「解説するな」
記録係と解説係が同時に来ました。
罠より先に説明が走りました。
ガルルの礼まで記録されました。
今日も感謝されてしまいました。
今日の罠は、静かな連携型です。
派手な見た目はありません。
踏む、ずれる、閉じ込める。
それだけです。
説明する余地をなくしました。
つまり、今日は解説されないはずです。
今日の罠には自信があります。
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女神様「説明されそうですね❤」
名無しの剣士「もう予告になってる」
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エルマさんが来ました。
その横に、ノノカさんがいました。
「査定同行です」
「師匠の罠を学びに来ました!!」
「同行理由が違います」
第一通路で、床がわずかに沈みました。
壁が閉じ、通路が狭まる。
本来なら、ここで英雄は進退を失う。――はずでした。
エルマさんは手帳を開きました。
「床圧検知。通路幅減少。閉鎖速度、前回比一・一二倍」
「......正確ですね」
ノノカさんは、同じ現象を見て叫びました。
「この閉鎖速度! 師匠の美学です!!」
「美学ではありません」
「追い込むのではなく、考えさせる罠!!」
「閉じ込める罠です」
二人の記録速度が、罠の作動速度を超えています。
やめてください。
罠が追いついていません。
第二罠が発動しました。
天井から網が落ちる。
エルマさんは半歩下がって避けました。
ノノカさんは、その網を両手で受け止めました。
「教材だ!!」
「教材ではありません。罠です。」
そのとき、スライムAが通路端からぷるぷると近づいてきました。
エルマさんが淡々と読み上げます。
「スライムA、英雄の名前を三名記憶している可能性。記録しました」
「......記憶しているんですか」
「確定ではありません」
ノノカさんが叫びます。
「師匠の訓練の成果ですね!!」
「何も訓練していません」
「え!?またまた~」
「え、ではありません」
さらにガルルがやってきました。
エルマさんに向かって、きれいに礼をします。
「ガルル、礼の対象六名目。記録しました」
「記録しないでください」
「前例がありません」
「前例にしないでください」
ガルルは、もう一度礼をしました。
ノノカさんが泣きそうな顔で拍手しています。――いやよく見ると、もう泣いていました。それはもう、ボロボロと。
「師匠、骨に礼儀を教えたんですね......!気持ちを込めればモンスターにも通じる......!」
「教えていません」
「じゃあ誰が!?」
「私が知りたいです」
「やっぱり師匠ですね!」
シア様が笑いました。
「にぎやかですね〜」
「助けてください」
「気のせいじゃないですか〜?」
「気のせいで記録は増えません」
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ダンジョン配信中(登録者:29)
女神様「今日もよく記録されています❤」
名無しの杖「記録されるダンジョン」
名無しの剣「骨が礼儀正しいの草」
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エルマさんは帰り際、丁寧に書類を渡しました。
「本日の記録です」
ノノカさんも、分厚いノートを掲げました。
「本日の師匠解説です!」
私は両方を受け取りました。
受け取ってしまいました。
コートには、こう書きました。
「記録:増えた」
「解説:増えた」
「ガルル礼:六名目」
「私は何を管理しているのか」
「だからてめぇら罠にかかれ」
感謝するなつってんだろ。
解説も記録もいらねえんだよ、てめえら罠の前で授業始めんなオラァァァァァァ!!
【今回の登場キャラクター紹介】
・ハルカ:罠より記録と解説に追い詰められた人。
・シアラ:女神様。今回もコメント欄から圧をかける。
・エルマ:査定員。淡々と全部記録する。
・ノノカ:一方的弟子。全部解説する。
・ガルル:礼儀正しいスケルトン。六名目に礼。
【今回のズレパターン解説】
観光型。
攻略ではなく、解説と記録の対象になりました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :52341位 → 50012位
配信視聴者数 :26名 → 29名
本日の用途 :記録会兼解説授業
コートのメモ(今話) :「ガルル礼:六名目。私は何を管理しているのか」
【モンスター管理状況】
スライムA:記憶疑惑継続
ガルル:礼6名目
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