~第3幕~
俺は夜空に浮いていた。何だ? コレ? ピーターパンか何かになったのか? しかし見覚えのあるマンションとその屋上が見えた時に俺はハッとした。
「あれは……俺?」
マンションの高層階から虚ろな目をした男が独り両手を広げていた。
「待て!! やめろっ!!!」
俺の叫びも虚しく彼は飛び降り自殺を敢行した。
その瞬間に俺は目を覚ました。息が切れて汗をタラタラ流していた。スマホが振動している。高木玲からの電話だ。
俺は焦るようにして電話にでた。
「もしもし!? いまとんでもない夢をみたぞ!?」
『おはよう。そう、見たのね? さっきの映像は夢じゃないよ。2019年、4月19日の日付が変わるその時に君は実家マンションで飛び降り自殺をした』
「えっ……そんな……」
『本当よ。だから今こんなところに来ているの』
「俺がそんな事をして喜ぶ人間なんかいない!! 悟だって浮かばれない!!」
『あなたはあの夜、実家で母親と喧嘩した。フリーターからの転職を強く厳しく言われたのに対して激昂したの……でも貴方がそうやって自殺しようとしたのはきっと愛している人を追ったからだと想う』
「愛している人?」
『迷っている暇はないよ! ミッションの成功に集中しなさい!』
「そんな……でも俺は……」
戸惑う俺に鼓膜へ揺らす彼女の怒りが飛んできた。
『お前は死にたいのか!!!!!』
その言葉は胸にまで響いた。
死にたい訳がない。死にたくて死ぬ訳がない。
俺は愛している存在を失いたくなかっただけだ。
そう思えた時に俺は「死にたくない! 教えてくれ! 俺はどうしたらいい! アンタは何者だ! 全部教えろ!!!」と大声で応答していた。
「どうしたの? こんな朝早くに?」
眠たそうなおふくろがゆっくりとドアを開けて、部屋を覗きにやってきた。
俺は「夢みていたみたい。あはは。ごめんね」とごまかした。
その日は通学する前に玲さんとミッションの遂行に向けてしっかりとした打ち合わせをおこなった。彼女の出自もしっかりと聞いた。
俺の妻になる女の名前は長谷川美佳。玲さんはその彼女の親友らしい。そして俺と悟のコンビにも大いに関わってく存在になるのだとか。何とも信じられないような話だ。でも俺は俺が自殺する未来を目撃しているので、気が気でないまま疑うことなんかしなかった。
そしてミッションの始めはその玲さんの未来を救う為のものだ――
俺はその日の学校を卒なくこなして、放課後にある部屋の前に立つ。1年生の時に陸上部の退部届を提出した忌まわしき思い出の地。
「すいません! 失礼します!」
俺はドアをノックして当時出せないような大きめな声をだした。心なしか緊張しているようだ。それも仕方ないことだろう。
「はい?」
背の高い女子がでてきた。俺は緊張したまま用件を話す……
「えっと……生徒会の……生徒会……生徒会長の高木玲さんはいますか?」
「私がそうですけど?」
「え? あなたが!?」
「はい……何ですか?」
「あの…………」
言葉が出てこない。しかし冷静に進めなければと思って、それに務めた。
「あの、ちょっとだけでもお話できませんか?」
「え? 何の話を?」
「大事な話です。凄く大事な話」
ここでスマホが振動した。未来の高木玲は我慢ができなかったのだろう。だが中学生の高木玲は「いまちょうど私しかいないから、少しだけなら……」と俺を生徒会室へ通した。そこでスマホの振動は止まった。俺だってやればできるだろ。ばーか。
フカフカのソファーに座らせて貰って、ご丁寧に香ばしい紅茶を入れて貰った。
俺はゆっくりと味合うようにして紅茶を啜る。
「それで? 大事なお話と言うのは?」
「はい、あの、高木先輩は外国がお好きなのですか?」
「え? 憧れているって言えば、憧れているけど……」
「あの……僕は最近予知夢をみるようになったのです」
「予知夢?」
「はい、予言のようなものです」
「へぇ~おもしろいね~」
「聞いてくれますか?」
「うん、いいけど、馬鹿げていると思ったら速攻で追い出すよ?」
「わかりました。こっちには“確信”があります」
「ふうん、おもしろいね。じゃあ早速どんな夢をみたのか教えて貰えますか?」
未来からやってきた俺と過去の彼女の一騎打ちがこうして始まった――
∀・)お気づきの人はお気づきだと思うんですが、本作は拙作「放課後HEROES」から着想を得て生まれた作品でございます。ただその物語は“別次元”のものになることをご了承ください。また次週☆彡