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一話・嘘

いくつか用語が他作品のものがありますが、ストーリーは全てオリジナルです。

時間は五分にして無限。

残りは七枚。

十分可能だ。

だから。

俺は。



よくある事故だった。

乗用車同士の出会い頭の事故。

不幸にも、運転手の片方の脇腹にはガラスが深々と刺さり、止血してもどくどくと血が流れている。

無論、こんな時の輸血パックだ。

深夜緊急担当の医師は、傷口を縫い合わせながら、

『余裕で助かる。大丈夫だ』

と考えていた。

そこに、血相を変えた数人の看護師が駆け込んでくる。見れば、ナースセンター担当の看護師も居るではないか。

医師は溜息を吐いて、言った。

「何をしている、早く輸血を。他の担当は持ち場に戻れ。危篤患者は一人じゃないんだぞ?」

だが、その声に、一人の看護師が答える。

「先生…違うんです…みんなで、この病院中探したんです、でも…」

「でもじゃない! 早くしろ! 助かるものも助からないだろ!」

明らかに血圧が下がってきている。苛々する。しかし、その怒鳴り声にも看護師達は立ち尽くすだけだ。

「見つからないんです…一つも…」

「病院中、ロッカーの中まで探しました、ですが」

「輸血用のパックが、一つも見つからないんです。まるで、そう、」


『魔法で、消えたみたいに』



中身を吸い終えた輸血用パックを、屋上に設置されたゴミ箱に捨てる。

ネックウォーマーを鼻まで上げると、小さく息を吐いた。

「まったく、面倒ですね…」

男にしては高く、女にしては低い、微妙なハスキーボイス。

漆黒のダッフルコートは長く、足下近くまで覆っている。

下半身は黒いズボン。黒の靴下に黒の革靴。

被ったフードは額まで覆い、ネックウォーマーも闇のように黒い。

ただ一点、露出している目元の肌は蝋のように白く、両眼はルビーのように紅い。

「そう思いません?」

誰に話しているのだろう、その呟き。だが、どこからか、小さく答える声があった。

『広域破壊に一番適しているのは貴方ですから。まさかここで、剣を使って頂くわけにも…ね?』

じっと観察すれば解るだろうか。

漆黒のコート。その肩に、小さな小さな虫が居るのが。

若干奇妙な形をしているが…イナゴ、だろうか?

先程の声は、その虫から発せられているようだった。

「…そうですね。あんなのぶん回したら、此処に河が出来ちゃいますしね。

 それじゃいきます。クッションお願いしますね?」

『仰せのままに』

 紅き瞳が下を向く。何か呟いただろうか? 小さく小さく音が流れた後、黒き人影は右手を挙げた。

 その手も黒き手袋に包まれているが……手は器用にパチリ、と指を鳴らした。

 同時に、イナゴが羽を震わせる。



 くぐもった爆音が、夜を貫いた。


 ※


「第十五支部の生存者はゼロ。現在無事なデバイスを発掘中だ」

ぼそぼそと報告し、公安秘匿文書保護課第三本部・係長アインス・ロウは口をつぐんだ。

その場の全員がほう、と溜息を吐く。これで何度目だろうか。

「質問が在れば受け付ける。何かあるかね?」

「ち、因みに…破壊力はどれくらいだったんですか?」

おずおずと手を挙げて、会議場で一番幼いであろう少女が問う。

仁原ひとはら。17歳。元有名アイドルにして、デバイス『セイレーン』の適合者だ。

「内部のブラックボックスを解析したが、恐らくA+程度の魔力量だったと推測される」

「は? 広域のA+? それじゃビル全壊だろ。一般人の被害の方が大きかったんじゃねーの」

言いながら、やる気無く手元のカフェオレを啜る。彼は阪友。22歳のフリーター。デバイス『ロキ』の適合者。

「いや、不思議だが…確かに支部のビルは強大な魔力で蹂躙された。だがな、『ビルの外壁や窓硝子、それらに一切のダメージはなかった』のだ。まるで、そこのダメージだけ『無かったこと』にされたように」

眉を顰め、阪友の言葉に答えるアインス。

彼自身、不思議で仕方ないのだ。

「それが本当なら、恐らくは外壁のみ結界を張った限定広域魔術だろうね。

 だが、それなら魔力量はA+じゃ済まない。SSクラスを発現しているはずだが、どうなんだい?」

カタカタと手元のノートパソコンを弄りながら、ずれた眼鏡をあいた右手でくい、っと上げる。

氷室。22歳。ソフト・ハード開発販売大企業『SAT―AN』の社長の一人息子にして、デバイス『セイテンタイセイ』の適合者。

「いや、魔力量はそこまで大きなものは観測・記録されていなかった。犯人は、あくまでもA+クラスの魔力で事を成したようだ」

「……過程に意味なんて在るのか。俺たちに必要なのは結果だけだろ。犯人が『それが可能』な相手なら、そう考えるだけだ。そして倒せばいい。違うか?」

身も蓋もないことを言って、皆を無言にさせたのが真栄田まえだ。25歳。元捜査一課、現在は公安に在籍。デバイス『オンギョウキ』の適合者。

「ともかく、恐らく次は此処が狙われる可能性が高い。本部が潰されるのは非常にまずい。警戒は厳重にするが…皆も知っての通り、此処は結界の意味を込めて北、南、東、西に中心部への直結通路がある」

ガタ、と音を立て、アインスが立ち上がる。

「現在この本部に居る主力メンバーはちょうど四人。君たちをそれぞれ最終防衛ラインとして配置する。すまないが……頼むぞ。『何があっても、私を殺させてはいけない』」

「はいっ!」

「へーい」

「了解した」

「ああ」

四者四様に返事をした後、メンバーが散っていく。

その後ろ姿を眺めながら、残されたアインスは、

「そう、私は、死んではいけないのだ…」

と、呟いていた。



ドーム場の部屋。その中心に、光体が浮かんでいる。

『よく、やってくれたな』

響く声に、漆黒の影が膝をつき、頭を垂れる。

「いえ、勿体ないお言葉です」

その声は間違いなく、昨夜、ビルの屋上に立っていたあの影だ。

違っているところがあるなら、その瞳が蒼い事だろうか。

『お前のサポートも素晴らしい。一般人に被害は?』

「一人。病院で救急患者が亡くなりました。が、ビル周辺に問題はございません」

この声も、昨晩闇に流れたそれに似ている。

そう、あの不気味なイナゴの鳴き声に。

しかし、現在は人の形をしているそれは、とても奇妙だった。

奇矯なパレードに着ていくような、ラメの入った。

冗談のようなサーモンピンクのスーツ。

黒髪であるのは解るが、その顔は道化師の仮面で覆われていて、表情を伺うことは出来ない。

『そうだな…今日、此処に入ってきた鼠は居たか?』

「一人、近づいてきた捜査員らしき者がおりましたので、消しておきました」

答えた者も、異様な姿だった。

中世が舞台のファンタジーに出てくるような全身甲冑。

頭から足下まで白銀の輝きに包まれ、腰には豪華絢爛な装飾の施された鞘に包まれた一振りの剣が在る。

『問題ないな…さて、お前はどうだ?』

「あは、順調ですぅー」

最後に声に答えた四人目。ほぼ紐のような下着…いや、アレが服なのだろうか…?

その上にギリギリ光が透けないような布を被った、日中に街中を歩けば、間違いなく逮捕されるような格好。

唇は艶々と光り、膨らんだ胸、くびれた腰、局部が見えない、だが極限まで露出された下半身。

下品に限りなく近い卑猥。

その瞳はアイマスクに隠れ、逆に性的な雰囲気を醸し出している。

「三人くらい『やった』らぁ、一人が引っかかりまして。……当たりですぅー」

その報告に、嬉しかったのだろう、光体は小さく震えた。

『よくやったぞ――では、今回は無駄な殺戮にはならぬな。四人とも……行ってくるがいい』

まるで神のように、光体は四人に言った。

『ゆくがよい、我が愛おしき四天王。――アインス・ロウを、殺せ』

無言で、四人は光体に一礼し、





『……くく、ふふふ』





姿を消した。



「貴方のハートに火をつけて♪」

仁原が歌うと同時に、敵兵が火に巻かれ、苦しみながら炭と化す。

「…ふぅ、やっぱやだなー」

呪われしデバイス。彼女の心に巣くうデバイス、『セイレーン』。

彼女が歌えば、破滅が起こる。それは飛行機事故だったり、交通事故だったり、

すぐ隣にいたアイドルの――舞台からの落下即死事故だったり、した。

彼女が突き落としたのだと、呪われたアイドルだと、マスコミは叩いた。

だから、この職に就くまで、彼女は歌を封印してきた。

だが、今は……

「ん?」

何かが飛んでいる。

それは分身したかのように数を増やすと、

「今晩は、お嬢さん」

人の形を成した。

変なスーツを着た、ピエロの仮面。

だが、そこから感じる魔力は……!

「っ、涙はいつだって冷たい♪」

歌う彼女。同時に、巨大な氷の塊がそのピエロの仮面を、いや、首から上全てを吹き飛ばした。

ほ、と息を吐き、彼女はマイクを、

「素晴らしい! 昔貴方のファンだった私としては、その歌の美しさが衰えていないことが嬉しい!」

その首のない体は、明らかに死んだ姿のまま、パチパチと彼女に賞賛の拍手を送っていた。

あまりの不気味さに、吐き気がする。

仁原が思わず口を押さえると、先程の虫――いや、あれは、イナゴだ!――は周囲から沸きだし、再びピエロの顔を作り上げた。

「さあ、呪われし元アイドル。私のために、生ライブをお願いします!」

羽音が響く。嗚咽で涙を浮かべながら、仁原はマイクを手にした。



「あー、めんどくせー」

凍り付いた敵兵の死体に座りながら、阪友は煙草を吹かした。

この程度、雑魚の持っているような量産デバイスなら、阪友に敵はない。

持っている魔槍には、何人分だろうか、の肉片が付着している。

阪友のデバイスと、この武装がある限り、彼は無敵。

――の、筈だった。

「屍体を椅子にするとは、見下げた精神だな。騎士道の風上にも置けん」

「んあ?」

声に反応し、阪友は立ち上がると、新たに現れた敵を見つめた。

時代錯誤な全身鎧。

手には無骨な西洋刀。

「悪いが俺は騎士道なんかに興味はなくてね。ナイトごっこならゲームでやってな」

目を閉じる。デバイスが冷気を、いや、吹雪を発動する。

「俺の『悪戯』で死にな、雑魚」

その吹雪を受けながら、キシキシと鎧の間接を鳴らしながら。

騎士は剣を構えると、阪友に答えた。

「よかろう、その『悪戯』、子供騙しと知れ」



氷室は叩いている。鍵盤を歌うように、ひたすらノートパソコンのキーを叩いている。

それで十分だ。ここの守りは完璧。

ある敵は無限回廊に、ある敵は強制的に外に。

雑魚など殺す必要もない。この本部の防衛プログラムだけで十分対応できる。

だって。

くい、と下がった眼鏡を持ち上げ、呟く。

「だって、『死んだらどうするんだ』」

と、

ぷつん、とパソコンの電源が落ちた。

氷室は眉を顰め、目を上げた。

其処には、何というか、その、

「は、あーい!」

露出狂が居た。

「……君が電磁波を操ったのかい?」

氷室の話を聞いているのかどうか。

女は無駄にセクシーなポーズで挑発してくる。

無論、そんな物で一ミクロンたりとも精神に感じる氷室ではない。

ただ、圧倒的な魔力値を、この敵が持っているということだけ――!

「ここから先は通行止めだ。――でなければ、止める」

「あはっ、じゃあ感じて。嘘と幻の快楽地獄」

女は、チュ、っと投げキッスをした。



殺人に禁忌など、真栄田は感じたことはない。

ただ、

「せめて痛くしないでおこう」

程度は感じるほどに、彼も人間ではあった。

犯罪者に人権などない。

「――ふっ!」

デバイスの力を込めたナックルで、敵兵の心臓を吹き飛ばす。

引きつるように痙攣しながら、敵は倒れた。

血が舞う。自分のものではないそれを、袖で拭う。

何人殺したか。20までは数えていたが、それ以降はわからない。

残り魔力は充分。この十倍くらいなら、余裕で持ちこたえる。

が、

今度現れた敵は、少し違った。

魔力なら、むしろ今までの敵の方が大きかった。

何のデバイスを持っているのかは知らないが、雑魚だ。

が、しかし、その姿が異様だった。

全身漆黒。虚ろな蒼い瞳が、真栄田を見つめている…のだろうか?

「ここが、最終関門ですね」

男か? 女か? いや、そんなことはどうでもいい。

「…八卦、真鉄」

軽く魔力を通した、右ストレート。

これだけで、こいつの首から上は吹き飛ぶ。

筈だった。

「……な!?」

ひょい、と差し出された右手。

それだけで、必殺の一撃は防がれていた。

魔力は感じない。なのに、これは、まるで――

『絶対の結界』のような…!

「……ならば!」

とん、と、脚をつき、今度こそ全力の魔力を拳に通す。

「『陰隠の術』――ぶち抜けぇ!」

真栄田の隠し技、どんな障壁をも破壊する絶対の破壊拳!

それはその通り、今度こそ謎の障壁を貫き、

「とっとぉ!」

漆黒のコートの鳩尾部分、急所に入った。

確実に入ったはず。


だった。


「へえー。『あれ』を貫通しますか。久々すぎて面白いです」

触れた瞬間、真栄田には解った。

結界どころの話じゃない。

あのコート、ネックウォーマー、服、下着、手袋、靴下、革靴――

全てに、尋常じゃ無いくらいの魔力防御、自動回復能力が着いている…!

「攻撃能力はだいたい解りました。なら――」

ぱちり、と瞬きした瞳が。

聖蒼から、呪紅に変わっている――!

「どこまで壊れないか、遊んであげますよ」

爆発的な魔力の上昇。A++、いや、Sオーバー!?

真栄田は確信する。

こいつが、こいつこそが、例の広域破壊魔術の術者……!



光体が呟く。

『防御……そんなものは関係ない』

いや、呟いているのではない。

笑って、嗤っている。

『俺の造った玩具とデバイスが、SS程度の魔力で収まるものか』



「歌い終えましたか、お嬢さん?」

イナゴの笑い声に、仁原は奥歯を噛み締める。

無論歌える、歌えるけれど……

「では」

「ここで」

「終わりにしますか?」

「ふふふ」

『このピエロ――どれが本体なの?』

十人以上居る、サーモンピンクのピエロ。

解る。その全てが紙装甲で、その全てが偽物だ。

いくら歌っても、虫を焼き、凍らせ、潰すだけ。

いくら呪っても、『セイレーン』の与える死が届かない。

何故、何故――

「そうだ、最後に貴方に真実を教えましょう」

ぴょん、と目の前に飛んできた一匹のイナゴが彼女に囁く。

『私はまだ、この本部に侵入すらしていませんよ』

「っな…!」

『それでは、終わりにしましょう。――宝具『五番目の絶望デスポイズン』』

直後。

彼女の視界は闇に染まった。



「『悪戯』!」

しゅん、と阪友が騎士の背後に転移する。

阪友の戦法は単純なものだ。

まず吹雪で敵を止める。直後、ロキの『悪戯』で敵の背後に瞬間移動する。そして、呪詛のついた槍で心臓を一突き。

心臓を呪いで爆破するのだ。無論、相手は即死する。

避けようにも、吹雪で体は凍り付いている。

その上、相手は背後から襲ってくるのだ。

故に一撃必殺。


だったのだ。


だったのだが。


「はぁっ!」

呪詛の槍で騎士の心臓を突く。

鎧の防御など関係ない。

手応えがある。確実に心臓は破壊した。

――が、

「……そろそろそれも見飽きたな。所詮は『悪戯』。子供騙しか」

振り返った騎士の心臓は――いや、そもそも鎧すら、傷一つ、ついていない。

まるで『回復』と言うより、『不死身』のような、

「終わらせよう。すまんな、死んだら――自らの弱さを憎め」

騎士の剣。その鉛色の刃が、一瞬黄金のように輝き、

「宝具『覇王のバーストライト』」

阪友の体が光に包まれた。



「八相発破!」

氷室の刀から放たれた波動、魔力に換算すればA+オーバーを記録するであろうそれは、5人の女を掻き消した。

しかし。

『――また幻覚!』

振り向けば、初めと同じ。

一人の女が、クスクスと笑っている。

嘘と幻の快楽地獄。その通りだ。

氷室にも解っている。この目の前の女は、本物ではない。

だが――居ないのだ。他に目標は居ないのだ。

前後左右、上下、どこにも。

魔力反応があるのは、この目の前の女だけ。

ならば――

「八相…発破!」

魔力を絞り出すように波動を放つ。波動は女に接触し――

今度は『何事もなかったかのように』女の体を貫通した。

「な!?」

「うっふふ、馬鹿ねー」

おかしい。

女は目の前にいる。

なのに、

なぜか、

「最初の時点で貴方、負けてたのよ。でも飽きちゃった。終わりにしましょ?」

女の声が、みみもとできこえるようなきがする

さわ、と、おんなのやわらかいむねがひむろのせなかにあたった

ちがういまさわったんじゃないずっとぼくはかのじょをおぶってただただまりょくをしょうひして


にげないとし


「宝具『永眠の誘惑』(エターナルラバーズ)」

      ぬ





氷室が倒れた。

その横で、起動したままのノートパソコンが、エラー音を立てていた。



「ふう、で、飽きました? そろそろ」

その言葉に、真栄田は血が出そうな程に歯を噛み締める。

奥の手は通じている。

連打すれば服の防御も貫通し、確かにダメージを与えているのも解る。感じている。

しかし。

恐らくは服の能力ではない。敵のデバイス。正体は解らないが、あれは防御・回復に極端に特化したデバイスなのだろう。

魔力の通りが悪すぎる。

A++ランク近くのダメージを、1秒かからずに回復してのける。

では物理特化なら……無理だ。

何かしらの魔力であの結界を無効にしない限り、そもそもダメージが入らない。

倒せる、何か、何か手は……

「ん、そろそろお腹が空いて来ちゃいました。パラメータはだいたい解りましたんで……終わりにしますね」

来る。今までとは比べものにならない魔力の集中。

何かが来る……!

「『陰潜り』!」

真栄田の体が地面に潜る。

無論、実際に地下に潜ったわけではない。これは影に隠れ、目標を一時的に見失わせる幻影。

攻撃を回避し、魔力を使ったところに止めを!

「――忘れてるみたいなので言いますが」

影の口元はネックウォーマーで隠れている。だから見えない。しかし――

「私、広域型なんですよ。隠れても無駄です」

笑って、いる!

「宝具『銀幕の終演』(グランドフィナーレ)」



熱い。全身を炎が舐めている。

寒い。全身を氷が刺している。

痛い。全身を雷が這っている。

遠い。全身を風が撫でている。

儚い。全身を光が壊している。

怖い。全身を闇が覆っている。


そして、


耐えきれない崩壊が、理解できない無限が、体内を駆け巡っている。




一秒か。

百年か。


痛みは終わり。

そして、緞帳が下りた。



扉が開く。同時に、アインス・ロウは瞳を閉じた。

「……殺したのか?」

その問いに答えたのは、

「うふ、わっかんなーい」

下着姿の女だった。

「おやおや、遅れてすみません」

反対側の扉が開き、一匹のイナゴが飛び込んでくる。

「すまん、遅れたな」

北側の扉から騎士が入ってくる。

そして、

「――私が最後ですか」

黒い影が入室する。

「……なるほどな、全滅、か。最新のデバイスだったのだが……無念だ。だが、私を殺しても公安は」

『ぷっ』

女と影が、同時に吹き出した。

「馬鹿じゃないのー、知ってるわよ、あんた達の秘密なんて」

「あなたが単なる署長のコピー、デバイスも使えないゴミだって事くらい、ね」

「……!」

アインス・ロウ、いや、そのコピーの一人が、目を見開く。

「貴様ら、まさか……!」

「そうですよ、そして――『あなた方』の役割も存じております。偽物」

ぴょん、とイナゴが飛ぶ。その脚が、コピーの肩に触れる直前に、

「悪いな」

騎士の刃が、コピーの心臓を貫いた。

ぐしゃ、という肉の潰れる音はしない。

ただ、

パキン、と、ガラスを割ったような音が響いた。



「総本部の七結界が――、一枚割れたわ。コピーの一人の心臓が、破壊されたわね」

黒い乗用車。若干小型のそれの中には、一組の男女が居た。

運転しているのは眼鏡をかけた男。ただ、氷室と違って体が作り込まれているのが解る。身長は190を超えているのではないだろうか。

彼の名は相馬。22歳。普段はラーメン屋店主、『スサノオ』のデバイス使い。

「そうか。確か、最新型のデバイス使いが四人居ただろう。そいつらは?」

女性と二人なのが気まずいのか、彼の口調は必要以上にぶっきらぼうだ。

しかし、助手席の女性は気にせず、『千里眼』の能力に集中している。

女性の名は阿部。22歳。公安秘匿文書保護課・総本部特別属託魔導師。『ツチミカド』のデバイス使い。

「『セイレーン』は…魔力を根こそぎにされただけみたいね。『セイテンタイセイ』は、少し深い眠りについてる。二人ともしばらくは動けない…」

ここで、少し阿部の眉間が歪む。

「『ロキ』は酷いわ……ギリギリ防御が持ったみたい――!? 『オンギョウキ』はまずいわ! まず南口から入って! このままだと命に関わる!」

ち、と相馬が舌打ちをする。

警察に見つかれば明らかに止められるであろう速度で、車は第三本部・南口に進入した。



光体が、呟く。

『あと、6枚……』



眩しい。日光か、電灯か。

鬱陶しい。

「……ん?」

真栄田はゆっくりと目を開けた。

部屋は純白。自分がベッドに寝かされているのは、何となく理解した。

「目、覚めたのね。予想外に早いわ」

ボソボソと声が聞こえた。見れば、部屋の隅にはワンピースを着た一人の女性が座っている。

何故か安楽椅子。手元には有名な厚い文学小説。

石崎。30歳。大学助教授にして、『ピクシー』のデバイス使い。

「傷はふさがってるけど、まだ起きちゃだめよ。血も魔力もまるで足りていない。ま、死にかけたんだし、命があっただけでも良かったと思って」

ぱん、と音を立て、石崎は本を閉じ、立ち上がった。

そのまま無言で病室を立ち去ろうとする。

「待て…今は、いつだ? 俺は一体……係長は?」

「……鬱陶しいわね」

面倒そうに石崎は振り返る。

「第三本部が崩壊して一週間後よ。他の三人のデバイス使いも寝てる。死んだのは雑魚兵と係長だけよ。『ツチミカド』にお礼でも言っときなさい。それじゃ」

病室を後にする石崎。真栄田は点滴を見上げ、

「そうか、俺……負けたのか」

呟き、目を閉じた。



じりじりと夏の太陽がアスファルトを焦がす。

今日の最高気温は何度になるのか。考えただけで力が抜ける。

「はあ…」

溜息を吐きながら、相馬は自動販売機のボタンを押した。

購入した炭酸飲料に口をつける。微妙な薬臭さ。

もう片方の手に持ったハンバーガーを囓りながら、オリオン通りを歩く。

第五本部はフェスタ地下、B20階。

行けば眉を顰めた係長が待っているのだろう。

せめて死にかけた四人が回復してくれていればいいが、と思いながら、相馬はフェスタに向かった。

「……は? なんだありゃ?」

見れば、この夏の灼熱地獄の中。

全身黒の、真冬の格好をした男……女か? が、瓶からストローで何か啜っている。

色的にトマトジュースか。焦点の合っていない瞳が、美しく蒼い。

「外人か? 真夏に漆黒のコートって、暑くないのかね。変な奴」

変だとは思いながらも、相馬はフェスタの扉をくぐった。

冷房が心地よい。

本部に向かうために、相馬は奥の隠しエレベーターに向かう。


ちゅる、と瓶の最後の一滴を飲み干すと、黒き影は目を閉じた。

その横で、ぴょん、と虫が跳ねる。

直後、黒い影はまるで飲み込まれるように、地面に沈んだ。

一瞬開いたその両眼は、ただ、紅く。



涙が止まらない。もう何度目だろうか、仁原は濡れた頬を服の袖でこすった。

守れなかったのが悔しいのではない。

負けたのが悔しいのでもない。

ただ、怖い。虚しい。

アイドルとして、親友を殺したと言われてまで、ここに立ったのに。

「もう私の居場所、無くしたくないよ……」

セイレーンは何の反応も示さない。デバイスを発動する魔力が空だからだ。

デバイスに意識があったらいいのに、と彼女は思う。

そうすれば、相談も出来たのに。

辛い気持ちをはき出せたのに。

いや、そもそも、呪いでアイドルを辞めることも、なかったのかも知れないのに。

「誰も、誰も…私を解ってくれない」

そして、次に戦闘に出れば。恐らく自分は死ぬのだ。

あのイナゴに、

全身を食い荒らされて死ぬに決まってる。

「怖いよ……」

冷房が効き過ぎなのだろうか。

寒くて寒くて、いや、怖くて。

歯がガチガチと鳴った。



深夜のオリオン通りは、奇妙に賑わっている。

学生は居ないが、飲みの帰りのサラリーマン集団や、お世辞にも上品とは言えない格好の若者が歩いている。

「ぎゃはは、なくね? なくね?」

「ウケるしー。てか、死ねばいいよねー」

「部長、今日は代行で! もう一軒!」

「嫁に叱られるなぁ、ま、いいかぁ」

舌打ち。手にしたノンアルコールビールの缶を、思い切り握りつぶす。

何で俺が正面の見張りなんだ。

こんなもの、限定デバイスを持つ化け物連中に任せておけ。

俺のような、量産デバイス持ち、最大魔力値Dランクの雑魚が、何が出来るというのか。

思い切り、閉まったフェンスに缶を投げつけた。

帰りたい。帰宅し、嫁と子供の寝顔を見ながら、刺身でもつまみに一杯やりたい。

「あと一時間か、あー、警察に就職したのがそもそものまちが」

「……あら、いい男」

ば、と振り返る。其処には、何というか、珍妙な格好の女が居た。

ストリッパーか? いや、そんな店、この近所にあっただろうか。

「何だあんた。田舎でも此処は危険だぞ。早く帰った方が、身のためだ」

女は答えない。ただ、アイマスクを少しずらし、視線を俺に合わせ、

『ねえ、答えて?』


意識が飛ぶ。

いや、飛んではいない。

ただ、目の前の女性が愛しくて愛しくて愛しくていとしくていとしくていとしくていとしくていとし

「ねえ、此処って本部なの? 係長はいる?」

「ああいるよここはだいごほんぶでちかにじゅっかいにかかりちょうがいてでもえれべーたーはかくれているしかりにのれたとしてもほんぶのにんげんしかうごかせないからしんにゅうするならじゅうはちそうあるまりょくそうこうばんをつらぬいてはいるしかないからむてきなんだそうだけどいちおうおれがみはりになってる」

なにをいっているのかわからない。

なにをきかれたのかもわからない。

おれはだれだ?

「そう、ありがとー。お礼に、良い事してあげるわね」

おんながちかづく。

おんなのといき。

そっと、やさしく、そのこえはきこえた。

「『困惑』」


あれ。

瞬きをした瞬間、女は消えていた。

いや……女って何だ? 俺はただ、ここで見張りをして、

「――え?」

立ち上がろうとするが、脚が動かない。

ふと見れば、下半身は無くなっていた。

「……は?」

解っている。これは俺のデバイスの最大出力だ。

俺は、自分で自分の下半身を吹き飛ばしたのだ。

知っている。

でも、何故?

何があった?

空を見上げれば。

遠い月は、オリオン通りの屋根のせいで見えなかった。



目が覚めてから五日。

「ふん!」

真栄田は拳で病室の壁を殴った。

みし、と軽く純白の壁に罅が入る。

うん、魔力は十分だ。体力も問題ない――恐らく、若干血が足りないだろうが。

「次は負けねぇぞ……あの真っ黒野郎!」

奴の奥の手、最後に喰らった攻撃の正体も、何となく理解している。

無論、防御なんて考えては居ない。『アレを出されたら負ける』のは確定だ。

ならば。奴が遊んでいる間、数分でもいい。油断している間に、必殺の一撃をぶち込む。

それだけが、勝機だ。

「奴は俺が倒す……!」

命を引き替えにしても。



光体が息を吐いた。

『奴も無駄な事を考えたものだ』

燐、と光の粒が零れる。

『そんな考えの時点で、俺には負けているよ』



阿部が天井を見上げる。その顔面は蒼白。

「う、そ……そんな!」

石崎が、舌打ちをする。彼女にも解る。これは――襲撃だ。

それも、通常の襲撃ではない。

奴らは、この第五本部。鉄壁の守りである18の対魔力装甲板を、

「貫くつもり? そんな馬鹿げた――」

五番目のアインスが、少し眉を顰め、



光が、一瞬で18の装甲板を『ぶち抜いた』。



剣の輝きが消える。聖光の黄金から、ただの鉛色に。

騎士は小さく息を吐くと、鞘に剣を収めた。

「本部への道は開いた。……すまんな。魔力を少々使いすぎたようだ」

大穴の縁に、白銀の騎士は腰掛ける。その言葉に、

「充分です。ありがとうございました」

『後は我々にお任せを』

黒き影と、一匹のイナゴが答える。

影は顔を隠していたネックウォーマーをずらすと、

異常に伸びた八重歯を、輸血パックに突き立てた。

じゅるじゅると吸い込まれていく血液。

空になったそれを、影は騎士が開けた大穴に放り込んだ。

「では」

『行って参ります』

ひょい、と。

黒コートの魔物は、穴に飛び降りた。



瞬時に、第五本部は虫の大群に襲われた。

一匹の魔力は0に等しい。軽い魔力攻撃どころか、手で軽く触れただけで死ぬ。

が、あまりにも数が多い。

「くっ……!」

氷室は眼鏡をおさえながら、2機目のパソコンを操作する。

全隔壁封鎖、最終地下室の隔離および魔力封印。

だが――それを物ともせずに、イナゴの群れは壁をすり抜け、自由自在に本部を飛び回る。

時間がない。無理矢理デバイスを発動させ、病室から飛び出し、そして、

「おや、これは予想外」

サーモンピンクの道化師に出会った。



血を吸い終え、輸血パックを床に捨てた。

「ふうん……この程度でしたか」

紅い瞳が倒れた人間を映す。

ツチミカド、ピクシー、セイレーン。

三人の女性は、ぴくりとも動かない。いや、動けないのか。

踵を返す影。その視線の前に。

「悪いな、付き合わせて」

「ああ、後で飯でも奢ってくれ」

二人の男――相馬と真栄田が立ちふさがる。

きゅう、と紅い瞳が焦点を合わせる。

解る。『こいつらは、結界破壊に特化した』デバイス使い!

「リベンジだ。……殺す」

真栄田が拳を握る。それを見て、ようやく黒き影は、

「――仕方ありません、少々本気でいきますか」

デバイスの覚醒。漆黒の影、その背中に、光の翼が――



どん、という音と同時に、二人は倒れた。

氷室、阪友。

何か外傷を受けたわけではない。ただ、命とも言える魔力を

『丸呑み』にされただけ。

道化師はクスクスと笑い、

「流石です、私を30回も殺すなんて。素晴らしき魔力でしたよ」

同時に、道化師の体は四散する。

人の体を構成していた『部品』は、全て小さなイナゴになり、

『さて、コピーはどこでしょうかね』

消え去った。



真栄田と相馬の拳が、影を襲う。

真栄田は正面から顔を、相馬は背後から後頭部を。

結界を簡単に破壊し、二人の拳は影に命中……しない。

背後にも目があるのか。同時に放たれた攻撃を、広がった光の翼が受け止める。

「ちぃ!」

舌打ちし、真栄田は大きく後ろに跳ぶ。瞬間、翼は針のように鋭く変化した。

相馬の頬を翼がかすめた。軽く切れた頬から血が流れる。

確実に結界は抜ける。が、この翼が問題だった。

結界以上の防御力。自由な変化。先程のように武器にもなる。

ならば遠距離、というわけにもいかない。

真栄田と相馬のデバイスでは遠距離では結界を破壊できないし、逆に広域魔法が飛んでくるだろう。

もしあの宝具が発動されれば、二人とも防御は不可能。

故に、急がなければいけないのだが――

真栄田が拳を振るう。翼が止める。今度は刃と化した翼を、後退して躱す。

この攻防も何度目か。影はただ動かず、暇そうに紅い瞳を真栄田に向けていた。

「……ふぅ」

飽いている。実際、影にしてみれば、期待はずれなのだろう。

デバイスを発動し、自動制御に任せているだけだ。

翼を自分で操る気になれば、二人同時に既に13回は殺せている。

「……真栄田、もう少し下がれ」

影の背後に立っている相馬が、翼を睨みながら言う。

「――どういう事だ?」

「決まってるだろ。この厄介な翼を、ぶった切るんだよ!」

おや、と影の瞳が期待に輝く。

どうぞ斬って下さい、というかのように、相馬に背中を向けたまま。

「巻き込まれるなよ、真栄田。……いくぜ」

相馬のデバイス、『スサノオ』は近距離用のデバイス。

全身の強化、結界破り。その拳は大岩も一撃で砕く。

だが、切り札はそんなものではない。

伝承の通り。スサノオの武器と言えば、かの有名な――

「宝具、『七支刀』」

瞬時に相馬の手元に出現した、祭具の刃。それを両手で持つと、

翼に向けて、思い切り振り下ろす!

結界など紙も同然。翼に向かった刃は、そのまま影を斬り殺さんと唸りを上げる。

巻き起こる烈風。真栄田は両腕で顔を覆い、しっかりと脚を地面につけて体を支える。

そうでなければ、今にも飛ばされてしまいそうだ。

圧倒的な破壊力。これで、貫けぬ守りなど存在しない!

ザン、と、鋭い刃が肉を切り裂く音がした。

真栄田は確信する。やったのだ。黒コートを貫通し、背中の肉を裂いたのだ!

烈風が収まる。真栄田はゆっくりとその腕を下ろし、その目で

「――なぁんだ。この程度ですか。期待して損しました」

光の翼が、相馬の胸を貫いているのを見た。

七支刀は、翼を中程まで切り裂いてはいた――が、完全に止められている。

化け物だ。あの威力、近距離専用であるが、Sを軽く超える魔力の刃を止める?

『しかも、奴は宝具を使っていないのだ』。

「ごふっ……」

翼が引き抜かれる。鮮血を吐き、相馬はどう、と倒れた。

影はそれを一瞥もせず、

「でもまあ、多少は面白かったですよ。折角宝具も見せて頂いたわけですし、ここは」

じっと真栄田を見ると、

「私も宝具をお見せしないと――フェアじゃありませんよね?」

ゆっくりと、その右手を挙げた。



五番目のアインスは、椅子にゆっくりと腰掛けていた。

その瞳は濁り、顔はただ天井を見上げている。

白かったであろうスーツの色は、今は赤。

胸に群がるイナゴの群れ。その一匹が、肉に埋もれているガラスの破片のようなものを噛み砕いた。

パキン、とそれは簡単に砕け。溶けるように消えていく。



『あと、五枚』

光体が呟いた。



第二本部。県庁の地下で、

「ふう……」

アリスは溜息を吐いた。

22歳、『アマテラス』のデバイス使い。

回復と防御専門の、『絶対防壁』と呼ばれている彼女。

それでも。

「う…あ…」

胸を押さえて苦しんでいる真栄田を、彼女は直視できなかった。

傷は完全に回復させた。しかし、体の中身……心臓を含む内臓器官全て。細胞の一つ一つが容赦なく破壊されている。

真栄田には死の可能性がある。それ程、体内のダメージは深かった。

恐らく、何者かの宝具を受けたのだろう。何となく、だが、彼女にはその正体がわかっていた。

それは炎であり、氷であり、雷であり、風であり、光であり、闇であり――

「恐らくは万能。体内にだけ出現する、超小規模の核融合であろうな」

人間には七つの大罪があるという。まるでその具現ではないか。

故に、防御など不可能。絶対と呼ばれる彼女にも、その宝具から皆を守る自信はなかった。

「恐らくは二度目、か。自覚はなかったようだが……一度目で体内の臓器はおかしくなっていたであろうな」

それが二度目だ。――運が良ければ、歩ける程度には回復するかも知れない。

だが。

「ここまでだな、真栄田。貴様はもう……」

戦えない。アインスに言って、デバイスを解除してもらおう。

せめて今は、彼が生き残ることを願う。

「……馬鹿者が」

誰に向けて言ったのか。アリスの言葉は、誰にも聞かれず宙に消えた。



三杯目の牛丼を食べ終えると、漸く空腹は収まった。

胸の傷がしみる。食べ過ぎか。だが、こうでもしなければ魔力は回復しない。

万札で会計を済ませると、相馬は牛丼チェーン店を後にした。

あの時、あの瞬間。

胸を貫かれ、倒れた相馬の目の前で。

影は言った。

『『銀幕の終演』(グランドフィナーレ)』と。

眼鏡が外れているせいか、と一瞬思った。

広域魔術と言っても、術者の背後にまではダメージは発生しない。

だからこそ、相馬の目の前で。

真栄田は蹂躙されていた。

異常な光景。焼かれながらも凍り付き、痺れながら烈風に遊ばれる。

光に刺されながら闇に飲まれ、そして――表現できない何かに、真栄田の体は包まれていた。

「俺なら……即死だったな」

未だ生死の境を真栄田が彷徨っていられるのは、デバイスの魔力抵抗のおかげだ。

スサノオにはそこまでの魔力防御はない。

良かった、というべきか。ふがいない、と自分を責めるべきか。

ただ、一瞬見えたあの影の瞳。紅く、蒼く、そして――寂しそうな。

「あいつ、どこかで知ってるような……」

まさか。あんな異常なデバイス使い、知り合いにいるはずがない。

ただ、少しだけ。

何となく、まだ世界の裏を知らなかった、高校時代のことを。

少し、思い出した。



満月の夜は空腹になる。

そろそろ補充しなければ、そう思いながら、影は三つ目の輸血パックに牙を立てた。

血を吸う。生臭さが口に広がり、とても心地よい。

別に――

「こんな生き物に、なりたかったわけじゃないけど」

解っている。

『何故あの時、宝具にスサノオを巻き込まなかったのか』。

甘い。敵は須く殲滅すべきだ。あの物理しか能力のないデバイス相手なら、即死させることが出来ただろうに。

それでも、影は彼を生かした。

「……なぜ、ですか」

『何故、記憶まで戻したのですか?』

そう呟く代わりに、影は四つ目のパックに牙を立てた。

私は四天王最後の一人にして、最強のデバイス使い。

過去など要らない。もしも次があるなら、その時は

「血祭りだ」

ネックウォーマーで鼻まで覆う。

ただ、その瞳は、

揺れる深紅の月を映していた。



痛みで目を覚ました。

全身、いや、体内に蛆がわき、容赦なく貪られているような感覚。

それを無視して、真栄田は体を起こし、

「死にたいの?」

阿部に、無理矢理体を横にされた。

その瞬間、自分が呼吸していなかったことに気づいた。

魔力は空だ。いや、そもそも、デバイスを装備している感覚がない。

「ツチミカド……俺は……?」

「峠は越えたわ。安心して。安静にしてれば、歩けるくらいには回復するわ。多分ね」

ぽう、と、阿部の手に小さな光がともる。それで、内臓の痛みは和らいだ。

同時に、急速に力が抜けていく。回復ではなく、麻酔のような魔術なのだろう。

「おれは……『オンギョウキ』は?」

阿部は答えない。光を消すと、無言で部屋を出ようとする。

「ま、待てよ……デバイス、返してくれ」

呼吸するだけで肺に激痛が走る。麻酔のせいか、眠気が襲ってくる。

それを氷のような視線で、阿部は見ていた。

「無駄な時間は嫌だからはっきり言うわね。貴方はもう戦えない。デバイスは解除したわ。

後は普通の病院で、リハビリに専念しなさい」


もう、あなたは必要ないの。


阿部が部屋から出て行く。

それを追おうとして、

「あ、れ?」

四肢の感覚がないことに気づいた。

今は、ただ、ひたすらに


眠い。


痛みはない。ただ、真栄田は泥のような眠気に沈んでいった。



「んー、日本の技術は素晴らしい。午後だけに許される紅茶。しかもミルク!」

第二のアインスは、そう言ってペットボトルを口にした。

偽イギリス人……と、その場にいた全員が思った。

「ところでツチミカド、彼の様子はどうです?」

その瞳は冷たい。恐らくは、デバイス使いを『モノ』としてしか考えていないのだろう。

「峠は越えました。魔力は最早精製不能のようですから、来週には一般の病院に移す予定です」

「――屑が。まあいいでしょう。あの程度の戦力なら不要だ」

無駄に金がかかるな、とぼやくアインス。阿部はその怒りを、奥歯を噛み締めることで我慢した。

この場にいる全員、真栄田を除く全員が、既に傷も魔力も完治している。

何の力も持たないアインスを、殺そうかと一瞬でも考えた者は居るだろう。

だが、それは意味がない。

どんなに不愉快でも、今は、この大馬鹿者を守るしかない。

既にこの場所が敵にばれているのは確認している。守護として飛ばしていた使い魔は、石化して砕かれていた。

今日にも襲って来るであろう、あの四人。

その事実を前にして、アインスは、

「ま、誰が死んでも構いません。ただ私のことは絶対に守るように。以上、解散」

そう言うと、殆ど口をつけていないペットボトルをゴミ箱に突っ込み、最深部への階段を下りていった。

誰も、そんな言葉聞いては居なかった。



降り注ぐ、細かい光の粒子。

小さく、小さく。

恐らく傷を癒している。が、その強引さ。

駄目になった細胞を焼き、他の細胞を分裂させているような。

激痛を伴う治癒だ。

『別に他のメンツは構わんが。お前が生きていないと、俺の楽しみが減るんだよ』

痛い。苦しい。呼吸が出来ない。駄目だ、回復以前に俺が死ぬ。助け――


真栄田は目を覚ました。

「……ん?」

体に痛みはない。魔力も血も十分だ。

むしろ今までより体が軽い。これならば、

「俺は、戦える!」

同時に、響き渡るエマージェンシー音。

赤く光が点滅する廊下を走り、真栄田は倉庫を目指す。

デバイスを、『オンギョウキ』を取り戻さなければ……!



影の蒼い瞳が、二人の敵を映す。

氷室、阪友。

しかし、その瞳は暗く。

「…………」

「お前が真栄田を潰した真っ黒野郎か。はん、何だよ。そのDにも届かない魔力」

阪友にその槍を向けられても。

「…………」

ただ暗く。

――いや、まるで許しを請うように。

ごめんなさいと。

親に叱られ、泣きながら震える幼児のように。

その瞳は蒼く揺れていた。

「待つんだ阪友。何かおかしい。もしかしたら、これは幻覚かもしれない」

氷室は目を閉じ、油断なく気配を探る。

しかし、あの幻覚使いの女の気配は無い。

目の前にはただ、小さく息を吹けばそれだけで消えてしまいそうな、蝋燭の炎のような微弱な魔力。

紛れもなく、あの影のものだ。

「おかしい――まさか、君は死にに?」

ひく、と影が震える。

死ぬ。何の防御もなく。あの槍で、一撃で。

それでも、いいかもしれ――

「………ッ!」

思い切り、影はその八重歯で、下唇を噛んだ。

穴が開く。二人からは装備に隠れて見えないが、影の唇からはだらだらと血が流れている。

『そんな私は。とっくに、もう――』

ゆらり、と視線を『敵』に向ける。

血の味。その瞳は紅く染まり。

過去も記憶も存在も、何もかも忘れて。

コロすための意識になった。

「可笑しい――『結界破り』も持たない羽虫二匹が、この私を殺せるとでも?」

容赦はしない。デバイスを発動。Sランクオーバーの魔力が、烈風となって二人を襲った。

「っく!?」

「君は……!」

光の翼が、優雅に伸びる。

「お望みの通り、潰してあげます」

『ロキ』のデバイスが即座に反応し、その吹雪を翼に向ける――!



ロッカーを開けていく。容赦はしない。

封印など構わず。魔力を筋力に変えて、デバイスの入った『結界箱』をその扉ごと引きちぎる。

「違う、違う、これも違う――!」

量産型デバイスではあの影に勝てない。『結界抜き』がなければ、あの影に傷一つつけられない。

だからこそ、『オンギョウキ』でなければ。

そうでなければ、あの防御は――

「……え?」

最奥のロッカーをぶち抜いた瞬間、

ぽちゃん、と間抜けな水音が響き。

約一秒迷った後で、

「いいぜ、上等だ」

真栄田はそのデバイスを手にした。



「宝具『天照の加護』」

騎士の剣を、アリスの宝具、その小さな扇子は軽くいなす。

同時に。

「『ピクシー』、重力倍加」

「『ツチミカド』、魔力吸引」

石崎と阿部のデバイスが、一時的に騎士の動きを封じた。

そこに止め。

「ブラックライトオンステージ♪」

仁原の呪う闇の槍が、騎士の胴体に穴を開けた。

確実に即死。だが、まるでビデオの逆再生のように。

肉が、装甲が。回復する。

「残念だな。貴様らでは、この守りは貫けん。せいぜい足止めだ」

騎士の言葉に、しかし石崎は鼻を鳴らした。

「そうね。貴方を倒すには、その馬鹿みたいな……いっそ、無限と言える回数『蘇生呪刻』の詰まった剣の鞘を壊さなきゃいけないんだもの」

「ん、な……!」

兜の奥で、騎士が目を見開く。

「そうでしょう?『騎士王アーサー』のデバイス使いさん」

つまらなそうに石崎が言う。

伝説の聖剣、『騎士王の聖剣エクスカリバー』。

しかしその本質は、その刃ではなく鞘。

その所持者は不老不死を得るという。

「でも、それで充分なんです」

阿部が口を開く。

「そう、『足止め』さえ出来ればいい。こんな狭い地下じゃ、光の刃は放てない。故に貴方は此処で止まる」

「貴様ら、初めからそれを――!」

マイクを握り。目を閉じて、仁原が答えた。

「そう、私達はアインスが逃げるまでの足止めです。貴方はもう、仲間の援護にも、目標の殺害にも向かえない!」

周囲を破壊しない、しかし最大の魔力を込めて、騎士は再び剣を振るう。

が、そんなものは。宝具でないなら。

「『天照の加護』」

アリスのデバイスの敵ではなかった。



「ふん!」

目標も何もない、単なる裏拳。

空を切るはずのそれは、その込められた魔力によって。

風圧だけで、三十を超えるイナゴを潰した。

相馬のデバイスはまるで台風だ。

イナゴの宝具を使えば、一瞬で敵の魔力を『呑む』。

しかし、そんなタイムラグが、発動までの隙が、全く無い。

「……まるで狂戦士ですね、頭の悪い!」

いくら潰しても、ピエロからイナゴは無限にわき出す。

しかし、駄目だ。

『呑む』には、一匹でもイナゴが接近し、そこに魔力を込める時間が必要だ。

だが、魔力の渦、そこに無防備に飛び込む一匹の虫に、一秒でも生き残る力はない。

「はん、大したことねえのな。所詮は……虫か!」

相馬の上段蹴り。その破壊力は床まで舐め、風圧はピエロの近くのイナゴまですり潰す。

騎士の状態も解っている。自分も、騎士も、敵の予定通りに足止めされている。

援護は出来ない。

ならば、頼みの綱は影だが……

「……なんだと!?」

我ら四天王に届こうかという、馬鹿げた魔力値。

突然出現したそれは、恐ろしい速度で影に向かっている!



吹雪など魔力耐性の前では微風も同じ。

前だろうが背後だろうが、呪詛の槍は結界を破れない。

ならば『ロキ』は無力。

『セイテンタイセイ』の技は確かに威力は高いが。

光の翼で防げば無意味だ。

そもそも、『七支刀』さえ止める防御なのだ。

それ以上の高威力、しかも『結界貫通』を持たなければ、かすり傷一つ影は負わない。

「ちっくしょ、馬鹿みてーな防御しやがって!」

「なるほど、これは確かに……強敵だね」

強がりだ。氷室も阪友も、既に状況が『詰み』なのは理解している。

しかし、影を動かすわけにはいかない。

影に援護に回られれば、折角の拮抗状態、全員が全力で行っている時間稼ぎが、全て無駄になる――!

「どうしました? 私を殺すんでしたよね。ほら、そんな所で立ち止まってたら駄目ですよ」

ふう、と吐息を一つ。放たれた魔力は、爆炎となって二人の足下から立ち上った。

「うお!」

「くうっ!」

全力でガードしながら後ろに飛ぶ。それでも、熱は貫通して二人の皮膚を焼いた。

「……飽きました。ここまでにしましょう」

影が右手を挙げる。集中する魔力。

「大丈夫、宝具は使いません。ただ、軽く下半身を消し飛ばす程度に、」


一秒目は何か違和感を感じ。

二秒目に冷や汗が浮かぶ。まだそんな機能があったのかと思い、

三秒目は夢中で光の翼で防御に転じた。

流星かと。影はむちゃくちゃな勘違いをした。

あとコンマ5秒遅ければ、影の首は床を転がっていただろう。

宝具すら防いだその翼。それは、走ってきた真栄田の跳び蹴り。

ただの一撃で、砕け散っていた。

「う、っぐう!」

コートに突き刺さった蹴りは、防御など簡単に貫通し、

肋骨を折り、肺を潰した。

攻撃の主、真栄田が着地する。同時に、影は傷を最大魔力で回復した。

「……あなたは!」

「よう、お返しに来たぜ」

二度の宝具の使用で全身を潰したはずの敵。その襲来を、おかしいと思う余裕は影にはなかった。

真栄田から感じる魔力値、現在は……いいところ、B程度。

そんな攻撃で、『このデバイス』の防御は抜けない。

無論『結界貫通』はあるのだろうが、それにしても――

「へへ、悪いが武装を新調してよ。いくぜ『シュテンドウジ』」

くい、と持っている瓢箪から、真栄田は液体を嚥下した。

瞬間。爆発的に魔力値が上昇する!

影は理解した。『あのデバイスに宝具はない』、いや、『あの瓢箪こそ宝具』なのだと。

瓢箪の中に、恐らくは数秒に一滴程度。ゆっくりと、しかし無限に溜まっていく『魔力塊』。

それを呑むことで、瞬間的に出力をブーストしているのだ。

影が呑んでいる血液と役割は同じ。

無論、影のコートの中にも輸血パックは数個入っている。それを呑めば条件は同じ。

だが、それには。

ネックウォーマーを下ろす必要がある。つまり、氷室と阪友に顔を晒す、ということだ。

絶対にそれは出来ない。ならば、魔力の回復は望めない。

ならば、『最早宝具は使えない』のだ――!

影は目の前の三人を睨む。

そう、影も他の四天王と同じ。いくら魔力があっても、目の前の敵を倒せない。

四天王。今まで簡単にアインスを殺してきたメンバー。その三人は、ここにきて完全に足止めを喰らっていた。



「……予想外だわぁ」

女が呟く。月の光をスポットライトのように受けている彼女だが、その姿は『誰の視線にも入らない』。

県庁を幻で包み、内部の人間を昏倒させる。外部からは異常がないように見せかける。

それが彼女の役目だった。

実際彼女はその役目を全うしている。現在、戦闘できているのは地下のデバイス持ちだけだ。

故に、残りは三人で。地下の殲滅は、その戦力で充分だったはずなのだが。

「まさかぁ、全員完全に足止めされちゃうなんてぇ」

出口の偽装も完璧だ。が、所詮は幻。

アインスに逃げられるのも時間の問題か。

しかし、彼女も動けない。地下以外の工作は彼女の勤め。

その意味では、彼女も足止めをされていると言えなくもない。

「……仕方ないわねぇ」

女が月を見上げる。携帯電話を持っているようなノリで、彼女は月に向かって問いかけた。

「すみませぇん、足止めされちゃったんですが……どうしますぅ?」



『――何、簡単な話だ』

くつくつ、と光体は笑い。

『そんなもの捨ててしまえ、ガブリエル』



「――え、」

影の動きが、まるで縛られたように止まる。

その隙を見逃す真栄田ではない。光の翼を貫き、顎を思い切り上に向かって、


影が消えた。




「あれ?」




倒れている。

氷室は内臓が一部出ている。

阪友は何とか手足がついている。

真栄田は…骨がほぼ折れているが、大丈夫だ。


「……あれ? あれ?」


影のフードはめくりあがり。

ネックウォーマーは下がり、八重歯が血に濡れている。


「わたし、なにを?」


「鷹野……君?」

意識が曖昧なのだろう。ぽつりと小さく、氷室が呟いた。

「――!」

影は慌てて顔を隠すと、

「次は殺す!」

逃げるように通路を走っていった。



「うっふふ、ふふ、あははははは! さっすがあのお方、容赦ないー」

女が滑稽そうに、腹を抱えて笑う。

「ふふ、でも良いのかしら。だって、猟犬から首輪を外しちゃったらぁ」

見下ろせば、地下から逃げだそうとしている一台の車。

今更だ。遅い。遅すぎる。

「折角嬲って虐めて遊んでた獲物――全部喰い殺しちゃうかも」



「ち、使えん駒どもが!」

アインスは車に乗り込み、即座にエンジンをかける。

「だが私は死なない…死んでたまるか! 隠れる場所なら、他にもある!」

アクセルを踏む。勝った――!


無言で。

後部座席に座っていた影は、翼で運転席諸共、アインスを『引き千切った』。



『アーサー』は、基地に戻ってからの『ガブリエル』の様子が気になって仕方なかった。

「……入るぞ」

扉を開ける。影は紅いままの瞳を宙に向け。

デバイスを発動したまま、手首を噛んでいた。

血を吸っては居ない。単なる自虐行為。

「……やめろ」

軽くアーサーが手を引いただけで、ガブリエルは牙を納めた。

「……あの方が……何かしたのか」

「……何も。ただ、自分に正直になっただけです」

何も考えていない。ただ、決められた台詞を読んでいるかのような口調。

「隠す必要なんて無かった。手加減も必要なかった。迷う必要も、記憶も、心も、初めから必要なかったんです」

とろんと、死んだ瞳をアーサーに向けて。

「だってそうでしょう? 私達四天王は、『初めから誰でもない』んですもん」



昔の話だ。

氷室、阪友、相馬は同じ高校の同級生、同じクラスだった。

当時から氷室は大企業の息子で、金銭感覚は狂い気味で。

阪友は当たり前のように煙草を吸い。

相馬は友人を良く自宅に招き、修行中のラーメンを食べさせていた。

そこに一人。

鷹野、という、友人が居た。

何の変哲もない。三人と比べれば遙かに地味な。

同級生にも敬語を使い、自分を『私』と呼び、よく笑う奴だった。

無論デバイスなんか持っていない。

地味な、地味な一般生徒だった。

普通に友人として毎日其処にいる。それだけ。

それが。ある日を境に嫌な意味で特別になった。

たまたま深夜に、買い物に出たのだそうだ。

そのまま、彼は自宅には戻らなかった。

犯人は薬物中毒で、頭のコワレた中年男。

享年16歳。

死に顔は確認できなかった。

生きたまま皮を剥がされ。分解され。焼かれ。

死体は。この世に残った部分の方が少なかったらしい。

昔の、話だ。




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