魔導騎士リュンダス
「ライル!」
「なーに、母さん」
「父さんにお弁当を届けて欲しいのだけど」
「え〜、これからミック達と街に行く予定なんだけど」とライルは頬を膨らせる。
「良いのかしら。今日朝の電話で王国軍のシップが来ているとお父さんが言っていたわよ」
「えっ!ほんと!行くっ!いくよ」と慌てて上着を着ると玄関に急ぐ。
「はい、これ」と弁当を渡す。
「じゃあ、言ってくる」とライルは勢いよく玄関から飛び出す。
「気をつけるのよ」と母は言うがライルは聞いていない。
ライルは2輪の小型魔導モビリティに乗ると全速で父が務める魔導兵器研究所へと急ぐ。
研究所の門に着くと、
「おっ、ライルか今日はなんだ?」と警備のおじちゃん。
「うん、今日は父さんに弁当」と弁当を掲げて見せる。
「そうか、お前の父さんも今日の引き渡しが済めば帰れるな。おっとこれは機密事項だったか?」と片目を瞑る。
「確かシップが来てるって」
「ああ、内緒だが王国軍のシップが来ている」と声を潜める。
「見れるかな?」
「どうだろうな。そういえばテストライダーのウッズが誉めていたぞ」
「ウッズさんが!?」
「そうだ、何でもシュミレーターで良い成績を出したそうじゃないか」
「たまたまだよ」とライルは照れる。
「ほら、行け。場所はわかるな。余計なところには入るなよ」
「うん、分かった!」とライルは元気良く答えて中に入る。3つ並ぶ研究棟の1つに着くと慣れた廊下を歩き、父の居る研究室に着く。
「父さん」とドアを開けて中に入る。
「おお、ライルか。何だ弁当を持って来てくれたのか」と笑顔でいい。ライルの頭を撫でる。
「あっ!そうだ!シップが来てるんだって?」
「そうだ。ほれ見てみろ」と窓を開けると遠くに王国軍新型ライドアーマーキャリアシップが駐機場に停まっている。
「凄い!見た事無いシップだね」
「ああ、新型らしいな」
「そうなんだ」
「特務大尉あれです」と指を刺す。特務大尉と言われた男は魔導スコープを覗いて確認する。
「うむ、間違い無いな。しかし鹵獲は難しいな」
「はい、忍び込むにはリスクが高過ぎます」
「3機あるな。2機は外に出ているが1機はあの中か。シップも新型だな」
「はい、どうしますか?」
「強襲しよう。シップに連絡してマギライドアーマーを降下させる」
「はっ」
「こちら隠密強襲艦レドル。ああ、大尉。では新型機は確認出来たと・・、はい、分かりました」と通信を切る。
「これから敵の研究施設に強襲を掛ける。アーマーを3機、目標に降下させる。目標は送られてきたな・・。よしっ準備急がせろ。装備は標準装備だ・・」しばらくすると、
「準備完了しました。いつでも行けます」
「アーマーを射出しろ」
「アーマー射出します」
「ほう、やるなミンガスの奴」マギライドアーマー3機は音も無く目標地点に着陸。特務大尉を含めた3人はアーマーに乗り込む。
「準備は良いか」
『はい、こちらランドル。準備完了です』
『こちら、マイルズ。いつでも行けます』
「シップの士官どもが入った建物はわかるか?」
『はい、中央の1番大きな建物のこちらから見て右の建物です』とマイルズ。
「よし、その建物に3機で中級魔法陣魔法で攻撃する。慌てるな、合わせろよ」
ドーンと言う音がして建物が揺れる。
「何だ。ライル机の下に隠れろ!」と言うとサイレンが鳴る。
ウーウーとサイレンが鳴り退避のアナウンスが流れる。
「こっちだライル。急げ」
「待って父さん!」と父を追いかけるが目の前の天井が爆発音と共に崩れて父が飲み込まれる。
「父さーん!」と手を伸ばそうとしたところに爆風が起きて飛ばされる。そこは外壁が崩れた倉庫の中だ。運良くカバーの布地に着地して怪我はなし。
起き上がり辺りを見渡すと目の前には大きなキャリアーがあり、上にはカバーを掛けられたマギライドアーマーが乗せられている。
周りをみるが誰もいない。外では爆発が続いている。
ライルはキャリアーを登り、カバーを外す。見た事無い機体だが操縦席の場所はわかる。
操縦席のカバー近くを弄るとカバーが開く。
「動くか?」とライルは操縦席に座る。カバーが自動で締まり。操縦席内に明かりが灯る。
「うん、大分違うけど基本は同じだよね」と起動レバーを倒して起動させる。すると前面モニターに表示。
“MBー089ー03“とそして“RYUNDAS“表示されて、
「リュンダス?」
《起動シークエンスを開始。搭乗者を確認。シンクロを開始・・・シンクロ率80%。シンクロ補助システム稼働・・・確認・・・シンクロ率94%。各種兵装確認・・・背面装備なし・・・基本装備を確認。周囲魔導防御層を展開・・・展開率65%・・・85%・・・92%・・・100%。防御層が展開されました。展開可能時間は1時間》
ピッピッ、《準備完了》。ピッピッ《準備完了》と点滅する。
『大尉!見つけました!3機目です』
『ランドル。そちらは任せたぞ』おお、話の分かる大尉だ。これで俺も運が向いてきた。こいつを破壊すれば俺も中尉に昇進だ。とライドアーマーの右腕を倉庫の中で横になっている敵アーマーに向ける。
前腕部に装備されたバレットを発射。人間が放つことができるバレットの100倍の質量を持ったバレットが敵のアーマーを襲う。
ガガガガと敵アーマーに当たり火花が散る。
「やったか?」と敵アーマーを見るとなんと起きあがろうとしている。
「無傷だと!こいつは他の奴とは違うのか!」と更にバレットを連射する。
ガガガガガと敵の攻撃が当たり振動が来る。
「あああ!」とライルはパニックになるが表示には損害なしと表示される。ライルはシュミレーションを思い出して機体を操作。機体は問題なく起き上がる。そこに更に敵の攻撃。
これも損害なし。
「えっと武器は・・これか!」レバーのボタンを操作して兵装を選択。使用をレバーから伝えて機体を操作。ペダルを踏み込み機体が敵アーマーの懐に飛び込む。そこで兵装を使用。
機体は腰部にある兵装を手に握ると抜刀。魔力の刃が迸り敵のアーマーを横に切断。魔力リアクターを破壊して爆発。
「ランドル!」マイルズはランドルの機体が破壊されると反射的に機体を操作して敵のアーマーへと近づく。
「迂闊だぞ!」と大尉は叫ぶが敵の機体とマイルズの機体が交差。マイルズの機体に赤い魔力の刃が背中に生える。
「マイルズ!」と言いながら大尉は機体を操作して敵アーマーへとバレットを撃ち込むが確実に着弾しているのにも関わらず敵は無傷。こちらに向かってくる。
敵アーマーは先ほどマイルズの機体を倒した魔導兵装を振り抜く。大尉は辛うじて躱すが肩部を掠る。
ブバァァと熱により肩部が溶解。不利を悟った大尉は機体を操作して自艦へと撤退する。
「艦長!大尉から連絡です!ランドルとマイルズのザマズがヤられました。大尉はこちらに帰投中です」
「2機もか」
敵シップは研究所上空に姿を現し、アーマーを回収したら魔法砲撃を連射して去って行く。
「被害は?」
「殆どの研究施設が最後の敵シップの砲撃で破壊されました。街の方にも被害が出ています」
「流れ弾か。生き残りは?」
「10人程かと」
「新型機は?」
「3機中、2機が破壊されました1機が起動して敵を撃退しました。新型機の追加兵装は4機のみ破壊されず残りましたが部品がありません」
「そうか、王国のシップは?」
「被害はありませんでしたが殆どの士官とライダーを失っています」
「うん?新型機に乗っているライダーは誰だ?」
「リスカ研究主任の息子さんです」
「そうか。リスカ研究主任は?」
「死亡が確認されています」
「そうか」と研究所副所長は目を瞑る。
「えっ!私がですか?」
「そうです。あなたが現在、生き残っている士官の中での最高位です」
「私は技官ですよ」
「それは分かっていますが規定ではあなたが艦長となります。それに上級オペレーターも全員亡くなっていますし残りは全て新人ばかりです。問題ありません」
はぁ、とマリアナ整備主任は溜息を吐く。
「坊主!こっちも荷物とこっちもシップに運び込んでくれ!」と研究所の整備長がライルに指示を出す。
『分かりました』とライルはアーマーを操作してアーマーの部品や装備をシップに運んで行く。
「よし坊主!もういいぞ。そこの駐機帯に機体を停めてくれ。
ライルは機体を操作して駐機姿勢を取ると機体をオフにする。ハッチを開けるとジメジメとした空気が入り込んでくる。
機体を降りると、
「坊主には悪いがシップで待機だ。直に住民も来る。待っててくれ」と行って缶の飲み物を投げて寄越す。慌ててキャッチする。
溜め息を吐いてエレベーターで上階へと上がる。そこは待機所となっており椅子に座る。
どうしてこうなった?父は?ああ、死んでしまった。ライルの頬を涙が伝う。
1時間経つとガヤガヤとエレベーター付近が騒がしくなる。住民が乗り込んで来たようだ。シップの中の大きな会議室にみんなを押し込まれているようだ。怪我人は救護ルームにいるようだ。
「兄さん!」と声を掛けてくるのは弟のノルン。
「無事だったか!母さんは?」ノルンは俯き、
「怪我をして意識が無いんだ。今は救護ルームにいるよ。父さんは?」
「建物の倒壊に巻き込まれて死んだよ」とライルは告げる。
「そんな」
ライルはノルンの肩を叩き、母親がいる救護ルームに行く。
「母さん」と包帯を頭に撒かれた母親の手を取り呟く。そこに、
「ライル君はいるかしら」と、知らない王国軍士官がライルを探す。
「はい」と手を挙げると士官は近づいてくる。
「少し、話がしたいのだけど良いかしら」と前を歩いて行く。ライルはついて行き部屋に入る。椅子に座ると、
「私はマリアナよ。本当は整備主任なんだけど士官が死んでしまって、私が艦長代理なの。それでね、住民を受け入れてくれる。トルガナ伯爵領に行くまであなたが新型機のライダーをして貰いたいのよ」
「他にはいないのですか?」
「居ないわ。研究所のテストライダーも含めて全員死亡よ」
「確か他にアーマーのシュミレーションを受けた人がいたと思いますが」
「いるんだけどね。機密の問題もあってね。研究所の主任研究員の息子さんであるあなたならと声をかけているのよ。それに1度乗っているしね」
「そうですか。伯爵領までですね。分かりました」
「お願いするわ」と言うと、ピーピーと鳴る。
「何かしら?」と通信機に声をかける。
「敵です」
「分かったわ直ぐいく」と通話を切る。
「あなたは機体で待機よ」と言われてライルは格納庫に向かう。直ぐにシップは上昇して敵シップからの逃走を図るが距離を詰められる。
『ライルくん。用意は良い?』
『はい、行けます』
『坊主、今回装備している背面兵装はBパックだ。左肩部に魔導波動弾砲と右部には背面からサブマニュピュレーターにシールドを装備している。魔導波動弾は10発でシールドは魔力フィールド展開して自動防御するが30分しかもたねえ。弾もシールドも使い所を考えろよ』と整備長から連絡がある。
『射出シークエンスを始めるわよ』
「はい」
《射出シークエンス開始しました・・・3・2・1・射出》
「行きます!」
機体はウィンドフィールドに乗り風魔法で強制射出される。射出された機体は魔力フィールドの影響により空中を飛翔。魔導スラスターを噴かす。小さい振動が受けて機体が旋回。敵を正面に捉える。
『坊主!飛翔時間は3分だ。時間に気を付けろ』
「了解です」とライルは機体操作してレチクルに敵機体を収めるとトリガーを引く、それに連動して機体の左肩に装備された魔導波動弾が撃ち出される。
ダンッと音と振動があり魔導の弾丸が吐き出されて敵を襲う。敵機体は回避をしようとするが間に合わず直撃。
ズガァーンと敵の機体は爆散。
ライルは機体を操作して敵を探す。飛翔時間残り2分。
発見!スラスターで方向転換。敵もこちらに気づいてバレットを撃ってくるが瞬時にバレットの軌道が視界に表示されてそれに合わせて回避行動をとる。
上手く回避成功!強いGを受けながら旋回。前に敵を捉える。
トリガーを2回引く。
ダンッダンッと2回振動があり魔導の弾は敵に吸い込まれる。
やった!と思った時にドンっと振動。敵の攻撃を背面シールドが自動で防御。
「くっ!」ダイブして速度を増す。そして急旋回急上昇!スラスターを全開!
飛翔可能時間、あと30秒。
敵の背後に回り込んでトリガーを引く。敵は回避。もう1発!
ダンッと魔導弾が敵の機体の右腕を撃ち抜く。
敵は退避していく。
ライルはふぅと息を吐き帰投するために機体を操作する。
ライルの操作する機体は夕陽に照らされてシップに近づいていく。
スラスターを小刻みに操作。着艦姿勢をとる。誘導灯が光り機体を光に乗せる。
機体は着艦ルートに乗ると風魔法で機体を包み減速させる。そのまま機体の飛翔エネルギーは失われて着艦。
機体が着艦成功と表示させている。
ああ、生きて帰って来たんだなと安堵する。
お読み頂きありがとうございます。
ええとまぁ、こんな話です。マイナスも文字化けもロボは出て来ますが元々ロボがある世界ではありませんでした。ですがちょっと待てよ、初めからロボがある世界でも良いんじゃねとお約束を踏まえて息抜きに書いてみました。
如何でしたでしょうか?今の所は続きを書く予定はありませんが好評なら考えます。
少しでもおもしろいと思っていただけましたら、ブクマ、評価をお願いいたします!