プロローグ
──十六年前──
雨が降る冷たい夜だった。
路地裏に一つの段ボールが、ポツンと置かれている。
その中には、産まれて一月も経っていないような、小さな赤子が入っていた。
まるで捨て猫のように。
黒い髪と瞳をしていた。
赤子は小さい体から、力いっぱい声を振り絞って泣いていた。
寒いよ、怖いよ、助けてよと訴えかけるように、泣いていた。
しばらくして一人の男が現れた。
赤子の泣き声が届いたらしい。
傘を差したまま、男はその場に立ち尽くしていた。
彼はしばらく黙って赤子を見つめると、静かに膝をついた。
「可哀想に……もう大丈夫だ」と、男は温かい声で語りかけた。
「お前は僕の家族だ」
男の言葉に反応し、赤子は男の目をジッと見つめた。
次の瞬間、不可解な現象が起きた……
淡い青色の光が、ふわりと二人を包み込んだのだ!
その光は、どこからともなく現れた。
光は男には見えていないようだった。
しかし赤子は、その光に小さな瞳を向けた。
泣き声は止み、ただ静かに光を見つめていたのだ。
男の胸に抱かれた赤子の髪が、ゆっくりと青く染まっていく。
瞳も青い輝きを宿した。
赤子は、安心したように眠りにつく。
* * *
とある学校がある。
校門から、一斉に生徒が溢れ出てくる。
世の学生達は下校の時間らしい。
ほとんどの生徒が学校から出た頃、一人の青年が現れた。
青い髪の青年だった。
青年がゆっくりと瞼を開く……
これが僕だ