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能力頼りの万能者  作者: うさぎめい
蒼の章─平和な日常編─
2/4

Ep.1【守りたかった日常】

とある学校がある。

銘板(めいばん)には『星彩高等学校』と掘られている。


校門から、一斉に生徒が溢れ出てくる。

世の学生達は下校の時間らしい。


ほとんどの生徒が学校から出た頃、一人の青年が現れた。

その生徒は制服の上から青いパーカーを着用しており、目を閉じたままゆったりと歩いている。


青い髪の青年だった。

前髪は少し赤みを帯びている。

青年がゆっくりと(まぶた)を開く……


美しい赤い瞳がキラリと輝いた。


これが僕だ


僕の名前は『長春(ながはる) 心夜(しんや)

星彩高校の一年生で、年齢は十六


僕は生まれて数日ほどで、実の親に捨てられたらしい。

そして心優しい両親に拾われて育ったのだが……、

あれは6歳くらいの頃だったかな?

色々あって、両親が他界した。



そして僕はある秘密を抱えている



「お前、なかなか綺麗な顔をしてるじゃねぇか」


下校途中の不良生徒が、中学生くらいの少女にうざがらみをしている。


「こいつ全然抵抗しねぇぞー」

「逆に生意気だな!」


一人ではなく、集団で騒いでいた。

ちょうど僕の目の前で起きている出来事だ。


「人が群れるのは、お互いの強みを活かし、お互いの欠点を補うためだ」


そんな臭すぎるセリフを放ちながら、僕は現れる。


「あぁ?」

「はははッ!厨二病が来たぞ!」


と、不良AとBは嘲笑った。


「でもお前たちは、馬鹿だから強みなんて活かせない。

メソメソと慰め合うべく群れてるだけの論外だな」


と、僕は嘲笑い返す。


「何が論外だよ。厨二病のが論外だろ。」


「あれ?思ったより煽り耐性ある?」


僕は焦りの表情を浮かべる。


(やばい……適当に挑発して、あの子から俺に意識を向けさせようとしたのに……。


こんな人目に付くところじゃ、()()も使えなさそうだし)


僕は不良達の後ろの方に視線を向ける。

そこには、不良達が手を出していた少女がいる。

少女はセーラー服を着ており、黒髪が綺麗なショートヘアで、寂しげな赤い瞳をしていた。


僕は少女の目をジッと見つめて、ポカンとした表情を浮かべる。


不良達は面倒くさそうに(いら)立っていた。


「こんなのに構わなくていい。とっとと行こうぜ」


そう言いながら不良Cが、少女の腕を力強く掴む。





一瞬の出来事だ





ドゴンッ!と鈍い音が響いた。

少女の腕を掴んだ不良Cが、床に背をつけている。


僕が忌々(いまいま)しい不良Cの腕を取り、重心を崩して地面に叩きつけたのだ。


不良Cは肩を強打し、痛みに苦しむ。


「お前ら……俺の妹に触るな」


少女は僕の妹だった。

ポカンとしていたのは、驚いて放心していたからだ。




『合気道の感覚情報を、身体に流し込みました───。』




そんなアナウンスが頭に響く。


僕は残った不良達に怒りの眼差しを向ける。


「そいつが死んでも、こっちにはあと二人いるんだぞ!」


「オレまだ生きてる……」


僕は、殺気のこもった赤い瞳を輝かせる。


「ヒャッ……!」


少し威圧しすぎたらしく、不良達が情けない声を上げる。

不良AとBが耐えきれず、逃げ出そうとしたその時


「ちょっと待て」


僕がストップをかける。

奴らはまるで犬のように僕の命令に従う。

僕は倒れている不良Cに視線を向ける。


(肩が外れちゃってる……ちょっとやりすぎたかな)


僕は倒れた不良Cの肩に手を置く。


(可哀想だし、治してあげるか……。

てか、作者(うさぎめい)に名前考えて貰えないから、不良ABCとか適当な仮名付けられてて可哀想だな)




【全能発動:治癒】




僕が心の中でそう唱える。


別に手から緑やら黄色やらの光が出たりはしない。

シャラランという効果音が鳴ることもない。

しかし不思議なことに、次第に男の外れた肩が元の位置に戻る。


「あれ……痛みが引いてきた?」


「気のせいだろ?」


僕は不良Cの外れていた肩を強く握り、彼は再び苦痛の声を上げる。

僕は、とにかくニマニマしている……


「これポイ捨てせずに家まで持って帰れよー」


そう言いながら僕は可哀想な不良を解放した。


「鬼みたいだったな……」

「いやアイツは悪魔だッ!!」

「恐くて漏らしちまったよ……」


不良達はシュンとしながら去った。


「お兄ちゃん?」


妹が不思議そうな表情で僕に話しかける。


「どうした?」


「いつからそんな事ができたの?」


「え……!?」


僕は驚愕した。


(治癒の現場を見られたから、ついに()()がバレたのか)


「さっきの……柔道?」


「あー合気道ね!」


「うん。」


「華のこと守るために友達から習ったんだよ!」


「……ありがとう」


「どういたしましてー!それよりせっかくだし一緒に帰ろう」


「うん。分かった。」




* * *




僕の両親は他界したが、見ての通りひとりではない。

僕には二つ下の妹が残っている。

名前は『長春 (はな)』、年齢は十四

もちろん本当の妹ではなく、拾ってくれた両親の子だ。

それでも僕の大事な妹なんだ……もう僕は家族を失いたくない……



「ファミリーメート寄ってこ」


「お兄ちゃんが行きたいなら……」



とは言っても、すでに華は大事なものを失っている。

両親の他界がちょっとショッキングでね───あれ以来、華は笑わなくなった。

僕には懐いてくれている、はずなんだけど笑ってはくれない。


「アイス美味いな!」


僕はコンビニで買ったアイスを食べながら言う。

僕の食べていたアイスは、上半分が青色のソーダ味、下半分が赤色のコーラ味の少し変わった味だった。


「冷たくて美味しいね。」


「もう夏だねぇー、すっかり暑いや」


「え……もう秋?だよ?」


妹は終始無表情だが、こういった軽いツッコミは入れてくれる。


「あぁーーッ!」


溶けた。

僕のアイスが。


「私の食べる?」


「大丈夫!まだコーラ味が残ってるから」


上に乗ったソーダの青色の部分のみが溶け落ち、コーラの赤色の部分のみが残っていた。


数分後

ゴミ箱にアイスのゴミを捨て、『さぁ帰るか』と張り切る。


「最近女の人が襲われてるみたいね」


「らしいわね。ほんと物騒だわ」


通りすがりの主婦の方々が話している。

僕はその会話を注意深く聞いている。


華が何やら心配そうな表情で僕を見つめている。

僕はその視線に気づき、はにかんだ笑顔を華に向ける。


「暗くなる前に帰ろっか」


「うん。」




* * *




僕たちはアパートの一〇九号室に入る。

なんの変哲もない普通の部屋、ここが僕らの家だ。


「今ご飯作るから待っててね」


「今日はお兄ちゃんが作ってあげましょう!」


華が目をパチパチさせながら僕に目を向ける。


「お兄ちゃん、お料理できたの?」


(おっとしまった……作れない

能力を使えば簡単なんだけどね)


「なら一緒に作ろう!」


「でも……」


でも申し訳ない。

内向的な妹は、そう言いたいのだろう


()()、なんだ?兄の料理は不味くて食べれないか?」


僕はニヤニヤしながら言う。


「それは違うよ……!」


「なら大丈夫だね。家族なんだからさ、たまには手伝いくらいさせてくれよ」


僕は自分にできる笑顔の中で、一番温かい笑顔を華に向ける。

華は可愛らしい目をほんの少しだけウルッとさせ、「うん。」と(うなず)く。


華に教えてもらいながら一緒にニンジンを洗う。

僕が丁寧にニンジンを洗っている間に、華は(たな)の中から鍋を出した。


華に教えてもらいながら一緒にニンジンを切る。

僕が慎重にニンジンを切っている間に、華はだし調味料と味噌を用意した。


「できたー!!」


「まだ野菜切っただけだよ」


野菜を切り終えた僕は『やり遂げたぞ』と言いたげな気抜けした表情を浮かべる。

華は、少し微笑んでいるように見えた。


華が鍋に水を入れる。

そしてそこに、だし調味料と、切った揚げと豆腐を入れる。


「えっ!いつの間に豆腐とか切ったの?」


「お兄ちゃんが頑張ってニンジンさん切ってる間に……」


「ニンジンさん?」


「……なんでもない」


(珍しく照れちゃって……今日の華は表情豊かですなー……。

少しずつでいいから、あったかい表情を増やしていけたら良いな)


鍋の中に、僕が切ったニンジンさん達を投入する。

華はガスコンロの火をかけ、コトコトと鍋の中身を煮込む。


「いい匂いがしてきた」


「そうだね。」


(ありゃりゃ、華の表情がまた硬くなってしまった)


華が、煮込んだ汁に味噌を溶かし、味噌汁が完成した。


ふたりで協力して料理をしたのだ。

兄妹で共同作業をするのは、いつぶりのことだろうか。

もしかすると、最初で最後なのかもしれない。


「よし今度こそ完成だーッ!!」


「……これで一品目」


僕は苦い表情をこぼす。

華はそれを見て、心配そうな表情を浮かべる。


「あとは私が作ろうか?」


「ごめん、一緒に作ろって言ったのに」


「助かったよ……ありがとう。」


ありがとう、いつも華が無表情で放っている言葉だ。

でもなぜだか今日の僕は、その言葉をとても温かく感じた。


「皿洗いは任せなさい!」


「自分でできるよ。」


「僕にも手伝わせてよー」


「なら一枚だけお願い。」


「たったの一枚ぃぃーッ!?そんなに仕事取られたくないのか」


「うん。」


「お兄ちゃん悲しいよ……」



これが僕達の日常だ。

僕の命に代えても守り抜くと誓った日常だ。




* * *




「───お兄ちゃん」


華の幸せそうな、しかし今にも光の消えそうな瞳が、俺を見つめていた。


「今までずっと……ありが───」


赤黒い液体が、視界を覆った。



作者「ポイントくださーい!!」


心夜「ポイントって何?」


作者「初心者だから知らんけど欲しいーッ!!」


心夜「よく分かんないけど★5にしといた」


作者「てか君作中でもちょっと思ったけど、作者に干渉してこないでくれる?」


心夜「いや、あんたが自分で書いてんだろ……」



次回

Ep.2【星に代わって、おしおきだ!】

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