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能力頼りの万能者  作者: うさぎめい
蒼の章─平和な日常編─
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Ep.2【星に代わって、おしおきだ!】

定期投稿は厳しいですね……

僕は布団から飛び起きる。

顔から汗を垂らし、青ざめた表情をしており、呼吸が乱れている。

どうやら悪夢に(うな)されていたらしい。


「なんだ……凄い嫌な夢を見ていたような……」


僕は夢の内容を覚えていなかった。

慣れない料理などをしたせいで疲れが溜まっていたのだろう。

そういえば、夕食を食べてすぐに眠りについてしまったことを思い出した。


「ごめんなさいッッ!!」


「!?……なんだ、今の声」


リビングから叫び声がした。

僕は部屋を出て、リビングを見に行く。

華はリビングの机に体を倒して眠っていた。


「ごめんなさい!全部私のせいなんです!」


叫び声の正体は華の寝言だったらしい。

それも酷く魘されている。


「兄弟揃って悪夢かぁ……不良にも絡まれるし、今日は厄日なのか?一体どんな夢を見てるんだか」


僕はゆっくりと華の元へ足を運ぶ。


「私が悪いから……どうかお母さんとお父さんは連れていかないで」


その言葉を聞いた途端に僕の足は止まった。


「連れていくなら私にして……私が残ると……お兄ちゃんも、不幸にしちゃう……」


僕は急いで駆け寄り、眠った妹を抱きしめた。


「そんなことないよ。俺は華がいてくれて幸せ者だ。

俺を独りにしないでくれて、ありがとうな……」


華の体には熱が(こも)っており、微かに震えていた。

閉じた(まぶた)からは雫が溢れている。



【全能発動:夢喰い】



華の全身の震えが止まる。

寝言は消え、溢れる涙も次第に止まってゆく。


「あ……皿洗い、忘れてたぁ」


僕は華から離れ、キッチンまで足を運ぶ。

僕はキッチンに並んだ食器の山を見下げて微笑む。

食器は洗われておらず、全て油が付いたままだった。


「良かった。まだ洗われてなかった。

皿洗いは任せろって言ったからね、ちゃんとしないと」


僕は食器に右の掌を向ける。

途端に食器についた汚れが落ち、新品同然にピカピカになる。

そして綺麗になった食器が宙に浮き、水切りかごの中にゆらりと着地する。


「ちょっとくらい楽しても良いよねぇ」


僕は苦笑いを浮かべる。


「そろそろ行くか」


僕はそう呟くとキッチンを後にした。

玄関に置いてあるスニーカーを手に取り、ベランダまで運ぶ。

持ってきたスニーカーを履き、ベランダの手すりに上半身をかける。

そよ風が吹き、僕の青髪と赤みがかった前髪が揺られる。


目を閉じ、少し考えてからまた目を開く。

その顔は覚悟に満ちていた。


「全知発動……奴らの居場所を教えてくれ」


『──承知しました。』



* * *



午後六時 三十七分、日付は九月の十八日

初秋のため、この時間にもなると日は沈み、辺りは完全に暗くなっている。


通り道がある。

辺りに家や店などはなく、あるものといえば公園と、そこに立てられている街灯のみ。

監視カメラのような防犯装置は一つも見当たらない。

何もないためか、この時間でも全く人気(ひとけ)を感じない。


そんな寂しい通り道を一人の女性がトボトボと歩いている。

女性の外見は二十代前半くらいで、茶色のセミロングヘアだ。

白い半袖のニットにベージュ色のプリーツスカートを履いている。


帰宅途中といったところだろうか。

活力のない、気の弱そうな顔つきをしている。

満員の電車にでも乗れば途端に痴漢被害に()いそうだ。


人気がないように見えたが奥のほうには自動車が停められている。

少し大きめのミニバンで、車体の色は黒であった。

女性はそんな自動車は気にも留めずにトボトボと歩き続けている。

というより人は歩くときに、いちいち周りの人や車に注意など配らない。


女性が自動車のサイドに到達すると、後方部のドアが開いた。

後部座席から二人の男が飛び出てきた。

片方の男が女性の正面で行く手を(はば)み、もう片方の男が背後から女性を抑えつける。

女性の活力のない表情が、一瞬にして恐怖に変わる。

「やめてっ!」と声を出そうとした途端に、正面の男が白い布を力強く口に当てる。

おそらく布に麻酔薬でも含まれていたのだろう、女性は次第に抵抗力を失い眠りについた。

手馴れている。常習犯なのだろう。


「いっちょあがり」


「だな!」


二人の男が喜々とした表情を浮かべている。

運転席の窓が開き、運転係と思われる男が「おい、誰かに見つかる前に乗せろ」と指示を出す。


「あいよ」


二人の男が後部座席に女性を運び、ドアが閉まる。

自動車はエンジン音を立て、その場を去っていく。



* * *



何もない山奥に一つ建物がある。

その建物は古い工場で、今は使われていないのか中にはほとんど何も置いていない。

人や車は一つも見当たらない。


少しして、黒いミニバンがその工場に到着する。

先ほど帰宅中の女性を拉致した連中と見える。

車から三人の男が興奮したように飛び出てきたのだが、やはり男の一人は女性を抱えていた。


男達は当たり前のように工場の中に入る。ここが奴らの拠点なのだろう。

女性が放り投げられる。

硬い地面に落とされた衝撃で目を覚まし、青ざめた顔で男達に視線を向ける。


「いやーっ!」


「叫んだって誰も助けてはくれねーぞぉ」


「ここは人っ子一人いない山奥だからな」


「犯罪を犯すには打って付けの場所ってわけだ」


三人の男はゆっくりと彼女に歩み寄る。

男達は、気持ちが悪いとしか言い表せないようなニヤケ面を浮かべている。

彼女の恐怖心は限界値に達していた。


「誰か、助けてぇーーっ!!」


「だからそんな叫んでも誰も──」


「楽しそうですね!」


空気の読めない気持ちの良い声が建物内全体に広がる。もちろん僕の声だ。

そよ風に揺られながら、僕は立っていた。


「なんだガキ?この辺に人はいないはずだが……お前も混ぜてほしいのか?」


「いやいやまさか……遊び相手の一人もいない可哀想な大人にはなりたくないなぁ、と思って見学です。」


「はぁ?鬱陶しいガキだな……どうでもいいけど撮影だけはすんなよ」


思った反応と違ったため、僕は少し困った。

そして僕はハッと何かをひらめいたように口を開く。


「もしかして図星ですかぁ?山本さん、本田さん、田口さん……」


三人の男は咄嗟(とっさ)に僕を睨んだ。

まるでお化けでも見たかのような顔をして、冷や汗までかいて心底(しんそこ)驚いているようだ。


「お前……なんで俺らの名前知ってんだよ……」


「おいこれ、不味くねぇか?」


焦る二人を置いて一人の男が僕に近づいてくる。

男は冷静にお尻のポケットから小さめのナイフを取り出す。


「ウソぉーん、僕のこと殺す気かよ」


「当たり前だろ?名前知られてるのは不味いんだから……殺すに決まってんだろ」


僕はゴクンと唾を飲む。


「おい、その女押さえとけ」


「お、おう……」


「任せとけよ……」


男は迷いのない足取りで、コツコツと足音を立てながら僕に近づいてくる。

今までに何人もの女性を襲ってきて、もう後戻りはできないってことか。



(全知発動、俺にプロ顔負けのボクシングを叩き込んでくれ)


『ボクシングの感覚情報を身体に流し込みます───。』


【全能発動:動体視力向上】


『完了、ボクシングの感覚情報を身体に流し込みました───。』



僕は自信に溢れた笑みを浮かべる。

男は警戒したような表情を浮かべるが、相変わらずその歩みに迷いは感じない。

星明かりが二人を照らす。


「星に代わって、おしおきだ!」


「月だろ」


「お、ナイスなツッコミ」


男は僕の鼻を目掛けて勢いよくナイフを突き出す。


(あっぶないッ!急にシリアスに戻してきた……

動体視力上げといて良かったぁ。)


僕はナイフが鼻に当たる直前で左に(かわ)す。

躱すついでに男の左脇腹に強烈なボディブローを入れる。

ドスッ!という音と共に、男が大きく怯みナイフは後ろ側に飛んで行く。


僕は男が怯んだ隙を逃さずトドメの一撃を入れる。

先程のボディブローで出した左拳を口元まで戻す。

左足を力強く踏み込み、腰をひねり、右の拳を真っ直ぐと今度は男の鼻を目掛けて突き出す。

右ストレートだ。


「シュッ……」という息を吐く音と共に、バシュン!と大きな音を出して男が吹き飛ぶ。


「うああああああぁぁぁっ!!」


後ろにいた男の一人が、雄叫(おたけ)びを上げながらある場所に向かって走り出す。

男の向かった先には飛んで行ったナイフが落ちていた。


「取った!……ふがッ……」


急いで駆け寄った僕が、男の顔面を地面に叩きつけた。

少量の血が飛び散り、僕は罪悪感から後退(あとずさ)りをする。


それが命取りとなった。


男は女性を押さえつけているもう一人の男に向かってナイフを投げた。

ナイフは男の足元に着地する。


「危ねぇな!何すんだよ!」


「殺せぇーッ!!

その女に俺達の名前を聞かれてる!このガキは後にして女だけでも殺せ!」


後戻りができないからか、こいつらは血迷っている。

殺人に手を染めるなど、どうかしている。


「いやっ!やめて、お願い!」


「ぎやあああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!」


完全に常軌を逸した男は、ナイフを手に取り女性に振り下ろした。


プスッという音が鳴り、赤黒い液体が宙を舞う。


「痛いッ!」


刺されたのは僕だった。

()()()を放ちながら、音速をも超える速さで間に入ったのだ。


「ど、どうなってる……今変な光が見えたような……」


「どうでも良いから女の方から先に殺せ!」


「おう!」


僕は腹の中心をピンポイントで刺されてしまい、身動きが取れない。

男は震えながら女性に近寄る。

僕を仕留める絶好のチャンスだが、弱っているから先に女性を刺すつもりだ。


「神様……助けて……私、彼氏だって出来たばかりなのに」


女性は絶望していた。抵抗する気力は無かった。

男は焦っていた。引き返す気は無かった。


ナイフからバキバキと音が鳴った。

次の瞬間、ナイフの刃がポロポロと崩れていく。


「これで……ひとまず安心だな……」


俺がそう言うと、男は振り返って俺の方を向く。



【全能発動:治癒】



緑色の光が放たれる。

俺の腹部の傷が次第に塞がり、ついでに穴の空いた服も直る。

男はあんぐりとした表情で驚愕している。


「お前なんなんだ!!」


「うるさい……今俺イラついてんだよ……腹がバカみたいに痛かった。

確かにお前らをぶん殴った俺も悪いから、ツケが回ってくるのは分かる。でも俺だけ痛すぎた。」


俺は完全にキレていた。

右手で腹をさすりながら、男に向けて左の掌を出す。


「……なんだよ?」


「全能発動……衝撃波……」


俺が能力を行使した途端に男の体が吹き飛ぶ。

20mほど吹き飛んで壁に衝突する。

死んではいないが、かなり痛そうだ。


「嘘だろ……」


二人目に倒した男はまだ意識があった。

俺は掌をその男に向ける。


「助けてくれ!」


「全能発動、10時間の睡眠付与」


僕の手から青いエネルギーの(かたまり)が男を目掛けて放たれた。

塊が男に当たると、男は白目をむきながら昏倒(こんとう)した。

女性が僕の方を見つめながら、信じられないといった表情を浮かべている。


「あらら、驚かせちゃいましたね」


僕は苦笑いを浮かべる。

そして女性の頭に手を置く。


「ちょっと失礼しますね」



【全能発動:記憶操作】



黄金(こがね)色の光が放たれる。

光が消えると同時に僕は手を離して、女性に声をかける。


「通報しといた方が良いですよ。あの人達が起きる前に

僕は警察沙汰は勘弁なんで嫌です」


そう言って僕は去っていく。

僕のパーカーに血が付着していたが、シューッと静かな音を立てながら消えていった。



* * *



一方その頃、心夜の家では眠っていた華が目を覚ます。

体を起こし、ピカピカになった食器を見つめる。


「お兄ちゃん……皿洗いの達人だ……」

次回

Ep.3【君って超能力者なんでしょ?】

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