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無空間、有空間  作者: Capso
5/11

縫い目

「お前っ、その目っ・・・・」

オレは3人が固まっている間にサングラスを拾い、かけ直した。

「コレか?オレには生まれた時から左目がなかった。別に病気とかじゃねぇ」

オレは淡々と答えると、ソファに深くもたれかかった。

「その目、中身ねぇのか!?マジかよ」

固まっていたマーチが、ミドウの隣のイスに腰かけながら言った。

「ああ。この縫い目は、兄貴がやったものだ」

「兄貴?虐待でもされてたのか」

ミドウもイスに腰かけ直し、オレの目をまっすぐに見つめる。

「いいや。その逆だ。兄貴は、オレを助けようとして、コイツをやった」

そう。兄貴は、オレを助けようとした。

「オレは小せぇ頃からこのないはずの左目で、変なものをみた。町を歩いていると、存在しないはずの建物の輪郭が、青白い線で見えるんだ。地下に」

「地下に建物~?何だそりゃ。不思議パワーか?」

マーチがちゃかすように言う。

「まぁ、そんなものだ。見えるだけで、実際にその場所に行く事は、今までは、できなかったが」

「へぇ~、んで?それと目の縫い目と、何の関係があるんだ?」

「ああ、それは話すと少し長くなる。それよりも、喉かわいたな」

そういや、バーガーショップでは何も飲まなかったな。

「そういえばそうだね、じゃあ、先に飲み物頼もうよ。オレ、あのバーテンのとこ行ってくる」

そう言うと、突然ミドウが席を立った。

「あ。じゃあオレは~さっきのやつで」

「・・・・・・コーラ」

「え?ハックもコーラ?」

ミドウが振り返り、意外そうにハックを見る。

「いっつも、酒なのにどうしたの?」

「・・・・・別に」

ハックはちらりとオレを見て、ぼそりと答えた。

「まぁ、いいか。じゃ、行ってくる」

バーカウンターへ向かっていくミドウの後ろ姿を見て、そういえば、エイトもカウンターの方へ行ったなと思い、ふと、エイトの姿を探してみた。

あれ?アイツ、いない。

どこ行ったんだ?

あたりを探してみるが、エイトらしき姿は見つからなかった。

トイレでも行ってんのか?そういや、あのカウンターにいた女もいないな。

「チッ、アイツまさか」

女とトイレにしけこんでるんじゃねぇだろうな?

ありえるが、こんなとこまで来てヤルかよ普通。

そんな事を考えていると

「んで?ザクは何でこんなとこに来たんだ?」

マーチが興味津々という様子で、こっちを見てきた。相変わらず、前髪が長すぎて、顔がよく見えない。

「ここに来たのは、まぁ、さっきの話が関係ある」

「ああ、目の話~?いや。でもすげぇよなソレ。見た時ビビった」

「お前等は、何でここへ来た?3人共もとからの知り合いなのか?」

「ん~?オレ等?オレとハッちゃんは結構前から、一緒にいんだけど、ミドウとは会ったばっかだな~」

意外だった。3人ともかなり仲がいいように見える。しかし、言われてみれば、この2人とミドウは、どこか雰囲気が違う。

「そうそ。確か1ヶ月くらい前だったっけ。オレがちょっと喧嘩してる時に、ミドウが通りかかって、なんか酒おごってくれるって言うから、ついていったら話はずんで、つるむようになったてわけ」

「んで、ここに来たのは、ミドウに誘われたからだな。変なメールがきたっつって」

「よく来る気になったな。あんなのを読んで」

「まぁ~すげぇ怪しかったからなアレ。でも、ミドウが本気で行くっつったから、面白そうだと思ってさ」

そう言って、腕を伸ばし欠伸をする。

それなら、ハックもマーチ同様、面白半分で来たということだろうか?

ちらりとハックを見てみると帽子を目深にかぶり、腕を組んでソファに沈んでいた。

眠っているのか?

帽子を上げようと、手を伸ばしてみる。

「・・・・何?」

腕をつかまれた。ハックは顔は変わらず下を見ながら、腕だけを動かす。

「いや、悪ぃ。寝てんのかと思って」

ハックは無言で腕を離すと、それ以上答えなかった。

無口なやつだ。

「やぁ~お待たせ~」

ミドウがトレイに酒のボトルと、コーラの瓶をのせてもってきた。

「はいこれ、コーラね」

オレとハックの前に瓶を置く。

「んで、これがマーチの」

「サンキュー」

全て置き終えると、トレイをテーブルに置き、席につく。

「何だコレ?本当にコーラなのか?」

ひとくち飲んでみると、不思議な味が広がった。

こんなコーラは飲んだことがない。

「ん?ちゃんとコーラ頼んだけど」

ミドウが酒をグラスにつぎながら答える。

「そーいやーここの酒って、飲んだことない酒ばっかだよなぁ。でもすげぇ美味いの」

マーチはボトルから直接飲みながら、舌なめずりをした。

「確かに美味いな」

ミドウも同意する。

ハックは相変わらず無言で飲んでいた。












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