第三話 行動と準備
愛車から離れ、彼はふたたび珈琲の香りが残るリビングに戻った。
机の上に置かれた複数のチラシの中から目的のものを見つけ、オープン日であることと店舗までの距離を確認する。
「この時間から出発しても、オープン時間までに十分到着できる頃合いだ」
彼は、すでに「行く」という結論に至っていることを自覚しながら、チラシを片手に再びガレージへと向かう。
そこで、彼の視線が愛車のガラスに止まった。
「……ホコリが乗ってる気がする」
ガレージ内で、昨日の今日なのだから、そんな馬鹿なと普通は思うところだ。
しかし彼は即座に、用意されていたガラスクリーナーと、ガラス専用の清潔なクロスを手に取った。
彼の動作に淀みはない。
それは彼にとって「最高の状態」を維持するために必要な、当然のルーティーンだった。
ガラス拭きを終え、彼は無意識に一度だけ頷く。
そして、愛車をガレージから外へと出した。
彼は、昨日完成させた「最高の仕上がり」を、日常の光の中に晒す。
施工された天然ワックスが馴染んだ白いボディは、朝の光を丸く受け止め、深い艶を放っていた。
そのままアクセルを踏み込み、愛車は通りへと滑り出す。
彼が向かうのは、かつて足繁く通ったホームセンターやカー用品店ではない。
昨今、小さなブームになりつつある、洗車に力を入れていると言われるチェーン店だ。
新しいものや、見たことのないものを直に見られるというのは、いつになっても楽しみなのである。
店舗に近づくにつれ、その巨大な外観とともに、今時珍しいアドバルーンが空に上がっているのが、
出発前に拭き上げたフロントガラス越しに見えてきた。
本当に欲しいものって、やっぱり一度は現物を見てから購入したい、
そんな気持ちになることがありますよね。
昨今はネットで何でも手軽に、すぐ買える時代になりましたが、
実物を前にしながら選ぶあのワクワク感は、やはり特別だと思います。
それから最近、アドバルーンを見かけることも少なくなりましたね。
あれが上がっているだけで
「何かやっているんだな」と一目で分かる、
とても分かりやすい広告だと思っています。
……とはいえ。
結局、作中で使っているような製品は
ネットでしか手に入らなかったりするんですけどね。
( ̄∇ ̄;)ハッハッハ




