「商品化するなつってんだろ――観察チケットは採算が合います」
商品化を提案されました。
計算したら採算が合いました。
採用してしまいました。
今日の罠は、副産物回収型です。
罠を発動させた時に出る魔石粉、砕けた床材、熱で固まった樹脂。その全部を回収できるよう、排水溝と収集皿を増設しました。
第二通路にはスライムA、奥にはガルル。観察用ではありません。撃退用です。
今日の罠には自信があります。
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女神様「今日は帳簿も見ています❤」
商人「帳簿配信って何?」
剣士「罠より経理が怖い」
杖つかい「女神様、帳簿まで見てるの?」
女神様「見ています」
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タルガさんは、罠にかかりませんでした。
理由は簡単です。罠の横を歩き、落ちた魔石粉を採取し、壊れた床材を指で叩き、私の設計図よりも先に収益表を開いたからです。
「ハルカさん。今日の副産物、品質A+です」
「撃退結果を先に確認していただけますか」
「撃退より収益です」
「ここはダンジョンです」
床が沈みました。予定通り、第一罠が発動します。左右の壁から圧縮風が吹き、中央に立つ侵入者を奥へ押し込む設計です。
タルガさんは、押し込まれながら袋を広げました。
魔石粉が、全部その袋に入りました。
「これは効率がいい」
「そこを褒めないでください」
「副産物ブランド、正式化しましょう」
「しません」
「それとは別に、もう一つ提案があります」
「嫌な予感がします」
タルガさんが取り出した紙には、こう書かれていました。
【モンスター観察チケット案】
「スライム光合成観察:五銅貨。スケルトン礼実演:三銅貨。チビドラゴン触れ合い:八銅貨」
「やめてください」
「月間三銀貨の追加収益です」
「......三銀貨」
私の手は、勝手に計算しました。
維持費。餌代。清掃費。罠修理費。観察導線。安全柵。受付札。説明書。返金規定。
計算結果は、黒字でした。
くそ、黒字でした。
「モンスターたちに確認しましたか」
タルガさんが、初めて固まりました。
スライムAがぷるぷるしました。了解に見えます。
ガルルが礼をしました。同意に見えます。
「......採用します」
「ありがとうございます」
「感謝はいただかなくて大丈夫です」
「では契約書を」
「用意が早い」
私はコートの内側に書き込みました。
【モンスター観察チケット:採用】
【月間試算:三銀貨】
【モンスター了承:推定】
【推定で契約するな】
【した】
―――
シア様は、契約書の端を眺めていました。
「ハルカの名前、ブランドに入れますか〜?」
「入れません」
「では、女神監修は~?」
「もっと入れません」
シア様は「ふふっ」と笑いました。けれど、タルガさんがモンスターの了承欄に『スライムA:ぷるぷる』と書いた時だけ、ニヤニヤが少し薄かった。私は契約書の誤字を探していて、気づかなかった。
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ダンジョン配信中(登録者:54)
商人「観察チケット、普通に買いたい」
剣士「スケルトン礼実演は見たい」
杖つかい「チビドラゴン八銅貨、高くない?」
女神様「彼女の時間はもっと高いですよ」
査定員「価格表に載せないでください」
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改善の余地があります。
商品化するなつってんだろ。廃材に私の名前はいりません。モンスターは採用しました。採用しちゃったじゃねえかくそがあああああああああああああ!!
【今回の登場キャラクター紹介】
■ハルカ
収益計算に弱い廃ダンジョンマスター。黒字を見ると手が勝手に動く。
■タルガ
素材業者。失敗も副産物もモンスターも、全部商品にしようとする男。
■スライムA/ガルル
了承したように見えたモンスターたち。たぶん了承していない。たぶん。
【今回のズレパターン解説】
誤解型。撃退用モンスターが観察チケット化しました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :39720位 → 39280位
配信視聴者数 :51名 → 54名
本日の用途 :商品開発会議場
コートのメモ(今話) :「モンスター観察チケット:採用。推定で契約するな。した」
【モンスター管理状況】
スライムA:在籍22日目 稼働率0% 今日の成果:了承風ぷるぷる
ガルル:在籍20日目 稼働率0% 今日の成果:契約同意風の礼
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