~第4幕~
「まず初めに前提があります」
「前提?」
「普段はこんなに喋りません。そこをまず理解して下さい」
「ふうん、今日は普通に喋られるのね?」
「夢を確信しているから。先輩、1つお尋ねしていいですか?」
「どうぞ」
「先輩は小学3年生の頃にここ吉島に引っ越されてきましたね?」
「うん、何で知っているの?」
「夢でみていたからです。それから先輩は尾道出身ですね?」
「そう、誰かから聞いたの?」
「いえ、夢でみたのです。そしてここから未来のお話をさせて頂きます」
20年前の彼女はまだ半信半疑だ。それでも俺は本題に入った。
「今年の10月、尾道出身のロックバンドがブレイクします。ポルノグラフティというバンドです。ボーカルはアキヒトさん、ギターのハルイチさん、ベースのシラタマさんの3人組です」
「へぇ~知らないなぁ。私はスマップが好きだよ?」
「あの、1つお願いしてもいいですか?」
「はい?」
「今から僕が言う事をどこかにメモしてください。本当に当たるから」
「すごいね! すごい自信だね!」
彼女はアハハと笑ってみせると、俺の言ったとおりにメモとシャーペンをとりだした。そして「えっと、何? ゴルゴプラスチック?」と聞いてきた。
知らないのだ。彼女はポルノグラフィティを知らない。
俺は改めてポルノグラフティを紹介した。「アポロ」という楽曲でブレイクしたこと、その後に「サウダージ」という曲がヒットすることも。そして彼女が後に彼らのことを気に入ることも。
「この予言が当たったら、もっと信じて欲しい事があります」
「まだあるの? 君はノストラダムスの生まれ変わりかな?」
「違います。ちなみに彼のその預言は外れます。今年の7月は何も起きません」
「そう、それは何よりだね! それで君の予言の真打ちっていうのは何?」
「貴女はこのまま頑張っていけば、広島大学に入学します。そこでパートナーと知り合います。ただそのパートナーにアメリカ人を選ばないで欲しい」
「へっ?」
「あの、これもメモに書いて貰っていいですか?」
「あ、うん、わかった。アメリカで何かあるの?」
「アメリカで銃乱射事件がよく起きるようになります。今よりも」
「そうなんだ……それで私がそこに巻き込まれると?」
「はい、それがニュースにもなります。だからアメリカ人以外を選んで欲しい」
彼女は紅茶を一口飲む。そして「じゃあどの国の人を選んだらいい?」と聞く。
彼女の楽しそうな笑顔はやはり半信半疑のままだ。ポルノグラフティの事だけ適中しても信じ込んではくれないだろう。俺は考えに考えた。
「僕にそれがどうとは言えないですが……海外は少なくとも日本より危ないです。今から2年後、9月11日にアメリカで悲惨なテロが起きます。飛行機を使った。イスラム教の過激主義組織によるものです。それから時が経って、そういうテロ組織による襲撃テロが欧米で多く生じたりもします。テロ組織が国を興そうともする。イラク……シリア……そのあたりで」
「何だか恐いね。じゃあ日本人と結婚したほうが無難なのかな」
「それが1番安泰かもしれません。海外にいくことを何も全て否定はしませんが」
彼女は書き記したメモを眺める。それから呟くように話した。
「恐怖の大王、それがもし存在するなら再来年の9月11日に出てくるのかな」
「そうですね……そうかもしれません……」
「アメリカが必ずしも正義って訳じゃないのかもしれないね。私もまだまだ勉強不足だから偉そうには言えないけど。ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「はい」
「あなたの予知夢でみえた世界で戦争はまだ続いているの?」
俺は頷いた。彼女は「そう」と言ってどこか遠くを眺める――
「僕からは以上です。今日は話を聞いて貰って、ありがとうございました」
「ううん、せっかくだからコレを貰っていって」
彼女はそう言ってチョコ菓子のルックを俺に渡した。
懐かしい99年式の仕様だ。
「ありがとうございます」
俺は御礼を言って頭を下げた後に生徒会室を出た――
学校からの帰り道、大人になった彼女と話した。思いのほか彼女は俺を労ってくれた。このあと、俺と彼女が友人となって親睦を深める展開になるのか、それとも「変な奴」とみられて二度と会うことがないのか。どんな未来になろうとも、俺はこの日この時だけは何だかもの凄く気持ちが良かった――
∀・)いや、実際玲さんは戸惑っているでしょうけどね(笑)「ゴルゴプラスティック」でトレンド急上昇を狙います(笑)また次号!!