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異世界転生したら、エルフの村で「ご神体」になりました ~美少女巫女たちに毎日お世話されています~

 気づいた時、俺は森の中に倒れていた。


 見上げると、木々の隙間から差し込む光。鳥のさえずり。草の匂い。

 ここは——どこだ?


 最後の記憶は、終電に乗ろうとして駅のホームで倒れたところ。

 過労だったのかもしれない。毎日深夜まで働いて、睡眠時間は三時間。

 そりゃ倒れるわ。


 ……いや、待て。

 倒れた後、何かあった気がする。


 暗闇の中で、誰かの声が聞こえた。

 中性的な声だった。穏やかで、どこか懐かしい響き。


『——お疲れ様。少し、休んでいきなさい』


 そう言われた気がする。

 そして、月のように優しい光に包まれて——


 次に目を開けたら、ここにいた。


 でも、なんで森?

 病院じゃなくて?


「——見つけました!」


 声がして、顔を上げた。


 そこに立っていたのは——


 長い尖った耳。

 銀色に輝く長い髪。光の加減で、時に蒼く、時に白く輝く。

 透き通るような白い肌。陽の光に照らされて、まるで磁器のように滑らかだ。

 そして、宝石のような碧い瞳。森の深緑を溶かし込んだような、神秘的な輝き。


 ……エルフ?


 顔立ちは、人間離れした美しさだった。

 形の良い唇。整った鼻筋。すっと通った顎のライン。

 年齢は十代後半に見えるが、エルフなら何百歳かもしれない。

 胸は程よく膨らみ、腰は細く、足はすらりと長い。

 ファンタジーのエルフそのものだ。


「神託通りです! 森の中央に、異界からの使者が現れると!」


 エルフの少女は、俺を見て目を輝かせている。

 彼女の後ろから、同じようなエルフの少女たちが次々と現れた。

 全員、美少女。全員、人間離れした美貌。


「本当だ……」

「人間……いえ、神の使者……」

「お迎えしなければ……」


 俺は状況が分からないまま、彼女たちに囲まれた。


「あ、あの、俺は——」

「どうかお静かに。神の使者様、我らの村へお越しください」


 反論する間もなく、俺は彼女たちに連れられていった。


---


 エルフの村は、巨大な樹々の上に作られた美しい集落だった。

 木の葉でできた橋、樹皮で編まれた家々、花々が至る所に咲いている。


 そして俺は、村の中央にある「神殿」に案内された。


「ここが、神の使者様のお部屋です」


 案内してくれたのは、最初に俺を見つけた少女だった。

 名前はティアという。巫女長の娘で、巫女見習いらしい。


「あの、ちょっと待ってくれ。俺は神の使者なんかじゃ——」

「ご謙遜なさらないでください」


 ティアは俺の言葉を遮った。


「百年前の神託に、こう記されています。『異界より来たりし者、森の中央に現れん。その者は神の使者なり、村に繁栄をもたらさん』と」


 いや、俺はただの過労で倒れたサラリーマンなんだが。


「神の使者様には、我ら巫女がお世話をさせていただきます」

「お世話?」

「はい。お食事、お着替え、ご入浴……神の使者様のお体を清め、お守りするのが巫女の務めです」


 ……待て。

 着替え? 入浴?


「あの、それは自分でできるんだが——」

「なりません」


 ティアは真剣な顔で言った。


「神の使者様のお体は神聖なもの。俗人の手で汚すわけにはまいりません。巫女だけが、神の使者様のお体に触れることを許されているのです」


 ……どういう理屈だ。


「では、まずはお体を清めさせていただきます」


 ティアがそう言うと、他の巫女たちがぞろぞろと入ってきた。

 全員、美少女。

 全員、薄い白の巫女服。

 透けてはいないが、体のラインがはっきり分かる。


 銀髪の子、金髪の子、淡い緑の髪の子。

 胸が大きい子、小さい子、程よい子。

 全員に共通しているのは、人間離れした美貌と、透明感のある白い肌。

 そして、全員が、俺の方を見つめている。


 ……天国か? ここは天国なのか?


「お、おい……」

「どうかお静かに。神の使者様」


 俺の服が、するすると脱がされていく。


「ま、待ってくれ!」

「大丈夫です。我らは巫女。神の使者様のお体を清めることに、何の恥じらいもございません」


 ティアは平然とした顔で言う。

 だが、俺には恥じらいがあるんだが!


 結局、俺は全裸にされ、温かい湯で満たされた浴槽に入れられた。

 そして——


「では、お体を洗わせていただきます」


 巫女たちが、俺の体を洗い始めた。


 柔らかい布で、丁寧に。

 背中、腕、脚——


 エルフの指は、人間よりも細く、柔らかい。

 布越しに伝わる彼女たちの指の感触が、俺の肌をなぞる。

 温かい。優しい。そして、どうしようもなく官能的だ。


「神の使者様、お体が強張っておられます」

「そ、そりゃそうだろ……」

「リラックスしてください。我らは神の使者様のために存在しているのです」


 ティアの手が、俺の肩を揉んだ。

 細い指なのに、意外と力がある。

 その指が、俺の肩甲骨のあたりをなぞる度に、背筋がとろける。


「……っ」

「気持ちいいですか?」

「あ、ああ……」


 正直、気持ちいい。

 過労で凝り固まっていた体が、ほぐれていく。

 エルフの指は魔法のようだ。触れられるだけで、体の芯から疲れが抜けていく。


「では、続きを」


 別の巫女が、俺の胸を洗い始めた。

 柔らかい布が、肌の上を滑る。


「あの、もう一人でできるから——」

「なりません。隅々まで清めなければ、神の使者様の力が発揮されません」


 ……隅々まで?


 俺は嫌な予感がした。


 その予感は的中した。

 巫女たちは、俺の体のあらゆる場所を丁寧に洗った。

 指の間、耳の後ろ、首筋、胸、腹、太ももの内側——


「神の使者様、ここは念入りに清めなければなりません」

「ちょ、ちょっと待って!」

「ご安心ください。我らは巫女ですから」


 ティアは平然とした顔で言うが、俺の心臓は爆発寸前だ。

 美少女エルフに、本当に隅々まで洗われるとは思わなかった。


 そして——問題が発生した。


 いや、発生したというか、発生してしまった。

 男として、当然の反応というか、生理現象というか……。


 俺は必死に湯船に沈んだ。

 膝を抱えて、できるだけ水面下に隠れる。


「神の使者様? どうかなさいましたか?」

「い、いや、なんでもない! ちょっと、こ、このまま一人にしてくれ!」

「しかし、まだお背中が——」

「い、いい! 自分でやる! できる!」


 ティアは不思議そうに首を傾げた。


「……神の使者様、お顔が真っ赤ですが」

「気のせいだ!」

「熱があるのでしょうか。お熱を測りましょうか」

「いらない! 大丈夫! 健康! 超健康!」


 俺は両手で顔を覆った。

 こんなところを見られたら、死ぬ。比喩じゃなく、恥ずかしさで死ぬ。


「……神の使者様は、時々不思議なお振る舞いをなさいますね」

「そ、そうか……」

「はい。でも、それも神の使者様の御神徳なのでしょう」


 違う。断じて違う。

 これは神徳でも何でもない。ただの男の性だ。


「では、少しお時間を置いて、また参ります」

「あ、ああ……頼む……」


 巫女たちが退室した後、俺は湯船の中で深く息を吐いた。


 ……危なかった。

 本当に危なかった。


「……終わりました。お体、とても綺麗になりましたよ」


 しばらくして戻ってきたティアが、満足そうに言った。

 俺はもう、何も言い返す気力がなかった。


 ティアの顔が、俺の顔のすぐ近くにあった。

 彼女の息が、頬にかかる。

 甘い香り。花のような、森のような香り。


「あ、ああ……」


 俺は放心状態で湯船に浮かんでいた。

 精神的に疲れた。でも、体は確かにスッキリしている。

 肌はすべすべで、何だか軽くなった気がする。


 ……エルフの指は、本当に魔法なのかもしれない。

 ただし、俺の理性を破壊する魔法だ。


---


 入浴の後、俺は「御神体の間」と呼ばれる部屋に案内された。

 ふかふかのベッドと、柔らかいクッション。

 快適だが、問題はそこじゃない。


「では、お着替えをお手伝いします」


 ティアが、俺の前に立った。

 手には、白い衣が握られている。


「自分で着られる——」

「神の使者様は手を動かしてはなりません。全て、我らがお世話します」


 俺は諦めた。

 逆らっても無駄らしい。


 ティアの細い指が、俺の体に衣を着せていく。

 その度に、彼女の指が俺の肌に触れる。


 ……柔らかい。

 エルフの指って、こんなに柔らかいのか。


「神の使者様」

「な、なんだ」

「お体が熱いようですが、お加減でも?」

「いや、なんでもない」


 顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

 ティアは不思議そうな顔をしているが、気づいていないらしい。


「では、お食事をお持ちします。少々お待ちを」


 ティアが部屋を出て行った。

 俺はベッドに倒れ込んだ。


 ……これが毎日続くのか?

 美少女エルフに着替えさせられ、入浴させられ——


 正直、天国かもしれない。

 いや、でも理性が保てるか不安だ。


---


 数日後のこと。


「神の使者様、お疲れではありませんか?」


 ティアが心配そうに俺を見つめていた。


「いや、別に……」

「では、膝枕をさせていただけませんか?」

「ひざまくら!?」


 ティアは当然のように頷いた。


「神の使者様のお疲れを癒すのも、巫女の務めです」

「いや、でも……」

「ご遠慮なく」


 気づいたら、俺はティアの膝の上に頭を乗せていた。


 柔らかい。

 太ももの感触が、頭の後ろに伝わってくる。

 ふっくらとしていて、それでいて程よい弾力がある。

 薄い巫女服越しに、彼女の肌の温もりが伝わってくる。

 人間より少し低い体温。でも、不思議と心地いいひんやり感。


 そして、上を見上げると——


 ティアの顔が、すぐそこにあった。

 碧い瞳が、俺を見下ろしている。

 長いまつげ。形の良い唇。すっと通った鼻筋。

 人間離れした美しさが、すぐ目の前にある。


 そして、その向こうには——


 巫女服の胸元が、少し開いて見えていた。

 白い谷間が、ちらりと見える。

 程よく膨らんだ胸が、服の中で形を主張している。

 透き通るような白い肌に、うっすらと青い血管が透けて見える。


「っ……!」


 俺は慌てて目を逸らした。

 だが、網膜にはしっかりと焼き付いてしまった。


「神の使者様? どうかなさいましたか?」

「な、なんでもない」

「お顔が赤いですが……」

「気のせいだ」


 ティアの細い指が、俺の髪を梳いた。

 優しい手つき。心地いい。

 でも、心臓はうるさくて仕方がない。


 太ももの柔らかさ。

 胸の膨らみ。

 甘い香り。

 全てが、俺の理性を見事に破壊していく。


「神の使者様、このままお休みになってもいいですよ」

「……そうさせてもらう」


 俺は目を閉じた。

 ティアの膝の上で、彼女の指に撫でられながら。


 ……天国だ。

 これは天国だ。


---


 また別の日。


「神の使者様、耳のお掃除をさせていただきます」

「耳の掃除?」

「はい。神聖なお体の隅々まで清めるのが、巫女の務めです」


 ティアは膝枕の体勢で、耳かきを取り出した。


「では、失礼いたします」


 細い指が、俺の耳たぶに触れた。

 くすぐったい。


「っ……!」

「あ、痛かったですか?」

「いや、その……気持ちよくて……」


 ティアの息が、耳にかかる。

 温かい息。甘い香り。


 俺は必死に目を閉じていた。

 開けたら、またティアの胸元が見えてしまう。


「神の使者様、反対側もいたしますね」

「あ、ああ……」


 俺は寝返りを打って、反対側の耳をティアに向けた。

 その拍子に、彼女の太ももに顔が埋まった。


「っ……!」

「神の使者様?」


 ティアは不思議そうに首を傾げた。

 無自覚だ。この娘、本当に無自覚だ。


 柔らかい太ももの感触が、顔全体に伝わってくる。

 いい匂いがする。エルフの匂い。


「では、続けますね」


 ティアの指が、また俺の耳に触れた。

 俺は、もう何も考えないことにした。


---


 数日が経った。


 俺は「ご神体」としての生活に、少しずつ慣れてきた。

 

 朝は巫女たちに起こされ、着替えを手伝ってもらう。

 昼は村の様子を見て回り、エルフたちに感謝される。

 夜は入浴させてもらい、ベッドで眠る。


 完全に貴族、いや、それ以上の生活だ。


 だが、問題が一つあった。


「神の使者様、今夜は私がお側に」


 夜、ティアが俺の部屋に入ってきた。

 いつもの巫女服ではなく、薄い寝間着を着ている。


「お、お側って……」

「神の使者様のお体を、夜通しお守りするのです」


 ……つまり、一緒に寝るってことか?


「大丈夫です。私は巫女ですから、不埒なことは致しません」


 いや、俺が不埒なことをしそうなんだが。


 ティアは当然のように、俺の隣に横になった。

 薄い寝間着越しに、彼女の体の線がはっきりと見える。

 細い腰。くびれ。柔らかそうな胸の膨らみ。すらりとした脚。

 寝間着の裾から、白い太ももが覗いている。

 月明かりに照らされて、彼女の肌が青白く輝いていた。


 近い。

 すぐ隣に、美少女エルフが横たわっている。

 彼女の甘い香りが、鼻腔をくすぐる。

 花のような、森のような、何とも言えない芳香。


「神の使者様? お顔が赤いですが」

「な、なんでもない」

「そうですか。では、おやすみなさいませ」


 ティアは目を閉じた。

 規則正しい寝息が聞こえてくる。


 ……眠れるわけないだろ。


 隣に美少女エルフがいる。

 薄い寝間着一枚で。

 太ももが見えている。

 甘い香りがする。


 俺の体は正直だった。

 また、あの問題が発生しそうになる。


 俺は必死に別のことを考えた。

 円周率。3.14159……。

 元素記号。水兵リーベ僕の船……。

 上司の顔。課長の小言。残業代の計算……。


 ……よし、収まった。


 だが、ティアが寝返りを打って、俺の方に体を寄せてきた。

 彼女の胸が、俺の腕に触れる。


 円周率! 3.14159265358979!!


 俺は必死に目を瞑った。

 この夜、俺は円周率の小数点以下を暗唱し続けた。


 俺はこの夜、一睡もできなかった。


---


 翌朝。


 目を覚ますと、ティアが俺の胸に顔を埋めていた。

 いつの間にか、抱きついている。

 彼女の銀髪が、俺の顔にかかっている。いい匂いがする。


「……ん……」


 ティアが身じろぎした。

 その拍子に、彼女の胸が俺の腕に押し付けられる。


 柔らかい。

 とても柔らかい。

 薄い寝間着一枚越しの、生々しい感触。

 弾力があって、でも柔らかくて、腕に絡みつくような感覚。


「っ……!」


 俺は体を硬直させた。

 動いたら、もっとまずいことになる。

 彼女の太ももが、俺の脚に絡まっている。

 すべすべした肌の感触が、直に伝わってくる。


「……あ」


 ティアが目を開けた。

 碧い瞳が、俺を見上げている。

 寝起きの潤んだ目。少し赤い頬。乱れた銀髪。

 無防備な美しさが、すぐ目の前にあった。


「おはようございます、神の使者様」

「お、おはよう……」

「よく眠れましたか?」

「あ、ああ……」


 嘘だ。全然眠れなかった。


 ティアはゆっくりと体を起こした。

 寝間着が乱れて、肩が見えている。

 白い肌が、朝日に照らされて輝いている。

 鎖骨のラインが美しい。肩から腕にかけての曲線が艶めかしい。

 寝間着の胸元が緩んで、谷間がちらりと見える。


「今日もお体を清めさせていただきますね」

「あ、ああ……」


 俺は、もう逆らう気力がなかった。


---


 さらに別の日。


「神の使者様、マッサージをいたします」


 巫女の一人が、香油の入った瓶を持っていた。

 リアという名の、金髪のエルフだ。


「マッサージ?」

「はい。神聖なお体のコリをほぐすのも、巫女の務めです」


 俺はベッドにうつ伏せになるよう言われた。

 そして、リアが俺の背中に馬乗りになった。


「ちょ、ちょっと待って!」

「大丈夫です。この方が、力が入りますので」


 リアの体重が、俺の背中にかかる。

 軽い。エルフは体が軽いのか。

 でも、彼女のお尻が、俺の腰に乗っている。


「では、始めますね」


 リアの手が、香油を塗りながら俺の背中を揉み始めた。


「んっ……!」


 気持ちいい。

 過労で凝り固まっていた筋肉が、ほぐれていく。


「神の使者様、お体がとても強張っています」

「あ、ああ……そうだな……」

「念入りにほぐしますね」


 リアの手に力がこもった。

 彼女の体重も、俺の背中にのしかかる。


「……っ!」


 その拍子に、リアの胸が俺の背中に押し付けられた。

 柔らかい。とても柔らかい。


「あ、すみません。この方が力が入るので……」

「い、いい……そのままで……」


 俺は思わず言ってしまった。

 リアは不思議そうに首を傾げたが、そのままマッサージを続けた。


 背中に彼女の胸を感じながら、俺は極楽の時間を過ごした。


---


 別の日のこと。


 今日の入浴は、ティアが一人で担当することになった。

 他の巫女たちが祭りの準備で忙しいらしい。


「神の使者様、今日は私が一人でお世話いたします」

「あ、ああ……」


 二人きり。

 湯気の立ち込める浴室で、美少女エルフと二人きり。


 ティアは、いつものように俺の体を洗い始めた。

 だが、距離が近い。

 他の巫女がいないからか、彼女が一人で全部やらなければならない。


 背中を洗うために、ティアが俺の後ろに回った。

 その時、彼女の胸が、俺の背中に触れた。


「っ……!」

「あ、すみません。狭くて……」


 ティアの顔が、少し赤くなっていた。

 いつもは平然としている彼女が、照れている。


 ……かわいい。


「気にしなくていい」

「いえ、気にします。神の使者様のお体に失礼があっては……」

「失礼なんかじゃない。その……その方が、いい」


 俺は思わず言ってしまった。

 ティアは目を見開いた。


「……いい、とは?」

「いや、その、なんでもない」


 俺は慌てて話題を変えた。

 だが、ティアの耳は真っ赤だった。


 ……この娘、本当に無自覚なんだな。


---


 それから一ヶ月。


 俺は完全に「ご神体」としての生活に馴染んでいた。

 毎日、美少女エルフの巫女たちにお世話される日々。

 入浴、着替え、食事、そして添い寝。


 正直、元の世界に戻りたいとは思わなくなっていた。


 あの過労地獄に比べれば、ここは天国だ。

 美少女に囲まれて、何もしなくていい。

 ストレスなんて、どこにもない。


「神の使者様」


 ある日、ティアが真剣な顔で俺の前に立った。


「実は、お伝えしなければならないことが」

「なんだ?」

「神の使者様を、この村に留める方法について」


 俺は首を傾げた。


「留める方法?」

「はい。神託によれば、神の使者様は一年で元の世界に戻られるとのこと」

「一年で?」

「はい。ですが、それを防ぐ方法があります」


 ティアの顔が、少し赤くなった。


「神の使者様が、この村の者と『契り』を結べば……永遠にこの村に留まることができます」

「契り……?」

「は、はい。つまり、その……け、結婚、です」


 ティアは真っ赤になって俯いた。


「私は……神の使者様のお側にいたいのです。ずっと、お世話をしたいのです」


 俺は呆然とした。


 美少女エルフに、プロポーズされている。

 しかも、毎日添い寝してくれていた子に。


「……俺でいいのか?」

「神の使者様以外、考えられません」


 ティアは俺を見上げた。

 碧い瞳が、潤んでいる。


「私を……選んでいただけますか?」


 俺は——


 迷う理由がなかった。


「ああ。俺も、お前のそばにいたい」


 ティアの顔が、パッと明るくなった。


「では、今夜から……『お世話』の内容が、少し変わります」

「変わる?」

「はい。夫婦としての、お世話に」


 ティアは、いたずらっぽく微笑んだ。


 ……俺の異世界生活は、まだまだ続きそうだ。



【完】


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