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くだらない私の日常 新人なろう作家の日常妄想系エッセイ

心の避暑地 バカンスに憧れて


「バカンス」――――これほど魅惑的でロマンを感じる言葉があるだろうか――――いや、ない。


 この言葉を聞くたびに、私の中でモナコやニース、絵本のようなエズの青い空、燦燦と輝く太陽が思い出される(行ったこと無いけど)のんびりコバルトブルーの海を眺めながら焼きたてのクロワッサンを朝食に食べて、ランチは新鮮な海鮮料理を冷えた南仏白ワインと合わせていただく(お酒飲めないけど)


 皆さま、バカンスしてますか?



 たぶん、知名度の割にはあまり実態を知られていないと思われるバカンス。「バカンス(vacances)」の語源はラテン語 vacare──「空になる」「解放される」という意味を持つ言葉。


 バカンス大国のフランスでは、現在、最低5週間の有給休暇が法律で保障されていて、国全体が7〜8月になるとそわそわし始める。郵便局も休むし、市役所も休むし、なかには医者まで休む。国全体、社会全体で休むのが共通認識になっているという意味では、年末年始とお盆休みが感覚的に近いのかなって思う。長期間休むことになるから、一年以上前から準備している人も多いし、仕事の調整もしっかりする。「空になる」「解放される」という言葉の意味通り、バカンス中は仕事から完全に開放されてメールは見ないし連絡は取らないのが基本。ちゃんとオンオフが出来ているってこと。


 よくアニメやドラマに出てくる仕事できるキャラって、世界中を飛び回っていて分刻みのスケジュールに追われながら常にスマホで仕事の話をしているイメージがあるけど――――本当に仕事が出来る人って、オンオフしっかりしているし、そもそも時間内に仕事ちゃんと終わらせるからね。仕事出来る人=ワーカホリックな日本が怖いよ……。 



 ところで、日本だとバカンス=「避暑地」っていうイメージだけど、元々冷涼な欧州にはそういう感覚はあまり無くて、むしろ照り付ける太陽を求めてゆく、という文化的、気候的な違いが面白かったりします。軽井沢、那須、箱根……「暑さを避ける」ための場所として発展した日本とは根本的に事情が異なるんだよね。つまり、本場のバカンスが「太陽を楽しみにいく」なら、日本のバカンスは「太陽から逃げる」ための隠れ家って感じかな。


 でも――――近年はヨーロッパも酷暑に悩まされているから、近い将来、日本の「避暑地」的なリゾートが人気になるのかもしれないけど。



 さて、働きすぎと言われて久しい日本も少しずつ変わってきている。有給制度はあっても使えない、という企業は若者からそっぽを向かれる時代になってきた。実際、今私がバイトしている企業は、有給休暇取得率100%だし、企業説明会に参加しても売り文句はどこも有給休暇取得率だったりする。周りに迷惑をかけたくない、仕事が溜まるのが怖い、申し訳ない気持ちになる──そういうのはすでに過去のモノになりつつあるのかもしれない。有給休暇は権利であって「休む理由を聞かれる」筋合いはないしね。


 でも――――世代が入れ替わるまではまだ時間がかかりそう。「休む=怠ける」という感覚がいまだに根強いし、ワークライフバランスの意識も少しずつ芽生えているけど、まだ「堂々と休む」ことに抵抗感を持つ人は多い。


 というわけで、国・社会全体が「バカンス制度」を容認するようになるにはまだまだ時間がかかりそう。


 でも――――


 自分が「休むこと」を楽しむことは出来るはず。


 私の周囲にも「休み」をもらってもやることないって言う人がいるけど、やることなんて無くて良いのにね。だってそれが許されるのが文字通り「休暇」なんだし。


 カフェで本を読んだり、山に行って風を感じたり――――わざわざ出かけなくたっていい。普段通らない道を散歩してみたり、新しいお店を開拓してみたり――――スマホを持たずに過ごしてみたり。


 私なら道端に生えている草花の調査とか、昆虫観察とか一日中してみたいなって思う。鉱石を探したり、化石発掘なんかもしてみたい。


 どれもこれも――――立派なバカンス。心を空っぽにして、日常から解放されて自由に「休暇」すればいい。もちろん制度設計は大事だけど――――それ以上に休み方が下手な日本人には心の在り方の方が障害になっているような気がする。



 ちなみに、私は安いコーヒー一杯でいつでもバカンスに入れるプロのバカンサーだ、五分あれば小説やエッセイで妄想できるし、年間300日休暇もらえたらずっと小説や絵を描いていられるので死角はない。バカンス制度いつでもどんとこい、ウエルカムなのですよ。


 日本式バカンスであるお盆休みまで残り一か月、蝉の声――――縁側で耳を澄ます風鈴の音色――――浴衣で夏祭り――――川遊びと冷えたスイカ――――夜空を彩る花火――――郷愁を感じるむせるような夏草の匂い。


 風情あふれる日本の夏だけど――――楽しむには暑すぎる……。


 皆さま、くれぐれも熱中症に気を付けて「バカンス」を楽しんでくださいね。



 

 え? なんでいきなり「バカンス」のエッセイ書いたのかって?


 やだなあ、タイムリーだし休暇の妄想するの楽しいじゃないですかあ。



 まあ……本当は夏イラスト描いたから紹介したかっただけなんですけどね。


挿絵(By みてみん)

ひだにゃんサマー Illustration by ひだまりのねこ

夏アニメ、「瑠璃の宝石」「公女殿下の家庭教師」が好き。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
大昔の(ふざけた)パソコン雑誌『ログイン』では、編集員の慰安旅行を『いあーんバカンス』と読んでました。
太陽を楽しむためのバカンスと、太陽から逃げるためのバカンス。 この差異は確かに、気候区分や地域性や国民性にも関わってくる話ですね。 そう言えば確かに、諸外国の人達から「日本人は休日の過ごし方が上手くな…
私も仕事中に2時間空きがあったら空になれるプロのバカンサーです(๑•̀ㅂ•́)و✧ ちなみにうちの会社は『有給使いたい』なんて言ったら、即刻クビになります。・゜・(ノ∀`)・゜・。
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