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第三話

「う~ん、このお煮しめ、美味し~い❤」


真っ先に感嘆の声を上げたのは、雅だ。

バレエや舞台などの話があい、日に数回のメールを遣り取りする雅は、

すっかり翠の“お姉さん”的立場になっている。



「錦玉子も、翠くんが作ったの!?京牙さんは、幸せ者ですね~♪」


素直な言葉は、タツキ。

絶縁したとは云え、大事な兄の主人的立場になる翠に最初は遠慮気味だった彼も、去年の(バカンス)以来、すっかり打ち解けている。



「か、からかわないで下さいよ・・・!」


マスコットアイドルと化している翠だが、こんな風に年相応に構われる事が、実は嬉しくて仕方がない。


「からかってなんかないって。本気、本気」


「こんな料理上手の奥さま貰えた京牙さんって、ホント果報者ですよ」


敬語を崩さない、古風な言い回しをするのは、香月。

一度、翠が自分は二回りも年下なのだから敬語はやめて下さいと言ってみたのだが、困った顔をされてしまった。

『香月の性分なので諦めてあげて下さい』と、助け舟を出してくれたのは高見沢だ。



「セーター編むのも手伝ってもらったし・・・・翠くんって本当に家庭的だよね~。

ご免ね~、翠くんは受験生なのに。」


のほほんと、翠にとっての爆弾を投下したのは、義理の姉上・紫だ。

本来の主役であるはずなのだが、そんな事は全く気にしていない。このメンバーで集まれるのが嬉しくて仕方がないのだ。




「・・・・グッ!・・・・・それは、言わない約束でしょ、おっ()さん・・・・・・・」



途端に起こる大爆笑。


お前は、いつの時代の高校生なんだとか。

それを言うなら『お()っつぁん』だろう、なんて余計な突っ込みは一切入らない。





その後、話は翠の大学進学、そして将来の展望へと移りそうになったのだが、『お正月から堅苦しい話はやめましょうよ~』

との主役の一言で軌道修正され、互いのドレスの可憐さ美しさ、やがては旦那自慢にと、ひとしきり話に花を咲かせたのだった。










「お花、五輪でくっついちゃって、仲良いわね~~」


無責任に呑気な声は、今回のイベントの首謀者・リザだ。

五つのカップルのお節介を焼いた仲人を気取っているのか、黒地に金が波打つ際に紅梅と白梅の柄が艶やかな、留袖風の着物を着崩したようなドレスを纏っている。


モエ・エ・シャンドンの最高級品(グランヴィンテージ)を片手に、自慢の花園よりも美しく仕上がった自分の傑作たちを遠目に眺め、悦に入っている。




と。その機嫌の良さを損なうような、苦々しい、しかし真剣な声が響いた。


「―――おい、リザ。ここは何だ?」

京牙の声は、いつになく固い。


それに気付かない振りをして、リザはあくまで陽気に答える。

「手持ちのヴィラの一つだって言わなかった?」


「“手持ち”の・・・・ね」

いつもの京牙の皮肉気な口調とは似て非なる空気(ムード)に、流石にリザの眉根が寄る。が、直ぐに愉快気な微笑みに崩れた。




「なあに?言いたい事があるなら、ハッキリ言って頂戴。」




「―――言いたい事は、イタリア人も御同様のようだぜ」

横から入った深水の声に、ルチアーノに視線を向ければ、京牙同様の、

いや、それ以上に固い冷たい視線()がリザを見ていた。



「・・・・何か?スィニョール・アレッサンドリ」


リザは、ガラリと口調を改めて相対した。

茶化す事を許さない峻厳さを感じたからだ。




傲岸不遜なマフィアのボスが、少しの逡巡の後、放った言葉に対する二人の反応は対照的だった。



「・・・何故、【Eternal Rose】が、この(ここ)にあるっ!?」



「あら、ま☆ 流石は、ドン・アレッサンドリ。御存じでしたの?」どこまでも愉快気なリザと。

「・・・・・・だから、ここを使うのはやめろって言ったんだ・・・・・」天を仰ぐ、深水と。




「・・・・父や祖父・・・・いや、先祖の言う事を信じるなら、この数百年だ。


欧米の社交界やアラブの王族・・・そう云う特権階級(スーパーリッチ)の中に、明らかに不老と思われる人間がいる。


私が実際に眼にしたのは一度きりだが・・・そいつが誇らしげに胸に飾っていた薔薇が、そこに咲いてるそれだ・・・・」



そう言って、丁度、リザの後ろを指差す。



「かの黒薔薇(シャルル・マルラン)より薫り高く、血のように紅い・・・・・【Eternal Rose(エターナル・ローズ)】と云う品種だと、(そいつ)嘲笑(わら)っていた」





リザは、その指差された薔薇を一本手折る。


「・・・・違うわ・・・・これは、【Elisabeth Rose(エリザベート・ローゼ)】と云うのよ・・・・あの人が、私に創ってくれた薔薇よ・・・・」



一瞬、どこか遠い眼差しになるリザに、京牙が遠慮のない溜め息を吐く。









「・・・・・やっぱり、ここは【元老院】の一角なんだな・・・・不老不死のジジィババァどものいる・・・・・・」



「・・・・・どこまで調べたの?京牙。・・・・京司(アツシ)に、私には深入りするなって忠告されなかった?」



「翠に関わる事なんだぜ?放っておけるかよ。・・・・それに、緋龍院(ウチ)祖父(ジジイ)を名前で呼べる奴なんて、そういやしねぇ」








「・・・・・・おかしいと思ってたんだ。不治の病と言われていた病気が奇跡的に完治したなんてな。

翠の本当の再従姉妹(またいとこ)は、もう死んでるんだな?」





京牙は、底冷えのするような()でリザを睨んだ。




「【エリザベート・アモン】を名乗る女・・・・・・・・貴様、一体、何者だ?」






。。。話が【降りて】くるので、天野には

どうにもならないのですぅ~~~(爆)

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