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報告書6-データコピー中の出来事(2)

 刻々と音の正体が彼女らが居る場所へと近づいてきている。どうか仲間の保護役員でありますようにと祈りながらも不安は膨れていくばかり。そして更にシンが追い打ちをかける言葉を言う。


「ちょっとやばいかも」


「何が?」


 シンの言葉にヴィエラは問いかける。

 どこがどのようにヤバいのか教えてもらわないと唯でさえ不安なのに思わず泣きそうになってしまうではないか。そんな心の声を口に出すわけもなく、ヴィエラはシンをにらみつけた。まあ、彼は背を向けているので彼女のその表情を見ることはないが、雰囲気で何となく伝わったのだろう。「あれ?後ろにいる子、ちょっと怒ってるかな」といったことを思いながら口を開く。


「一人だったら何とかなったかもしれないけど、あちらさんはどうやら2人いるみたいだ」


「ほ、保護役員という可能性は」


 己の望みを言ってみるが、それはすぐにシンによって否定される。


「いや~、実はこの遺跡に入る前に俺、君の仲間たちに会ってるんだな、これが。その時に朝になっても戻ってこなかったら捜索をお願いしますって言って来たから彼らでない可能性が高いと思うな。アハハハ」


 つまり、救助が来ないと今この状況で告げられたヴィエラは、怒りを通り越して諦め始めた。ああ、自分はここでどうなるのだろう。とぼんやり考えたところで、彼女の脳裏に一人の男性の顔が浮かんだ。

 優しい表情で自分を見守る、彼の人を思い出し、こんなところで人生終わりになんか出来ないと頬を打つ。

 頬を打った音でシンはヴィエラの方に顔を向ける。

 そこにはいきなり何してんの?この子、といった表情が浮かんでおり、ヴィエラは不快感を覚える。だが、恐らく他の人がしていたら自分もそういった表情をするだろうと思ったので、そのことに対して不満を言わなかった。


「それが本当なら、ここに向かっている人たちは少なくとも商売敵かもしれないわね」


「そうだね。過激な人たちじゃないと良いね。ついでに程よく頭が足りてないとなお良し」


 緊張状態の中で、笑顔をその顔に浮かべながらひどいことをいう目の前の男を、ヴィエラは冷めた目で見た。


「さて、来訪者方のお出ましだ」


 シンがそう言った時にコピーの進行状況を確認してみると、漸く半分をいったところであった。早く終わってくれとヴィエラは祈るが、その前にシンの言うところの来訪者が彼女たちの目の前に現れた。来訪者は男性2人で、お面を付け表情を隠している。

 見るからして不審な人物の登場に、ヴィエラは顔をしかめた。

 少しの間お互い見つめあっていた。そして来訪者の一人、シンと同じくらいの背丈の細身の青年が口を開く。


「ダイド、何故ここに人がいる」


 青年の問いにもう一人の大柄な男性が腕を組み、シンとヴィエラを見つめる。


「入る前に保護役員の野営地を見つけただろう。きっと彼らも保護役員だ。どうして今ここにいるのかは、理解不能だが」


 それはそうだろう、自分たちもまさかこんな時間にこんな所でこんな人たちと遭遇するなど全く予想もしていなかった。と、ヴィエラは毒づく。けっ。


「まあ、俺たちは任務を遂行するだけだ。邪魔立てするなら排除する」


 疑問に思ったことすら時間の無駄だったと言いたげに、青年が頭を振った。その行為にヴィエラは苛立ちを覚える。


「さっきから勝手な事ばかり言っているけど、貴方達は何者ですか!」


 シンの後ろからまるで猫が威嚇するように噛みつくヴィエラ。そのような状況で言われても全く迫力が無い。

 苦笑しながらそれを見ていたシンは気を取り直して、彼らに向かって言う。


「君たちは何をしにここに来たのかな?」


 シンの問いに、ダイドと呼ばれた男性が答える。


「俺たちはここにあるモノを取りに来た。邪魔しないで頂きたい」


 丁寧な口調で対応する巨漢の男に再びヴィエラがくってかかる。


「ふざけないで。貴方達は保護役員でない一般の人でしょ。遺物の扱いを知らない人に貴重な遺産を預けられるはずがない」


 彼女の発言に呆れながらも、シンは彼らに隙を与えないように注意する。


「ま、そう言うわけだから。諦めて帰っていただけませんかね」


 にへらと笑ってその場を収めようとするシンに対してヴィエラは鉄拳を食らわせた。


「ぐふっ」


「何笑ってるの!緊張感持ちなさいよ、ホント信じらんない!!」


 行き成り入った脇腹への鉄拳に、シンは一瞬息が詰まった。

 彼らのやり取りを興味なさそうに見ていた青年は、おもむろにダイドの方を向き爆弾を落とす。


「なあ、あの女うざい。さっさと片付けて終わらせよう」


 その言葉にヴィエラの顔に血が上り真っ赤になり、シンは噴き出さないように顔に力を入れた。

 ダイドは表情が仮面で隠れているので詳細には分からないが、呆れているような雰囲気をかもし出している。


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