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「解説するな」

 記録係と解説係が同時に来ました。

 罠より先に説明が走りました。

 ガルルの礼まで記録されました。


 今日も感謝されてしまいました。


 今日の罠は、静かな連携型(れんけいがた)です。

 派手な見た目はありません。

 踏む、ずれる、閉じ込める。

 それだけです。


 説明する余地をなくしました。

 つまり、今日は解説されないはずです。


 今日の罠には自信があります。


 ═══════════════════════════

 ダンジョン配信中(登録者:26)

 女神様「説明されそうですね❤」

 名無しの剣士「もう予告になってる」

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 エルマさんが来ました。

 その横に、ノノカさんがいました。


「査定同行です」

「師匠の罠を学びに来ました!!」

「同行理由が違います」


 第一通路で、床がわずかに沈みました。

 壁が閉じ、通路が狭まる。

 本来なら、ここで英雄は進退を失う。――はずでした。


 エルマさんは手帳を開きました。


「床圧検知。通路幅減少。閉鎖速度、前回比一・一二倍」

「......正確ですね」


 ノノカさんは、同じ現象を見て叫びました。


「この閉鎖速度! 師匠の美学(びがく)です!!」

「美学ではありません」

「追い込むのではなく、考えさせる罠!!」

「閉じ込める罠です」


 二人の記録速度が、罠の作動速度を超えています。

 やめてください。

 罠が追いついていません。


 第二罠が発動しました。

 天井から(あみ)が落ちる。


 エルマさんは半歩下がって避けました。

 ノノカさんは、その網を両手で受け止めました。


「教材だ!!」

「教材ではありません。罠です。」


 そのとき、スライムAが通路端からぷるぷると近づいてきました。


 エルマさんが淡々と読み上げます。


「スライムA、英雄の名前を三名記憶している可能性。記録しました」

「......記憶しているんですか」

「確定ではありません」

 ノノカさんが叫びます。

「師匠の訓練の成果ですね!!」

「何も訓練していません」

「え!?またまた~」

「え、ではありません」


 さらにガルルがやってきました。

 エルマさんに向かって、きれいに礼をします。


「ガルル、礼の対象六名目。記録しました」

「記録しないでください」

「前例がありません」

「前例にしないでください」


 ガルルは、もう一度礼をしました。

 ノノカさんが泣きそうな顔で拍手しています。――いやよく見ると、もう泣いていました。それはもう、ボロボロと。


「師匠、骨に礼儀を教えたんですね......!気持ちを込めればモンスターにも通じる......!」

「教えていません」

「じゃあ誰が!?」

「私が知りたいです」

「やっぱり師匠ですね!」


 シア様が笑いました。


「にぎやかですね〜」

「助けてください」

「気のせいじゃないですか〜?」

「気のせいで記録は増えません」


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 ダンジョン配信中(登録者:29)

 女神様「今日もよく記録されています❤」

 名無しの杖「記録されるダンジョン」

 名無しの剣「骨が礼儀正しいの草」

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 エルマさんは帰り際、丁寧に書類を渡しました。


「本日の記録です」

 ノノカさんも、分厚いノートを掲げました。

「本日の師匠解説です!」


 私は両方を受け取りました。

 受け取ってしまいました。


 コートには、こう書きました。


「記録:増えた」

「解説:増えた」

「ガルル礼:六名目」

「私は何を管理しているのか」

「だからてめぇら罠にかかれ」


 感謝するなつってんだろ。

 解説も記録もいらねえんだよ、てめえら罠の前で授業始めんなオラァァァァァァ!!



【今回の登場キャラクター紹介】

 ・ハルカ:罠より記録と解説に追い詰められた人。

 ・シアラ:女神様。今回もコメント欄から圧をかける。

 ・エルマ:査定員。淡々と全部記録する。

 ・ノノカ:一方的弟子。全部解説する。

 ・ガルル:礼儀正しいスケルトン。六名目に礼。


【今回のズレパターン解説】

 観光型。

 攻略ではなく、解説と記録の対象になりました。


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【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :52341位 → 50012位

 配信視聴者数      :26名 → 29名

 本日の用途       :記録会兼解説授業

 コートのメモ(今話)  :「ガルル礼:六名目。私は何を管理しているのか」

 【モンスター管理状況】

  スライムA:記憶疑惑継続

  ガルル:礼6名目(エルマさん)

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