ!?」

「今日は、6月8日ね」

女は携帯の日付を見て言った。

6月8日?

オレ等が来た日はたしか、6月1日。

1週間もたってんじゃないか!!

「おいおい嘘だろ」

そうすりゃいいんだ。今更バーに戻っても、ザクはいねぇだろうし。そもそもなんでオレは、こんなところに連れてこられたんだ?ザクは無事なのか?

そんな混乱しているオレを見て、女は何か考えるように、じっとオレを見つめた。

そして、なにか思いついたように手を叩いた。

「そうだ!こういう事は、ミナトに聞いた方がいいと思う。アイツ、そういうのに詳しいから」

「ミナト?ソイツに聞いたら何かわかるのか?」

ミナト、ミナト、ミナト?なんかどっかで聞いたことあるような。

女は笑って頷くと、

「そうそ。アイツほどカプソに詳しいヤツはいないから聞いてみるといいよ。それより、そろそろ旦那が帰ってくる時間かも」

さらっととんでもない事を言った。

旦那?

旦那だと?

「おい、旦那って、やばいだろコレ。オレこっから動けねぇし、嫁の寝室に2人って」

オレは冷や汗をかきながら、なんとか起き上がろうとしたが無理そうだった。

「大丈夫だって。ちょっと殴られて、顔面がぐちゃぐちゃになって、部屋からつまみだされるだけだから」

と笑顔で言う。

「っ何が大丈夫だよ!こえぇよ!せめて、オレをこっから違う部屋に移動させてくれ!」

何とか自由に動くようになった腕を伸ばし、女に助けを求める。

「んー、いいけど、重そう。んしょ!」

オレの腕をつかみ、女が引っ張りあげようとしたが、腕意外動かないためにバランスがとれず、そのまま床に2人で倒れこんだ。

「痛ぇ」

「ごめんね!大丈夫だった?」

女の下敷きになり、オレは、打った頭をさする。

女は、心配そうにオレの顔を覗き込んできた。

オレは大丈夫だと言いかけ、途中でやめた。というか、喋れなかった。

オレが黙っていると、女は首をかしげ、オレの見ている先、つまり扉の方に、視線を向けた。そして、

「あ!おかえり~タカシ!」

場違いな明るい声で、そこにいたやつに声をかけた。

開け放たれた扉の前には、女の旦那と思われしき人物が立っていた。

男は眉をひくりと動かし、

「おかえり、じゃねぇよ。何してんだ?お前等」

殺気をぎらつかせ、オレ達を見ていた。











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