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報告書3‐うっかり少女

 無言のまま二人は先へと進んでいった。その一番の原因は、ヴィエラの機嫌の悪さが原因である。不満、不機嫌の態度を彼女は隠そうともしなかった。それを咎めるほどシンは彼女の態度に不快感を覚えなかった。なので、彼は触らぬ神に祟り無しと、彼女を放置していた。

 不機嫌ダダ漏れのヴィエラと、そんな彼女もなんのその、己のペースを崩さず強引にMy wayを突き進むシン。そんな2人は爆破した場所から黙々と足を進めて行った。その状態で40分程先に進んだ所で、彼らの目の前に大きな扉が現れた。


「うーん、原動力が無いから開かないか。ということは」


 ブツブツと呟きながら扉の右側に立ち、シンは何やら作業をしている。

 その作業をヴィエラは唯静かに観察していた。

 実は、ここに来るまでにも数か所同じように閉じている扉が、彼らの行く手を阻んでいた。

 そしてそれらをこじ開けたのは、彼女の目の前で何やらごそごそ作業している奴である。

 彼が所有していた遺物は全て取り上げたはずだが、隠し持っていたのだろうかとヴィエラは疑った。なので、彼に使った道具を見せるよう要求した。すると、これまたあっさりと彼が差し出したのは、唯の工具だった。

 どうやったらあんなでかい扉を、このような工具で開ける事が出来たのかは不思議だ。

まあ、トレジャーハンターを生業としている程だ。きっと自分が知らないような技術があるのだろうと自分を納得させた。

本部に帰ったら、それらについての資料が無いか調べよう。と、ヴィエラは心に決めたのだった。


「うっし!開いた」


 彼女が帰った後の予定を考えているうちに、シンの作業が終わったらしい。

 組んでいた腕を解き、ヴィエラは扉へ向かう。

 どうやら今度は通路ではなく部屋に続いていたようだ。遺物である、多くの機械が所狭しと置いてある。

 その状況をみたヴィエラは目を輝かせた。


「すごい。こんなに多くの機器があるところが存在するなんて、保管庫以外無いと思ってた」


「あれ?君たちがこの施設の調査に来たってことは、ここにこれらがある事知っているんだと思ってたんだけど」


 ヴィエラの呟きが聞こえたシンは、疑問を覚えた。確かに彼女ら保護役員の仕事は遺物や遺跡を含めた遺産の保護である。なのに、その保護役員のメンバーであるヴィエラが何故驚いているのだろうか。


「わかった!君雑用係りなのか!!」


 納得!といったようにシンは掌に握り拳をぽんと置く。その言葉を聞いたヴィエラの怒りのメーターは振り切った。


「失礼な!私は保護役員”ツヴァイ”の称号を持っているんです。それに、今回の目的の遺物は機械ではなくデータとしか」


 言ってしまった瞬間、ヴィエラは「しまった」と思った。


「あ~あ。俺だから良かったものの、そんな事他の人に言っちゃだめだよ?危ないから」


 忠告してくるシンに、ヴィエラは目を点にした。

 トレジャーハンターを仮にも自称しているのに、彼は自分がツヴァイだと知っても動じない。むしろこちらの身の心配までしているではないか。

 なんだろう。この、失態を犯したせいだと言い切れない疲労感は。


「ご忠告ありがとうございます」


 ヴィエラの返事にうんうんと満足そうにシンは肯く。彼のその姿をじっと見つめるヴィエラは、身体の中に溜まった重石を吐き出す様に、大きく溜息を吐いた。

 ツヴァイといっても、ヴィエラはまだ新米のペーペーだ。本来は絶対に漏らしてはいけない情報を話してしまった事で、きっと彼も確信しただろう。彼女が自分の脅威とならない相手だという事に。


「さてと、どうやらここがこの施設の情報等の中核部だったみたいだね。調べれば貴重なものがあるかな」


「ちょっと!待ちなさいよ」







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