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無空間、有空間  作者: Capso
3/11

青いバーで

そこには、バーがあった。

壁、床、テーブル、イス、全てが、さっき歩いてきた廊下と同じ、青白い色をしていた。

「まるで、水族館だな」

あたりを見回したオレはつぶやいた。

「すげ~綺麗だな」

エイトもきょろきょろと見回している。

所々に明かりが下がっている。壁や床自体が青白く光っているので必要ない気がした。実際、廊下では、明かりもなしに歩いてきたのだから。

バーカウンターには、マスターらしき、やけに綺麗な顔をした、銀髪オールバックの男がグラスを磨いていた。彼の背後には色鮮やかなボトルが所せましと並んでいる。

「おい、ザク、なんかオレらすげえみられてねぇか?それになんか、ガキばっかじゃね?」

オレの肩に肘をのせてたエイトが、不快そうに周りを見渡しながら言った。

「ガキって。オレらとあんま歳変わらなさそうだろ。でも、確かに見られてんな」

まわりの、黒いソファに腰かけた男や、カウンターでマスターにハートマークを飛ばしてた女が、こちらを品定めをするように見てくる。

「まぁいいか。とりあえずどっか座ろうぜ。あ、オレ、あのカウンターにいる可愛い子ちゃんのとこ行こ」

「あ?おい待て」

全く勝手なヤツだ。

オレはとりあえず、まわりの様子を観察してみる事にする。

扉の1番近くにあった、黒いソファに座った。中にいる人間は10数人。男の方が圧倒的に多い。

オレの左隣には、3人組の男がいた。

1人は、黒いニット帽をかぶり、オレと同じく黒ずくめの恰好をしている。顔は帽子のせいでよく見えない。

2人目は、ニット帽の前のイスに、何故か靴と靴下を脱ぎ、あぐらをかいて座っている。よくあの小さいイスにあぐらなんかかけるもんだと思う。こいつも、長い金髪のせいで顔がみえなかった。

3人目はなんだか、他の2人とは雰囲気が違った。黒髪で、服装は、白シャツに、ベージュのパンツ。シンプルだが、コイツが着てると何故か気品を感じる。

あ。目が合った。こっちに来る。

「やぁ。どうも。さっき入ってきた人だよね?見てたんだ」

ニッコリ笑い、オレの目の前に座る。

白い肌に、少したれ目がちな瞳。左目の横に小さい星のタトゥーが入ってる。

「ああ。なんかガン見されてたな。ここにいるヤツら全員に」

「そりゃあね。みんなここに来たばっかりなんだ。君にも、メール、来たんでしょう?」

じっとこっちを見ながら確かめるように言った。

他の2人も、こっちを見ている。

「ああ。お前もなのか?」

そう答えると、ほっとしたように笑った。

「そうだよ。あっちにいる2人もね。紹介するよ」

そう言うと、2人に手招きした。

「こっちの帽子かぶってるのがハック、金髪の方がマーチ。最後になったけど、オレがミドウ」

ハックは無言でオレを見て頷く。

「よろしく~」

マーチはそう言って、オレの手を取りブンブンふった。相変わらず、靴下ははいていない。

「でもさ、オレら以外に、メールもらって本当に来ちゃうヤツがこんなにいるなんてね。オドロキ~!」

そう言ってさらにオレの腕を上下にふりまわす。痛い。

「こら。やめなよ。痛がってんじゃん?ええと・・」

「ザク」

「ああ。ザク。まぁでも本当にびっくりだよ。あんなバカなメールもらってここまで来るとはね」

そうミドウがマーチに同意した。

「おい。ハックとマーチも座れよ」

オレは、2人に席に座るようほだした。

「ああ。そういやそうだな」

「・・・・・・・・」

先に、無言でハックがオレの隣に座った。

「あれ?ハッちゃんそっち座っちゃうかんじ?オレもそっちがよかったのに」

「・・・・・・足」

「ん?何?」

「・・・・足、くせぇっつってんだよ」

あ。喋った。コイツ初めて喋ったな。

そう思った瞬間、空気が凍り付いた。

「ええ~!?ヒドッ、久々喋ったと思ったら第一声がソレかよ!?」

長い金髪を振り乱し、マーチが、ハックの胸倉につかみかかった。

「靴下履けよ。くせぇ」

「ああん?靴下?」

マーチが足元を見る。目線を右に移動させ、さっき座っていた席に自分の靴下と靴があるのを発見すると、パッとハックの服をはなした。

途端にさっきまでの殺気が消える。

「ああ。悪ぃ。ははっ忘れてた。そりぁ、素足のままソファに座られたらザクも迷惑だわなぁ~。悪かったな、ハッちゃんっ」

そう言って、靴下を取りに戻った。

「アイツ、今すげぇ殺気出てたぞ」

今一瞬の、マーチのキレ具合に少し驚き、ミドウに問いかけた。

ミドウは何事もなかったように、テーブルのメニュー表を見る。

「アイツはね、ああいうヤツだから。ザクも気をつけた方がいいよ」

「キレたらやばいやつ、てことか?」

ミドウは一瞬動きを止めて、ちらりとオレを見て頷いた。

「そゆこと。アイツ、気に入ったヤツにはとことん甘いけど、もしそいつが裏切ったりしようもんなら」

そこで言葉を切り、親指で喉を掻っ切る動作をした。

「だから、気をつけてね。ザク」

「・・・ああ」

まぁ、深入りはしないでおこう。

「ところでさ、ザク、何か飲む?」

ミドウはメニュー表を広げ、オレに手渡す。隣から、ハックも覗き込んできた。

「オレは、コーラ」

「え、コーラ?酒のまないの?」

不思議そうな顔をして、ミドウが聞き返してきた。

「オレ、酒飲めねぇの」

「ウソ、マジで!?カワイソー。人生50%損」

靴下を取り戻してきたらしいマーチが大げさに驚き、会話に乱入してきた。

「本当だね。コーラだけで今までの人生しのいできたなんて」

ミドウも大げさに哀れみの声を上げる。

「いや。コーラだけ飲んで生きてきたわけじゃねーし。つーか、オレ未成年だし」

オレがそう言うと、

「クッハハハハッ」

「クスッ」

「・・・・・・・・・フッ」

何故か3人とも笑い出した。

最後の1人、聞こえてるからな、ちゃんと。

「未成年!そんな単語、久々に聞いたわ。ククッ。お前、かーわいーなー」

マーチがハックを押しつぶしてソファに乱入し、オレの髪の毛をがしがしかきまわす。その拍子に、サングラスが片方ずりさがってしまった。

目の前にいるミドウと目が合う。

ミドウは、目を見開き、テーブルに手をつき、オレの顔を覗き込んできた。それから、左手でサングラスを外してしまった。

「お前っ、その目!?」

「ん~?何だ?ザクちゃんのお目目がどうかし・・・」

そこで言葉を止め、マーチが固まった。

見られてしまった。

隣で、マーチに押しつぶされていたハックまでもが、固まっているマーチをおしのけ、オレの方を覗き込んできた。そして、わずかに目が見開かれる。

まぁ。無理もない。

オレの左目は、青い糸で、瞼を閉じた状態で縫い付けられているのだから。




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