~第1幕~
スマホのアラームが鳴る。
寝ぼけている俺はそれを手に取った。可笑しいなぁ。今日は休みだからセットなんてしてない筈なのに。
スマホを手に取った俺は驚いた。スマホが震えているのはアラームに反応しているからでない。電話が掛かってきているからだ。
そして起き上がった俺はさらに驚く。
俺が寝ていたのは敷布団の上でなくベッドの上。狭い部屋に見覚えある光景はまさに俺が20年前住んでいた実家の自室だ。
え? 待て? だとしたらこのスマホは何だ? 1999年にこんなハイテクな物なんてなかったぞ!? 俺は恐る恐る電話にでた。
「もしもし……」
『もしもし。やぁ、お目覚め? 伊達賢一君』
女の声。聞き覚えがないが、何となく俺と同じ30代ぐらいの女か?
「あの、今朝起きたら変なことが起きていて……」
『だよね? ビックリするよね?』
「え? これがどういうことなのか知っているのですか!?」
『私は高木玲。君が吉島中学2年生の時に生徒会長をやっていた者よ。御察しのとおり、君は今、20年前にタイムスリップしている』
え? 何かすげぇ話についていけない……。
『このスマホは当時存在しなかった物。従って君が持っていても誰にも見えない。君が携帯電話をかける振りをしているとか見えないだろうねぇ』
「あの、これは夢の中か何かですか?」
『ん~ある意味そうかも? でも、君と私は現実を変えるチャンスを手にした』
「現実を変えるチャンス?」
『そう、アタックチャ~ンス!』
「ふざけないで下さいよ! まるでバックトゥザフューチャーじゃないですか!」
『お~私は好きよ? 2が特に面白かったなぁ』
「そうですよね、いや、そうじゃなくて! 何の目的で僕はここに来たの!?」
『君自身を救う為だよ』
「え?」
『君、漫才やっているのだってね?』
「あ、はい。アマチュアですけども」
『その相方君が交通事故で死んだね。何で死んだか知っている?』
「仕事で……配達中に……」
『何の仕事よ?』
「ピザ屋の配達」
「じゃあそれを止めさせればイイ!」
「えっ!? どういうことです!?」
そのタイミングで「朝ご飯できたよー!!」って言う声が聴こえた。
心の準備もなく俺のミッションが始まる。不安が渦巻く俺は20年振りに吉島中学校の制服を着た。
鏡に映る幼い自分の顔は引きつっていた――
通学前の俺、机を挟んで朝食のパンをモグモグと食べる親父、炊事場で忙しく動くおふくろ。みんな1日のはじまりは寡黙だ。それが俺には助かった。
親父が手にしている新聞をみる。今日は4月19日の月曜日。
なるほど。20年前とリンクしているのか……。
「思いつめた顔してどうしたの?」
「え?」
「眠たいからか」
「あ、うん、あはは」
20年前の母の温かい声に照れ笑いをした。
何だか懐かしいな。そんな気持ちでいっぱいになりながら、玄関を出た。
そこでポケットに入れていたスマホが鳴った――
∀・)いわゆるチュートリアルな話でした。賢一からしてみれば異空間に飛ばされて戸惑い溢れるって話なんでしょうが……また次号でお会いしましょう☆彡