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一話 『整備士、異世界へ』

 目を覚ますと、ベットの上だった。

「ここは、どこだ?」

 俺は辺りを見渡す。見知らぬ部屋。窓の位置から家具の配置、まったく見覚えがなかった。

「っていうか、俺作業してて、車の下敷きに……」

 意識を失う前、リフトで上げた車の下で作業していたはずだ。そのときいきなり地面が揺れて、車のバランスが崩れて落ちて来たんだよな。色んな物が見えて、あぁこれが走馬灯かって。

「てことは、天国?俺、死んだ?」

 まてまてまて、まじかよ。遣り残したこと多すぎるんだが。あと数日で新作ゲームの発売日だってのに。

「ああ、これは夢か。」

 俺はそう言いながら窓を開けてみる。肌に触れる外の空気は以外に冷たかった。

 冷たい?

「う~む、夢にしてはなんか現実味が有るというか、意識がはっきりしているというか。」

 俺は首をひねると窓の外に意識を向ける。広大な草原がそこにはあった。

「ん?あれは?」

 遠くて良く見えないが、草原になにやら動く物がいる。それは徐々に近づいてきた。最初は犬と思っていたが、シルエットから人間のように見える。

 だんだん輪郭もはっきりと確認できるようになった。ぴん、と尖った耳、鼻は曲がり、口からはいびつに並んだ茶色い歯が見える。身長は低く、三頭身くらいだろうか。片手に棒を持ち、ぼろ布を腰に巻いている。

「ははは、まさかな。」

 俺は静かに窓とカーテンを閉める。最近RPGのやりすぎだろうか。ゴブリンみたいな生き物が見えたがきっと夢だからだろう。

 ベットに戻ろうと振り返る。すると、部屋の照明に頭をおもいっきりぶつけてしまった。

「あいた。ったく、この部屋天井低い、な……」

 妙な胸騒ぎがした。違和感がこみ上げてくる。先ほど発した自分の言葉を思い返す。

 あいた、痛い、痛覚。俺は夢の中で痛みを感じたことは無い。感じる前に飛び起きるからだ。自分の腕をつねってみる。力を加えていくのに比例して痛みが増していく。

 それはリアルな痛みだった。リアルすぎるのだ。

「夢じゃない、のか?あのゴブっぽいのも?ここはどこなんだ?」

 俺は部屋中を歩き回る。なにか見知ったものがないかを探すためだ。しかし、部屋の中にあるものはどれも初めて見るものばかりだった。

 信じたくはない。これを信じるという事は頭がおかしくなったという事だからだ。

「俺は、異世界にいる。」

 頭がおかしくなったついでだ、とちょっとかっこつけて言ってみる。誰も見てはいないが、ものすごく恥ずかしかった。大の大人が厨ニ病っていうのもどうだろうか。

 そんなことを考えていると、激しくドアを叩く音が聞こえてきた。ドアの叩き方から激しい怒りが伝わってくる。訳の分からない状況で面倒事は御免だ、と居留守を決め込むことにした。

「おい!起きてるのか?」

 無視。しかし、ドアを叩く音は止まる気配がない。

「死んでるのか?死んでないなら開けろ!死んでても開けろ!」

 いや、待て。おかしいよな?質問がおかしいよな?死んでたら開けれる訳ないだろ!俺は心の中でツッコミを入れる。

「・・・」

 とうとう無言で叩き出した。ドアの軋む音が部屋に響く。ドアの耐久度が見る見るうちに減っていくのが分かる。蝶番が歪み、あと一、二発で壊れる状態になった時、急に音が止まった。

 やっと諦めてくれたか、とため息をついた時、

「最初からこうすれば早かったな!」

 という声と共に爆音が、というか爆発が部屋の中になだれ込んできた。爆風に吹っ飛ばされそのまま壁に叩きつけられる。

 背中に受けた衝撃に呻いているとドアを吹き飛ばした奴が入ってきた。

「おぉ、居た居た。おらいつまで寝てる!新入りが寝坊とはいい度胸だな!」

「お、んな、のこ?」

 笑顔で蹴り上げられた。あぁ、やっぱり痛い。

「子、は余計だ新入り。さっさと仕度しろ!あぁいや、そのままでいい!さっさと来い。」

 そのまま襟首をつかまれ、少女に引きずられる形で部屋を出る事になった。

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