夏の雨 三首
夏の雨をめぐる、三つの短歌です。
夕立のあと、台所の迷い、入道雲と特売日の攻防。
暮らしの中の小さな風景を切り取りました。
テーマ 夏、雨
<1>
雷も
驟雨も去んだ
お社で
ビビるは甥か
飛び立つ雉か
【解説】
雷を伴う、雹混じりの夕立が止んだ。
様子見がてら、幼い甥を連れて、川沿いの神社へ散歩に行った。
神社の敷地は広く、参道を外れれば野原も同然、草刈などはされていない。
これも避難していたのだろう、10mほど先の叢から数羽の雉が土手の方へ飛び立っていった。
甥は雉を初めて見たらしく、ビビって及び腰になった姿がとても可笑しかった。
そんな想い出。
<2>
雨上がり
晒して迷う
茹で饂飩
冷やしにするや
カレーにするや
【解説】
暑かった日中、夕食は冷やしうどんと決めていた。
しかし、夕方のにわか雨で昼間の熱気はどこへやら。
茹でたうどんを水で洗いながら考える。
冷やしうどんにしたら体を冷やしすぎるかも。
かといって、カレーうどんにしたら汗にまみれるかも。
結局、半分ずつにして両方とも食べた、という夕べのお話。
<3>
積んだ雲
和牛を求め
早む足
チラシの中で
君が手を振る。
【解説】
近所のスーパー、今日は黒毛和牛の特売日だ。
だが、だんだんと大きくなっていく入道雲。
自転車での買い物だから、帰り道の雨には不安がある。
そんな不安を抱えながらも、スーパーのチラシの中で手を振る“黒毛和牛4割引”への期待が、自然と足を速めさせる。
結局は途中で降られたのだけれど、“チラシの君”には“振られ”なかったよ。
読んでくださり、ありがとうございました。
三首とも、夏の空と雨の気配をテーマにしています。
最後の一首では、空には“降られ”、チラシの“君”には“振られ”ずに済みました。
そんな夕暮れの一場面です。




