愛してないよ
最初から運命の人に逢えたらいいんですけどね・・・
愛してないよなんて残酷な言葉はない
最後まで受け入れた後に言う言葉じゃない
これが始まりであって終わりではなかった
はずなのに
始まってすらいなかった
独り舞踏の恋愛物語
何も知らない少女を乗せて
黒のセダンで誘う男
行きつく先は
二人のために用意された無音の空間
閉鎖された大人の世界が広がる
少女は包まれていくうちに 身もこころも解けていった
温もりを深く分け合い その瞬間
愛が芽生えた
それが“愛”だと少女は疑わず
夜を越え週を越え
気が付けば月を越えて
会えないことに悶える日々
少女は温もり求め こころ彷徨う
近付くのが早すぎて
知るのが遅すぎて
盲目になっていた
愛することに
それが損失だとは気付かずに
少女は知らなかった
それが愛ではなかったと
温もりが愛ではないと
声が聴きたい
声だけでもいいから
その思いが通じたのは
夏も終わりが近づくころ
空白の日々に上書きされる
独り舞踏の恋愛物語
その続き
いままですべての悲しみやさみしさも吹き飛ばすような
激情が少女の胸に込み上げる
愛してる
愛してる
叫びたいほどに
でもその意味を
少女は知らなかった
時を越え
同じ道路を走る
別の人の車に乗って
あの頃見かけた看板はまだそこにあった
通り過ぎるまでの瞬間 時の流れを忘れ
背にした瞬間 哀愁しい微笑がこぼれた
ミラー越しに見えた彼の目笑が
開いた傷口 そっと塞いだ
愛してる…
少女は知った
大人になって
愛してるの意味は
言葉じゃないと
文中の「独り舞踏」ですが、「一人よがり」にしようと思ってやめました。どちらも自分だけが盛り上がって一人で燃えている(浮かれて踊っている)愚かな人をイメージしているんですが、「よがり」はエロエロしいのでなんかギャグになりそうなので却下しました。