ブルーライト依存症。お布団かくれんぼ。
怪談、ホラー、都市伝説に百物語。昔々の頃から、人々は夏の夜に涼を求めて、それらに手を伸ばす。
怖いモノ見たさ。その様なセカイを構成した映像を見たり、構築された文章を追うと少しばかり背筋が薄ら寒く感じるのは、何かしら寄り添っているのやも、
しれない。
かくれんぼの様に、じっとして息を殺して潜んでいれば、見つからないと思ってますね。いえいえ、音から判るのですよ。
この部屋に聴こえる音は。
コォォォォォォという、乾いた冷風を吐き出す音と。
ドクン、ドクンという、熱く命脈打つ音の2つなのです。
先ずはあなたの存在を、しっかりと確認を致しましたよ。よく視えています。ワタシに宿る力により、あなたの考えてる事も、手にとるようにわかります。
よろしくおねがいしますね。
ウェブサイトで手軽にどんな時間でも、読める様になり、ソレがすっかり習慣化している事に、危惧を持つべきなのです。他者からの苦言を、覚えておくべきなのです。
この部屋で聞いた事がありました。大きなヒトが言うのです。
『遅くまで起きてたら駄目でしょう、ゲームばっかりして、少しは本を読みなさい』
うるさいなぁちゃんと起きれるし。ゲームではない、課金もしていない、Wi-Fiにつないでいる、無料で読めるウェブサイトのコミックや小説だし。文字を読んでるのだから、本を読んでいるのだから。
イイじゃん。って、やり取りを、していましたね。
紙媒体ならば、灯りが必須アイテムでしたよ。電気スタンドなり、蛍光灯をつけてから、本を手に取るヒト達。真っ暗な部屋、布団の中、夜中に目が覚め続きが気になっても、明日にしよう。もしくは徹して読破をするのです。文字の世界とは、そんなに面白いのでしょうか。
その点、お手軽デジタル書籍は読みながら寝落ちをし、ハッと目が覚め、閉じたソレを手に取り、直ぐに続きを読むのはとても容易いのです。今迄、この部屋に住んだ、多くのヒトを見てきたワタシは、よく知っているのです。
コォォォォ。頭からすっぽり被るタオルケット越しに、静かに聴こえるエアコンの音。あなたは、少しばかり後悔をしています。設定温度を下げておくべきだったとね。
じっとり、ベタつく汗が滲み出てくる、タオルケットの中のセカイは、潜り込む者、自身の体温で湿度も温度も上がり、蒸し暑い空間に成り果てています。
そして、外の暗闇に対し、タオルケットの中は画面の灯りのおかげで、パァァァと明るい。今のところ……。今のところ。今のところですよ。
もうすぐバッテリーが切れる事を知らす、電池マークの赤い色が見えていますね。そう、充電をする為には、一度、そこから出なくてはならないのです。先程、クイ、と動かした時に、充電ケーブルのコンセントが、コトンと抜けているのです。
パッ。電源がおちた。即座に外の暗闇と同化をする、タオルケットの中のセカイ。
今、何時なのか知りたくなってますね。明るくなったら助かるって。常套なのです。ワレワレハ、朝日には弱い存在ですから。
パジャマ代わりのTシャツの胸元を掴んで引き上げ、顔を拭い汗を拭きました。動いちゃイケナイ、いけない。と思ってますね。
見つかっちゃうと。お布団の中にすっぽり、かくれてますね。どうして怖い話、夜中に読んじゃったのと、後悔していますね。
読んでしまったモノはどうしようもなく、あなたの妄想により、この部屋の闇を深く濃くしてしまったのもしかたなく、それによりワタシが目を覚まし、久方ぶりに、温かい食事を摂りたいと思ったのも、仕方がない事なのです。
フフフ、あなたはしっかりと隠れてますから、少しばかり遊んでみましょう、鬼の役はワタシが、お引き受け致します。
「もういいかい」
ドキドキドクンドクン、おやおや、ワタシの声が聴こえたみたいです。嬉しいですね。美味しそうなあなたとの、縁が結ばれましたよ。
飛んで跳ねて、痛いほど高まっている温かな音が聴こえます。あまり疲れさすとイケナイのです。血が沸き立つと肉が煮えた様になり、美味しくないのです。
カタカタ、ガタガタと震えて。カチカチと歯を鳴らし
「ま、まあ、だだ……よ、で、いい?そ、そう、よ、読んだの、に、書いてあった、もういいよっ、て。最初に言わなければ大丈夫、って。無言だと……、ど、同意と、みなされるっ ……、て」
お利口さんですね。今日読んだソレに記してありましたか。そんなに震えて、可哀想に。そうですよ。もういいよと、言わなければ、良いのです。そうですね。それで朝まで乗り切れば、とりあえずは助かります。
おやおや、そろそろ明るくなる時間に、なってきた様です。今宵はこれ迄にしておきましょう。空腹ですが仕方がありません。
フフフ。ワタシの声はあなたの脳裏に焼き付きました。心配なさらずとも、太陽の光が届かない場所であれば……、
ずーと、ずーと囁いてあげますからね。
あなたの脳裏に潜り込み、判りましたよ。
低く甘い男の声がお好きなのですね。かしこまりました。リクエストにお応え致しましょう。
なので、良い子にしてワタシを受け入れて下さい。あなたの可愛らしい声で、
「もういいよ」
と、最初に返してください。
前の娘は、返事をすることなく、三日三晩で飛び降りてしまいましたから。惜しいことをしました。
叩きつけられ、内臓は破裂し、ドクドクと流れ出る血潮と透き通った脳髄液、無様なポーズになった肢体、四方八方に飛び散る肉片、見える白い骨。
生臭いグチャグチャなミートは、食べない主義なのです。
柔らかな胸の中に、直接手を差し入れ、とろりと暖かく、ぬるりとまとわりつく脈打つソレを取りだし、ポトポトと滴り落ちるのも気にせず、そのまま頬張るのが最上級のご馳走なのです。残りは……。
ゆっくりと。コリコリ、味わい頂きます。
終