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第二話 翌朝の確認

翌朝。

昨日の達成感の余韻が、いまだに体の奥に残っている。


彼はもう一つの趣味である珈琲を淹れるため、マキネッタを火にかけ、パンをトースターに入れた。

少しの待ち時間、自然と意識はガレージの方へ向かう。

もちろん、壁に隔てられている以上、見えるわけではない。だが、気持ちはすでにあの空間にあった。


やがて珈琲の香りとともに、マキネッタからボコボコと音がし始める。

抽出が終わったことを知らせるその音を合図に、トースターから「チン」と爽快な音が響き、トーストが焼き上がった。


昨晩までガレージを満たしていた、パッションフルーツを思わせるワックスの甘い香り。

それは今も、鼻腔の奥に鮮やかな記憶として残っている。

その記憶とともに、目の前で蒸される珈琲の苦みを味わうこの瞬間こそが、彼にとって一日の始まりにおける、最も贅沢な時間だった。


側から見れば、変態的とも言えるこのルーティーン。

だが本人はまったく気にしていないし、仮に自覚したとしても、おそらく気にも留めないだろう。


朝の一連の流れを終え、最後の珈琲を飲み干すと、彼はそのままガレージへと向かった。


扉を開け、壁のスイッチを入れる。

蛍光灯の鋭い光がガレージ全体を照らし出すと、そこには施工された天然ワックスがしっかりと馴染み、独特の艶やかさを放つ白いボディがあった。


彼は改めて、仕上がりと拭き残しがないかを確認するため、車の周囲を一回りする。

もちろん、昨日の時点で確認は完璧に行っている。

それでも、夜の熱狂の中で見落とした微細なムラや拭き残しがなかったか――一夜明け、落ち着いた視点で確かめたかった。


蛍光灯の光が車体に映り込む様子を利用し、目線を変えながら側面や天井付近へと視線を滑らせる。

慎重に、丁寧に、検査を進めていく。


手に取ったのは、昨日使用後に洗濯され、いつでも使えるよう準備されていた清潔なクロスだった。

その柔らかな繊維を、ボディへとそっと滑らせる。


もし拭き残しがあれば、クロスにわずかな引っかかりを感じるはずだ。

しかし、指先に伝わってくるのは、完璧な滑らかさだけだった。


「よし。」


口元に満足の笑みを浮かべ、彼は昨日の成果を改めて噛みしめる。

それは、時間と労力をかけて得た「成果」に対する、確かな自己承認の瞬間だった。


この艶、この手触り。

間違いなく、彼が求めていた仕上がりだ。


光を浴びた車の曲面を、角度を変えながらゆっくりと眺める。

天然ワックスの層を通して、白い塗膜の奥深くに、温かく複雑な光沢が宿っているのが見て取れた。


そんな愛車を眺めていたとき、ふとカー用品店の新店オープン日が今日だったことを思い出す。

彼はガレージを足早に後にした。

洗車翌日の、少し落ち着いた時間を書いてみました。


実際には数時間後だったり、翌週の休みだったりするのですが、

そこはストーリーの流れというやつですw


車を洗うという工程そのものも楽しいのですが、

やはり仕上がった状態を愛でる時間は、最高の瞬間だと思います。


次回は、少しだけ外へ出ます。

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