第一話
飲み会がおわり、次の日。授業に休みはない。そういえば、プリント直したいところがあったからそこをまず、手直しして・・・。
さて、仕事、仕事と机に向かう私の肩を誰かが叩く。
「なぁ、莉子。莉子って国語担当しているよな。古文ってどうやって教えるんだ?」
「文法をある程度固めて、読解に入るんです」
「いいよ、タメ口で」
じゃ、タメ口で話してやろうじゃないか。というか、あなたは数学の先生じゃあないのかい。
「ほら、まこと先生の生徒が来たよ」
「あ、いけない」
この男は何しに来たんだ。
その頃の私は150センチの身長に60キロ近い体重。お世辞にもかわいいとは言われたことはない。
生徒からデブと言われるけど、そういう生徒は蹴散らしていった。
全然、お洒落に興味を持っていなかった。
くせっ毛で天然パーマな髪の毛に縮毛矯正をかけることが唯一のお洒落だった。
縮毛矯正をかけると一日、二日は髪をまとめることができない。いつもは一つで結ぶ髪を下ろして塾に行かなければならなかった。
「かわいいじゃん」
あの人はそう言った。
深く考えないあの人だから、きっとそのときのことは覚えてないだろうけど。
単純だけれども、男の人にそんなこと言われたの初めてだったから(むしろ、男性とこんなに親しく話したのも小学生以来だ)。
そのとき、私は「女」になった。
痩せる決意をしたんだ。