「DMに会いたいと言うな」
DMに会いたいと言われました。
罠は床すれすれでした。
床すれすれの下を通られました。
今日も感謝されてしまいました。
私に会いたいと言われました。
今日の罠は、細身の侵入者にも反応する低位感知糸です。床すれすれに感知糸を張り、しゃがんでもすり抜けられない高さへ調整しました。
今日のモンスター配置はスライムB。第一通路の端です。
今日の罠には自信があります。
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ダンジョン配信中(登録者:138)
剣士「ミリちゃん来た」
杖つかい「低い糸は嫌だな」
女神様「マスターは出ませんよ〜」
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―――
ミリさんは、今日も小さな採取袋を持って来ました。
「こんにちは。今日は、ここのDMさんに会えたりしますか?」
「会えません」
「即答ですね」
「はい」
低位感知糸は、ミリさんの足首近くに張ってあります。これなら、以前のような細身体型によるすり抜けは起きません。
ミリさんは、糸の手前でぴたりと止まりました。
「おお......低いですね」
「はい」
「じゃあ、植物採取の姿勢で」
ミリさんは、ほぼ床に寝るような角度で、するりと感知糸の下を抜けました。
「......そう来ますか」
「狭いところ、まだ得意です」
「過去形になっていませんでしたか」
「継続中です」
罠は反応しませんでした。
スライムBが、ミリさんのそばへ寄ってきました。以前より、少し大きくなっています。
ミリさんはしゃがんだまま、スライムBをそっと見ました。
「この子、一番長くここにいるんですよね」
「在籍四十四日目です」
「やっぱり。ここのDMさんのこと、知ってるんじゃないかな」
スライムBがぷるぷるしました。
私は、少しだけ黙りました。
「......スライムBは答えません」
「でも、懐いてますよね」
「ただのモンスターです」
「返事がずれてます」
ミリさんは、糸を越えたあとも先へ進まず、スライムBの横に座りました。
「いつか会えたら、お礼を言いたいです」
「感謝はいただかなくて大丈夫です」
「DMさんにです」
「なおさら大丈夫です」
「じゃあ、スライムBに言っておきます。いつもありがとうございます」
スライムBがぷるぷるしました。
「代理感謝も困ります」
ミリさんは、満足そうに帰りました。
英雄、撃退成功です。
......たぶん。
―――
私はコートに書きました。
【低位感知糸:下を抜けられた】
【ミリ:床に近すぎる】
【DMに会いたい:要望あり】
【スライムB:代理感謝を受領疑惑】
【代理は禁止】
シア様は、コメント欄を見ながら言いました。
「会いたいそうですよ〜」
「会いません」
「そうですか〜」
「はい」
「私だけが知っていれば十分ですしね〜」
「配信中です」
「ふふっ」
シア様のニヤニヤは薄かった。私は低位感知糸の高さを、さらに下げられるか計算していたので、気づきませんでした。
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ダンジョン配信中(登録者:141)
杖つかい「DMに会いたいって言った」
剣士「スライムBが代理受付してる」
罠職人見習い「低い糸の下を抜けるのすごい」
女神様「マスターは出ませんよ〜」
査定員「匿名運用継続と記録します」
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感謝するなつってんだろ。会いたいという要望は受け付けていません。スライムBは答えません。だあああああああ!! 代理で感謝を受け取るなあああ!! スライム窓口を開設するんじゃねええええ!!
【今回の登場キャラクター紹介】
■ミリ
初期常連英雄。ここのDMに会いたいと言い出したが、本人は匿名継続。
■スライムB
ミリから代理感謝を受け取った疑惑がある。
【今回のズレパターン解説】
回避型。低位感知糸を、ミリがさらに低い採取姿勢ですり抜けました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :5280位 → 5160位
配信視聴者数 :135名 → 141名
本日の用途 :代理感謝受付所(非公認)
コートのメモ(今話) :「ミリ:DMに会いたい。スライムB:代理受付疑惑」
【モンスター管理状況】
スライムB:在籍44日目 稼働率0%(代理感謝を受けた疑惑)
スライムA:在籍46日目 稼働率0%(遠くで光合成)
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