地下の城
「それじゃ、さっきの話の続ききかせてよ、ザク」
コーラも残り半分になった頃、ミドウが話をきりだした。
「ん?あぁ~ザクちゃんののお目目が~兄貴に縫い付けられた、てはなし?」
「そうそ。やっぱ興味そそられるし」
マーチのボトルはすでに2本目に達していた。
ボトルからあんなにがぶ飲みしてたら、そりゃあ、なくなるのも早いだろう。
「ああ。わかった、話すよ」
オレはコーラを少し飲んでから話し始めた。
「まぁとにかく、オレには、見えないはずの建物が見えた。小せぇ頃はそれが建物だとはわからなかった。ただでたらめに青い線がひいてあるんだと思ってな。ある時オレは、その線を紙に書いてみようと思った。つなげてみたらどうなるんだろうって」
オレはコーラをもう1度飲んで息を吐いた。
「オレは町を歩き回って、線を書き続けた。そうしていくうちにわかった。この町の地下には、でかい地下室があるんだと」
「それはまた、壮大な話だね。でも地下室なんてどこにでもあるよね?ほら、B1階、2階とか。地下の駐車場とかさ?」
ミドウは酒をつぎ足し、オレにも飲むかとボトルを差し出してくる。
オレは断り、話を続けた。
「それより、もっと深く。到底人間が掘れるとは思えないほど深くまで建物は続いている。どうやってその建物を造ったのか全くわからない、そもそもそんな場所に人間が住めるのかどうかもかわらない」
「ぷはっ、あ~飲んだ飲んだ!でもそれってただのザクの妄想だろ?そんなものがあるなんて証拠もないわけだし~?」
2本目を飲み終えたらしいマーチは、テーブルに突っ伏して手をひらひらふる。
「オレも、そう思ってた。今日まではな」
「今日まで?てどういうことだ?」
オレは残り少ないコーラを喉に流し込んだ。
「つまりオレ達ほ今、その青線の中にいるってことだ」
「ん・・・?何だって?」
2人とも、何言ってんだコイツ?という顔をしている。約1名、何考えてるかわからないヤツがいるが。
「だから、ここがすでに青線のなかなんだよ。オレもまさかこんな簡単に入れるなんて思ってなかったけどな。いくつか地上に入口があるとは思ってたが」
「またまた~!コーラにアルコール入ってたのか?ここはどう見ても普通の地下室だ?普通の!」
そう言ってソファ席に乱入してきたマーチが、バンバンとオレの背中を叩く。
「そうだね。ここは別に特別な場所じゃない」
ミドウも同意する。
「このバーのどこかに、さらに下へと続く入口があるはずなんだ」
オレはまわりを見回し、入口の様なものを探すが、それらしきものは、見つからなかった。
すると、ミドウは、何かを考えるように、じっとオレの顔を見る。
「もしかして・・・カネドウ ミナトと何か関係があるのかい?」
「っ!そうだ!ミナトの事、何か知ってるのか?」
オレは、ミナトの名前が出てきた事に驚いてミドウを見返すが、ミドウは首をふった。
「いいや、全然。ただ、あのメールの送り主がカネドウ ミナトだったて事を思い出してさ」
「カネドウ?誰だ~?ソイツ」
どうやらマーチは何らないようだ。
「カネドウ ミナトは、世界的に有名な建築家だ。ミナトの設計した建物は、他に類を見ない不思議なものばかりで、賛否両論分かれる代物だが、数々の有名な賞をさらっている天才だ。しかし、それだけ有名にも関わらず、本人の情報が少なく、本当は実在しないんじゃないかとまで言われている」
「・・は実在する」
「えっ?」
それまでずっと黙っていたハックが突然つぶやいた。
相変わらず表情が見えず、何を考えているのかわからないが、確かに今、実在する、て言ったよな?
「ハックはミナトのことを知っているのか?」
無言。
「なんだぁ?知らないのオレだけかよ。んで、ソイツと、ここが秘密の地下室だって事と何の関係がるんだよ?」
マーチはイラついたように言う。
「ミナトのサイトには、彼が設計した建物の数々の図面が載せられている。その中の1つにこんなものがある」
オレは携帯を開き、ミナトのサイトを開いてテーブルに置いた。
そのままスクロールして1つの図面を拡大する。
「そして、コレが、オレのかいた青い線」
ポケットから紙を取り出し、広げる。
ミドウとマーチは、携帯と紙を覗き込んだ。ハックは動かず、腕を組んだままじっとしていた。
「コレって・・・」
ミドウは紙を手に取り、目を見開く。
「そっくりだな。この下の方のやつと」
マーチが両方を見比べ、つぶやいた。
携帯の画面には、奇妙な絵のようなものがうつっていた。
真ん中に直線が1本あり、直線から上側には、この町の建物がかかれている。そして、直線の反対側には、まるで迷路のような地下の城が広がっていた。
オレのかいた紙には、直線の反対側の建物がそっくりにかいてある。
「それは、オレがかいた、この町の地下の城」
「コレ、お前1人でかいたのか?すごいな。でも、どうやってこんな細かいものをかいたんだ?」
ミドウが紙をじっと見つめながら聞いてきた。
「日がたつにつれて、この目で、見える範囲が広がっていった。見えるっていっても、頭の中に、図面が広がっていくかんじで」
この図面を完成させるために、町を動き回り、多大な労力を使わされた。
「でもよ~、何でザクがかいたその紙と同じものが、ここに載ってるんだ?このミナト、て奴と知り合いなのか?」
オレの携帯をくるくる回して、マーチが言った。
「いいや。会ったことはないし、話したこともない。だから、その図面を初めて見た時には心底驚いた。そして、思った。この地下の城は、ミナトがつくったものなんだってな」
「・・・ミナトに会う気か?」
ハクが、またもや突然、ミナトの話題に食いついてきた。
やっぱり、コイツ、ミナトの事を何か知っているのか?
「ああ。会って、聞きたい事が山ほどある。この地下の城は一体何なのか?造ったのは本当にミナトなのか?」
「・・・アイツは、・・ない」
「ん?なんて言ったんだ?」
「なんだぁ~?やっぱ、ハッちゃん、コイツの事知ってんのか?どういう関係?」
マーチがハクの肩を抱き、顔を覗き込む。
パシッ
質問には答えず、ハクが手をふりはらった。
「ちっ。酷ぇな~相変わらず。無視かよ無視!」
マーチは気を悪くしたらしく、そのままソファに寝転がった。
「あ~なんかオレ眠くなってきた。ちょい寝るわ~」
「お前は飲みすぎだよ」
ミドウは呆れたようにため息をつく。
「でも実は、オレもなんか眠い」
確かに、なんか眠いような・・・
思わず、テーブルに突っ伏してしまう。
「・・・そういえば、何でその目が縫い付けられたのか、まだ聞いてなかったね・・・」
ふぁあっと欠伸混じりのミドウの声が聞こえる。
「・・・ああ・・それに、お前とハックがここに来た・・・理由もな」
やばい。だんだん目が閉じていく。
「ん?・・ああそうだね・・・オレは・・」
ミドウが何か言っているような気がしたが、はっきり聞こえなかった。
そこでオレの意識は途切れたからだ。