エリオット・イーストベルグ、またまたやらかしました。ついに修道院へ行く。
エリオット・イーストベルグ公爵は、整った男らしい顔。美しい銀の髪、綺麗な碧い瞳、鍛え抜かれた身体。仕事も教養も剣技も全て秀でた魅力的な男性である。
だから、異性に非常にモテた。
モテる事を良い事に結婚前は女性関係にだらしのないどうしようもない男性だった。
しかし、大恋愛の末、隣国の王女サリアと結婚した後は、己の行いを反省し、
良き夫なった。可愛い双子の子にも恵まれ、改心したはずなのだが…
昔馴染みの女性と浮気をして、討伐されて、おとなしく半年程は足に鉄球をつけられて、
屋敷に籠っていた。
やっと妻サリアに許されて、外出できるようになったのだ。
あまりの解放感に、友であるジオルド騎士団長を誘って、街の飲み屋で酒を飲むことにした。
黒髪で口髭を生やしたそれなりの男前であるジオルド・キルディアス公爵。
一応、彼は公爵なのだが、元々は伯爵家の次男であり、その騎士としての有能さを見込まれ、キルディアス公爵家に婿に入った、肩身の狭い人間なのだ。
ジオルドの義父は今、公爵位をジオルドに譲り渡したものの、引退をすればいいのに、国王の側近中の側近である宰相を務めており、実質上の領地経営はジオルドの妻イデランヌがやっていた。
義父も怖いし、妻も怖い。
しかし、ジオルドは有能な男であったので、王国騎士団長を務め、
それこそ、良き夫、可愛い娘の良き父親であったのである。
彼の間違いは友がエリオットであったという事。
ジオルド自身はエリオットを剣技の好敵手であり、友とまでは思ってはいないのだが、エリオットに友認定されてしまっている為に、仕方なく酒を共に飲むことにした。
安酒場の奥の席に対面で座り、酒を飲みながら愚痴をこぼす。
互いに恐妻家なので、こぼす愚痴は妻の事になる。
エリオットはジョッキのビールで喉を潤しながら、
「やっと屋敷での監禁生活から解放された。まったく、ちょっと浮気しただけじゃないか。」
「何がちょっとだ。怪我人続出であの後、大変だったんだぞ。」
エリオットの浮気を妻サリアが怒りまくったせいで、騎士団200名まで出動し、
逃亡を図るエリオットを討伐しようとしたのだが、エリオットが強すぎたために、騎士達に怪我人が続出したのだ。
ジオルドは摘みの豆を口に放り込んで。
「まぁ。お前の嫁さんは男勝りに剣技も出来て強いからな。元隣国の王女じゃ、肩身が狭い気持ちは解る。」
「そうだろう?たまには息抜きしたい気持ちわかってくれ。ジオルド。」
「かといって俺は浮気はしたいとは思わん。イデランヌは怖いからな。そして、義父はもっと怖い。そして娘は可愛い。5歳だぞ。もう、目に入れても痛くない位だ。」
「おおっ。リアーゼだったか?娘さん。俺もフェリクスとアイラと言う愛しい息子と娘がいるからな。3歳で可愛い盛りだ。」
「だったら、改心しろ。おっかない嫁さんはともかく、子供は可愛いだろう?」
「そりゃまぁ、最高に可愛いが。」
ジオルドはぐっとジョッキを傾け、ビールを一気に飲み干して。
「俺だって耐えて耐えて耐えぬいているんだぞ。イデランヌはいつも、わたくしが領地をしっかりと見ているお陰で、貴方はこうして安心して生活出来ているのです。感謝しなさい。
が口癖で。義父は義父で、王国騎士団長として、何事も模範であれって口煩くてな。」
「ああ、あの宰相。確かに口煩そうだからな。王宮勤めしてないでよかった。」
「そうそう、家でゆっくりとくつろげる場所がない。唯一の癒しが娘しかない。」
「解る解るぞ、ジオルド。俺だって、最近はいつも妻に睨まれてな。子供達と遊んでいる時が唯一の癒しだ。」
どうしようもない男達が酒を飲みながら、嫁や義父の愚痴をこぼしていると、
二人の綺麗な女性達が、近づいてきて。
「お兄さん達、一緒に飲んでいいかしら。」
エリオットが二人の女性に、持ち前の魅力的な笑顔を全開にして、
「どうぞどうぞ。野郎二人で、つまらないと思っていた所だ。」
「エリオット。女はまずいんじゃないのか?」
「いいじゃないか。酒を一緒に飲むくらい。さぁさぁ。」
それから後の事は曖昧だ。
盛り上がった女達と、近くの宿に入ったところまでは覚えている。
その時にジオルドが酔いつぶれていて、肩を貸して一緒に入った所も。
そして現在に至る。
朝日が眩しい。
ここはどこだったか??
ベットには素っ裸の状態で一人で寝そべっていて、
床には毛布にくるまったジオルドが寝ているようで。
そして、思った。
財布がない。服がない。あの女達に持っていかれたようだ。
自分は自業自得なんで、まだしも、ジオルドは非常にまずいのではないのか?
いや、まだしもだなんて言っている場合でもない。
朝帰りなんぞしたら、今度こそ、殺されるか離縁されるか、一生監禁生活になるか…
ろくでもない事になるだろう。
ベットから降りると、とりあえずジオルドを揺り起こすことにした。
「ジオルド。起きろ。寝ている場合ではない。」
「ん…何だ?まだ眠い…頭が痛い。」
寝ぼけていたジオルドがガバっと飛び起きた。
「いたたっ…ってここはどこだ??何故っ。俺は裸でいる?」
「それはだな。」
その時、扉がバンと開いた。
鎧兜姿のエリオットの妻サリアと、ドレス姿のジオルドの妻イデランヌが入ってきた。
二人とも凄い形相で、睨みつけてきて。
サリアが叫ぶ。
「まさか、お前達がこういう関係だったとはな。」
イデランヌは呆れたように。
「離縁して差し上げますわ。まさか、男と…。」
エリオットは慌てて、
「それは違う。ジオルドは酔いつぶれていただけだ。だから、宿に俺が肩を貸して連れ込んで、いやその…。一緒に入った女達に身ぐるみはがされたんだ。」
サリアがエリオットの顎に手をかけて、
「ほほう。その女達とお前はイチャイチャしていて、ジオルドは床に転がっていたという訳だな。」
ジオルドはイデランヌに向かって。
「俺は酔いつぶれていただけだっ。」
「騎士団長として緊張感が足りないですわね。これは父に言って、なんらかの処置を講じて頂かないと。こんな騎士団長では王国の未来が危ないですわ。」
絶体絶命だった。
ジオルドまで巻き込んでしまった。
エリオットはジオルドの妻に向かって、
「イデランヌ。申し訳ない。俺がジオルドを酔い潰してしまう程、飲ませた事に責任がある。どうか、ジオルドを許してやって欲しい。この通りだ。」
床に手をついて頭を下げる。
自分を許してくれって事で土下座なんてしたくはないが、迷惑をかけたジオルドの為ならば、土下座位なんともなかった。
イデランヌは両腕を組んで。
「離縁は考え直してあげましょう。でもそれなりの罰は必要かと。如何しましょう。サリア様。」
サリアは吐き捨てるように。
「しばらく二人とも修道院に送って、今日の行いを反省してもらうがよかろう。私は、離縁する事も頭に入れておるぞ。エリオット。今度ばかりは愛想が尽きた。」
「ああ、俺も自分自身に呆れている所だ。申し訳なかった。サリア。」
「謝罪も聞き飽きたわ。」
こうして、エリオットとジオルドは修道院へ送られる事となった。
二人が送られる北の修道院は、罪を犯した女性が送られる修道院なのだが、
ジオルドの義父のアレン・キルディアス宰相が作った修道院なのだ。
しかし、最低限の物資と金しか渡していないので、100名程の女性達は暮らしているのだが、
その暮らしは悲惨だと言う。
罪人に贅沢をさせてはいけない。
それがキルディアス宰相の方針だった。
今回は、男性なのだが、特別にエリオットとジオルドが送られる事となった。
宿に迎えに来た馬車に乗り込みながら、ジオルドがイデランヌに。
「俺は戻る事は出来るのだろうか?」
「さぁ。反省の手紙をわたくしに書きなさい。そうね。三日に一度でいいわ。
それによって、許すか許さないか考えますから。」
「必ず書く。リアーゼを頼むぞ。」
ジオルドが馬車に乗り込んだ後に、エリオットが馬車に乗ろうとしたら、サリアに声をかけられる。
「お前は私に言う事はないのか?」
「手紙が必要か?子供達はお前がいるから大丈夫だろう。」
「もう二度と帰ってくるなっーー。」
馬車に押し込められ、扉をバタンと閉められる。
正面の席に座るジオルドに睨まれて。
「お前、少しは反省しろ。」
「反省はしている…。」
「口だけだろう?本当に反省しているのか?でなければ、何度も浮気をしないとは思うが。」
「結婚してから、二度目だ。昨夜は今一、思い出せない。イチャイチャしたような気もするが…。」
ジオルドは呆れたようにため息をついて。
「それにしても北の修道院は悲惨な所だと言うぞ。パンはカビが生えていて、スープは野菜の切れ端が浮かんでいたら当たりというあり様だ。修道女達は皆、痩せ細っていて、フラフラしていると言う。どうする?」
「どうするって…。そうだな。まずは金がないと腹一杯に食えないって訳か。」
エリオットは両手に力を籠めて、念じれば金色の鳥が現れた。
それを馬車の窓の外へ、ふうっと吹いて飛ばす。
ジオルドが驚いたように、
「何だ?魔法か?」
「ちょっとした通信魔法だ。俺の遠縁に連絡した。」
「遠縁??」
しばらく馬車を走らせて、もう少しで北の修道院であろう所で、馬車を止めて貰い。
エリオットはジオルドに、
「ここで降りよう。」
「何故?」
「遠縁が来たようだ。」
その時、地面に魔法陣が現れて一人の金髪の少女が飛び出した。
「私を呼ぶなんて、何よ。あっーーー。エリオット、久しぶりー。」
「スーティリア。久しぶりだな。」
ジオルドは少女を見て驚いた。羊のような角を持ち、明らかに人間ではない。
エリオットがスーティリアを紹介する。
「ああ、俺には少し、魔族の血が流れているんだ。大した魔法は使えないが。
彼女はスーティリア。魔族だ。スーティリア。取引だ。
この北の森にいる闇竜を仕留めて来るから、剣を貸して欲しい。
仕留めたら、お前にも分け前をやろう。」
「ああ、この辺りは物騒だからね。ちょっと森の奥へ行けば、闇竜がいるらしいし。
いいよーー。私にも分け前くれるなら。」
「交渉成立。剣は二本で頼む。いい剣を貸してくれ。」
「じゃぁ魔剣の部類になるけど、エリオットとそちらのオジサンなら使えるでしょ。」
ジオルドが眉を寄せて。
「ジオルド・キルディアスだ。」
「ジオルドね。それじゃ剣を持ってくるからちょっと待ってて。」
スーティリアと呼ばれた少女は消えた。
ジオルドが不機嫌に。
「闇竜って勇者が倒す程のデカい竜の事だろう?俺達二人で大丈夫か?」
「何とかなるんじゃね?」
「あああ…お前、楽しんでいるだろう?絶対に楽しんでいるよな?」
「ああ、久しぶりに自由の身になったんだ。そりゃ楽しくて仕方がない。」
「エリオットっーーーー。あああ…お前と酒なんて飲むんじゃなかった。」
スーティリアが剣を持ってきてくれた。
真っ黒な剣で見るからに不気味な雰囲気が漂っている。それが二本だ。
明らかに血を吸った事のある剣だ。
ジオルドがその剣を手にして。
「何だかいやーな感じの剣だな。」
エリオットも剣を受け取り、
「そうか?いい剣だな。有難う。スーティリア。」
「それじゃ倒したら連絡頂戴。通信魔具渡しておくわ。鳥じゃ時間かかるし。」
「恩に着る。」
腕に通信魔具をエリオットは着けて、スーティリアと別れ二人は森の奥へと向かう。
森の奥から、ぬうっと闇竜が黒い姿を現した。
首長竜の一種で、狂暴である。
ジオルドが驚いたように、
「デカいな。倒せるか?」
「お前、囮になれ。」
「え?」
「ともかく、走れ。」
ジオルドは闇竜に向かって走り出す。
エリオットも共に走り出す。
闇竜がジオルドに向かって、口から衝撃波を発射する。
ジオルドが転がってよければ、地面に穴が開く。
エリオットは横に逸れて、闇竜に向かって飛び上がり、ズバンっと首に剣を叩きつけた。
グオオオオオオオッーーーーー。
痛かったのかのたうち回る闇竜。
今度はジオルドが、闇竜の首に攻撃を仕掛ける。
魔剣を叩きつければ、闇竜は怒ったように暴れ出した。
あっちこっちに衝撃波を放ち、地に穴が開く。
二人はそれを食らわないように逃げるのがやっとだ。
ジオルドが叫ぶ。
「マズイんじゃないのか?」
「くそっーーー。ここまで強いとはな。」
その時、声が聞こえた。
「眉間を狙え。動きを止める。」
地面から巨大なツルが飛び出して、闇竜に絡みつく。
闇竜は身悶えするが、動けなくなったようで。
エリオットは、闇竜の身体を駆け上がると、飛び上がり眉間に魔剣を突き刺した。
ギャアアアアアアアっーーーーー。
闇竜が悲鳴を上げる。
拘束していたツタが消えれば、ドドンと音がして闇竜が地に倒れた。
助けに来てくれた相手を見て見れば、討伐された時に自分を捕まえた破天荒の勇者ディオン皇太子がスーティリアと一緒に立っていて。
「スーティリアに頼まれてきた。」
「まさか、破天荒の勇者に助けて貰うとは。有難う。」
エリオットは礼を言う。
待てよ。この男って確か、サリアの初恋の男とか…。
サリアはこの男に浮気をしているのか?
ディオン皇太子はエリオットの表情に不信に思ったのか。
「何だ?何が言いたい。」
「お前はサリアの浮気男だろう?」
「冗談を言うな。愛しい妻のセシリアがいるのに、何故?浮気男という事になっているんだ?」
「何だ。違うのか?」
「当たり前だ。」
スーティリアがエリオットに耳打ちする。
「愛人はいるけどね。」
ディオン皇太子は背を向けて。
「俺は忙しい。スーティリア。送ってくれ。」
「はいな。ちょっと送ってから戻ってくるから。」
スーティリアはディオン皇太子と共に姿を消した。
ジオルドが、エリオットに。
「マディニア王国のディオン皇太子がまた助けてくれるとは…あの男は‥」
「何か知っているのか?」
「男の愛人がいるって聞いた事があるが…。まぁ、ともかく今回は助かったな。」
「確かに、これで飢える事もなくなる。闇竜の肉を土産に一部持っていって、後は金に換えて、必要な物を揃えよう。」
「そうだな。」
スーティリアが戻って来たので、闇竜の肉のほとんどを引き取って貰い、金に換えて、
肉の一部と、果物や野菜、菓子等を用意して貰い、二人は修道院を荷車を引きながら訪れたのであった。
修道院は、森の入り口にあり、壊れそうな建物に100名程の修道女達が暮らしていた。
エリオットとジオルドが修道院長を訪ねれば、中年のほっそりした女性が出て来て。
「お話は聞いております。ようこそ、北の修道院へ。」
エリオットは修道院長へ。
「土産を持って来たんだが。食い物だ。ここは食い物が貧しいと聞いた。
美味い物を皆にふるまってやってくれ。」
修道院長を外へ案内すれば、闇竜の肉や果物、菓子を荷車の上で見て、喜んで。
「皆、喜びますわ。有難うございます。さぁ、貴方達のお部屋でご案内いたしますわ。」
エリオットとジオルドの部屋は、修道院の端の部屋だ。
他の修道女と間違いが無いように、板で廊下が隔離されている。
中は粗末なベット2つと、机が一つ。
隙間風が入りまくりの寂しい部屋だった。
「ご案内有難う。」
礼を言うとエリオットとジオルドは、部屋で食事をとって、とりあえず寝ようと思ったが、
毛布一枚は寒すぎる。エリオットは毛布にくるまりながら、
「明日は布団を買いに行こう。」
同じく毛布にくるまってジオルドが眉を寄せ、
「買いに行こうってここは街は遠そうだぞ。」
「それじゃスーティリアに金を払って調達して貰おう。必要な物を。」
「魔族の親戚がいると便利だな。」
「今夜は疲れたな。そろそろ寝よう。おやすみ。ジオルド。」
「おやすみ。」
翌日エリオットは部屋で朝ご飯をすませて庭に出てみれば、修道女達が、
畑に向かう所に出くわした。
ただ、ここの辺りの土地は痩せていて、ろくな物が収穫出来ないとの事。
痩せこけた修道女の中に、懐かしい顔を発見した。
「マリアーヌ・セーシュレスティ?マリアーヌじゃないか。」
マリアーヌと呼ばれた修道女は、エリオットの方を見て、
「あら、懐かしいわね。エリオット。」
結婚前に付き合っていた女の一人であり、結婚後もしばらくエリオットに執着していた公爵令嬢である。
他の男性と仲良くする姿を夜会で見かけてはいたが、ここしばらく、顔を見ていなかったことを思い出す。
せっかくなので、立ち話をすることにした。
「お前、何でこんな所にいるんだ?」
「エリオットこそ。わたくしは、親しくしていた公爵令息を害した罪により、ここへ送られたのですわ。ただ、浮気をその男もしたので、頬を叩いただけでしたのに。何故か大事になってしまって。」
「それは災難だったな。俺はまぁ浮気が原因で、修道院で反省をするために送られてきたんだ。あそこにいるジオルドと共にな。」
「ああ、ジオルド様って確か騎士団長でしたわね。これはまぁ災難ですこと。どうせ貴方のせいで巻き込まれたんでしょうけれども。」
マリアーヌは楽し気に笑って。
エリオットもニンマリ笑い。
「よく解るな。まぁそういう事だ。せっかく会ったんだ。協力して欲しい事がある。」
「あら、何かしら。」
「優秀な修道女を何人か紹介してくれないか?お前だって嫌だろう?美味い物が食べられない生活は。」
「それは嫌よ。今だって、かびの生えたパンに薄いスープじゃ辛くて辛くて。」
「だったら、少しでもここの生活が良くなるように、頑張ろうぜ。勿論、ジオルドからも、宰相にもっと金を出せって手紙を書いて貰うつもりではいるが。」
「解ったわ。わたくしに出来る事なら協力するから。ああ、だから貴方は素敵なのよ。
貴方と結婚したかったわ。」
「悪いな…。サリアと結婚して。」
「まぁサリア様なら、社交界の華とも言われていますから、今なら納得致しますけれども。」
マリアーヌと別れて、再びジオルドと共に修道院長と会い、エリオットは提案する。
「いつも美味い物が食べられるようにしたい。
罪を犯したとは言え、これでは修道女達がかわいそうだ。」
修道院長も頷いて。
「確かに、食事だけはまともな物にしてあげたい。でも、キルディアス宰相がお金を出してくださらないのです。最低限生きていけるだけのお金しか。」
ジオルドが修道院長に、
「妻に手紙を書いて、もっとお金を出してもらえるよう、義父に働きかけて貰えるよう頼んでみますが、なんせ、俺もここへ反省の為に送られた身。叶えてもらえるかどうか。」
エリオットが提案する。
「そこでだ。パン焼き窯を作る村の職人を紹介してくれ。まずは美味いパンが焼ける窯を作りたい。そこで、パンが焼ければカビの生えたパンではない、焼き立てのパンが毎日食べれるだろう。修道女達に頼んで、交代でパンを焼いて貰う事にすればいいしな。
昨日、闇竜を倒しに行く時に気が付いたんだが、川には魚が沢山いる。網を仕掛けて、魚を獲るのもいいのではないか?
他にも森には豚に似た食べると美味い魔物が生息している。それを罠を仕掛けて獲って食べるようにするのもいいだろう。森になっている植物や果物だって食べられる物があるようだ。それを収穫して食卓に添えるのもいいのではないのか。
この修道院は貴族の令嬢達が集まっている修道院なのだろう?
そういう貴族の女性達は嗜みから、ハンカチに美しい刺繍をすることが出来たりするはずだ。
その刺繍入りのハンカチを、街へ出る時に売るのもいいかもしれない。
畑の土が痩せているならば、土を改良してみるのもいいだろう。
ともかく、出来る事をして、ここの生活を良くしたい。修道院長どうだろう。」
修道院長は目を輝かせ。
「ああ、それは良いかもしれませんね。エリオット様とジオルド様が修道女達を導いて下さるのなら、可能かと存じます。どうかお願いできますか?」
「良かった。院長に賛成して貰えば、俺達は喜んで。」
ジオルドも頷いて。
「俺も、勿論。協力させて貰う。」
エリオットは考えている事を口にし、
「それから、修道女の中で優秀な者を何人か、リーダーにしたい。何をやるにも中心になって引っ張って行って貰える人物が必要だ。それはマリアーヌ・セーシュレスティ公爵令嬢に何人か見繕って貰えるよう頼んでいる。彼女は優秀だからな。付き合っていた俺が証明する。」
「まぁ、マリアーヌなら、適任かと。後、ここに送られてくる中にはどうしようもない令嬢も多いですわ。そういう令嬢は言う事を聞くかどうか。」
「それならば、働きによって食事に差をつければいい。部屋番号の札を見せて、食事を
取りに行くのだったな。」
「ええ。そうですわ。」
「仕事をさぼるような女達にはカビの生えたパンとスープで十分だ。働きがいい令嬢には美味い物を。文句を言うようなら、俺がビシっと言ってやる。」
修道院長に許可を貰ったので、エリオットはスーティリアを呼び出して、
お金と引き換えに布団やら、ランプやら魚や獲物を捕る網やら罠、色々と必要な物を調達して貰う。
そうこうしているうちに、マリアーヌに呼ばれて、部屋を出てみれば、2人の令嬢を紹介してくれた。
皆、学園でも頭が良く、優秀な令嬢達だ。ただ、ここへ送られてきたからには何か犯罪を犯してはいるのだが。
金髪碧眼のアイスリーヌ嬢は微笑んで。
「エリオット様とジオルド様。お久しぶりです。ミンゴット伯爵夫人だった、アイスリーヌですわ。」
「ああ、アイスリーヌ。修道院に送られたと言っていたが。」
「それはもう、仕方のない事。夫の愛人と刃物沙汰になったのですから。ただ、相手は死んではいませんけど。わたくしの方が怪我が酷かったんですのよ。」
マリアーヌはため息をついて。
「わたくしはただ夫を殴っただけですのに。妹がわたくしの事を邪魔だったみたいで。極秘にここへ送られたのですわ。」
アイスリーヌはマリアーヌを慰めるように。
「仕方ありませんわ。マリアーヌ様。」
「そうですわよ。」
と言ったのが、
メリアーテと呼ばれた黒髪碧眼の令嬢である。
「わたくしは大公様の側室の申し込みを断ったばかりに。」
「ええ?それは災難だな。」
マリアーヌが二人の令嬢の肩に両手を置いて。
「ともかく、エリオット様。このお二人は役に立ちます。どうかわたくし達を存分に使って下さいませ。」
「解った。頼もしい限りだ。」
午後には、近くの村に修道院長と共に行き、パンの窯を作ってくれる職人を紹介して貰い、
明日には窯を作って貰えることになった。
エリオットとジオルドは忙しかった。
修道院長とマリアーヌ達、そして協力的な修道女達と共に、出来上がったパン焼き窯でパンを焼いたり、設置した網で魚を、罠で獲物を捕り、それをさばいたり、食べられる食料を森で探したり、畑の土の改良に取り組んだり、一日中汗水垂らして働いた。
特にマリアーヌとアイスリーヌとメリアーテは、優秀で修道女達のリーダとなり、エリオットとジオルドを助けてよく働いてくれた。
ほとんどの修道女達が協力的だったが、10名程の修道女はまったく働かず、協力もしなかった。
だから、食事もカビの生えたパンとスープのままで。
食堂から、豚に似た獲物のステーキや豪勢なサラダ。サンドイッチ。ケーキまでデザートにつけたエリオットとジオルドがトレイを手にして、食事を持って行こうとするのを見て、怒り出した。
「ちょっと。どういうつもり?あたしたちと随分食事が違うじゃないーー。」
「そうよ。ずるいずるいっ。私達にも同じ食事を頂戴よ。」
文句をつけてきたのが、男爵令嬢のアリスと、伯爵令嬢のモリーヌ。
アリス男爵令嬢は、高位貴族達複数と関係を持ち、ファルト王太子の弟王子を誘惑し、卒業パーティで公爵令嬢と婚約破棄問題を起こして、国を乱したと言う罪で修道院に送られてきた令嬢だ。
モリーヌ伯爵令嬢は、姉のビスティアの婚約者にあることないこと吹き込んで、罪に陥れようとして、両親から見放されここへ送られてきた令嬢である。
エリオットは二人に向かって。
「働かざる者は食うな。俺達はお前達と違い、一日中働いている。
だから、デザートまでついているんだ。食いたければ働け。でなければ、一生、みじめな食事のままだ。」
仕事に協力している令嬢達は、トレイに美味しそうな食事を乗せて、その場を後にしていく。
アリスはエリオットにすり寄って。
「楽したいのよう。美味しい物を食べさせてくれるのなら、あたしぃ貴方の物になってもいいのよ。」
モリーヌはジオルドにすり寄り。
「私も。ねぇお願い。美味しい物を食べさせて。」
エリオットはアリスを振り払って。
「残念だな。俺は浮気がもとでここにいるんだ。今、反省中なんでな。」
ジオルドも、背を向けて。
「俺はまぁ巻き込まれてここにいるようなもんだが。酔い潰れた自分を呪いたい。
妻が怖いのでな。エリオット、部屋に行くぞ。」
二人は令嬢達を振り切り、部屋へ戻った。
ジオルドと共に食事をするエリオット。
ジオルドがため息をついて、
「何とか義父に掛け合って貰って、もっとここの修道女達の生活が楽になるように金をとお願いしている所だが、返事が来ない。」
「確かに修繕したい場所もあるし、金はいくらあっても足りない所だ。」
「それにしてもお前は何でも知っているな。魚のさばき方、肉のさばき方、食べられる草や果物の見分け方。何だ?どこか森の中で暮らした経験があったとか?」
エリオットは笑って。
「俺、10歳の頃まで、預けられていたんだ。父が幼い頃は経験する事が大事だって言う主義でな。今、それが役に立っている。」
「まぁそれで助かっているんだが、そうだ。お前もサリア殿に近況を知らせておいた方がいいぞ。」
「確かに、反省をするためにここへ来ているんだからな。」
エリオットは手紙を書くことにした。
妻サリアへ。
毎日、カビの生えた黒パンを食べ、薄いスープを飲みながら、神に祈って反省をしております。
フェリクスとアイラは元気にしているか?
もし、許してくれるのなら、早く帰りたいものだ。
その手紙を読んだサリアが猛烈に怒るとはエリオットは思いもよらなかった。
王都の屋敷で、執事からその手紙を受け取り読んだサリアは、真っ二つに手紙を破り捨てた。
「何がカビの生えたパンに薄いスープだっ。執事っ。エリオットは楽しく修道院で暮らしているらしいではないか。」
「はい。楽しくかどうかは解りませんが、修道女達を従えて、畑を肥えさせ作物を収穫し、パン焼き窯を設置し毎朝パンを焼き、罠を設けて魚や獲物を捕まえ、食料には不自由していないはずですが。修道女達からも慕われ、時には焼肉パーティを催しているとか。」
「あんの野郎。もし、帰ってきたくないと言い出したら?許さん。」
執事は口髭を撫でながら。
「わたくしはお坊ちゃま、いえ、旦那様には長く仕えておりますので、奥様が旦那様をお許しになるとおっしゃるのなら、旦那様を反省させて、こちらへ戻る気にさせるいい作戦がございます。」
「それはなんだ?」
「お子様達を1週間、あちらへ預けましょう。」
サリアは考えるように。
「エリオットは子供の面倒を見るのも上手い。困るとは思えないが。」
「困らせる事が目的ではありません。まぁ。泣いて戻りたいと旦那様、言いますから。
一週間預けてみては如何でしょう。」
「それならば、そうすることにするか。」
こうして、エリオットの元に3歳の、いやそろそろ4歳になろうとしている双子の息子フェリクスと、娘アイラが送られてくることになった。
罠だけではなく、今日は狩猟に出ていたエリオットが裏山から、獲物をジオルドと共に担いで戻ってみれば、部屋では修道院長と双子の息子と娘が待っていて。
フェリクスが、
「父上、お久しぶりでございます。」
ぺこっと挨拶をする。
アイラもぺこっと頭を下げて。
「母上が父上のところですごしなさいって。」
修道院長が、二人の面倒を見ていてくれたみたいで、
「サリア様より、一週間お預かりするようにと、置いていかれました。」
「サリアが?ああ、お前達に会えて俺は嬉しいぞ。」
子供達を抱き締める。
ジオルドがハンカチを手に涙して。
「俺も娘に会いたい。ああ、リアーゼは元気だろうか…」
ここに来て一月過ぎようとしていた。凄く可愛がっていた娘を思い出してジオルドは寂しいのであろう。
翌日から、エリオットは、ジオルドに協力をしてもらい、息子と娘を連れて、川の網に引っ掛かった魚を獲りに、修道女達と共に川へ行った。
危ないので、ジオルドの背にフェリクスを、自分の背にはアイラを背負って、網の中で魚が跳ね飛ぶ様子を子供達に見て貰う。
「わぁお魚っ。お魚っ。」
「きれいっ。きれいっ。」
子供達はおおはしゃぎだ。
魚獲りを見せた後は、森になる実をフェリクスとアイラに獲らせたり、
その場で食べたり、色々と見せて、子供達を喜ばせた。
ジオルドが、エリオットに。
「そう言えば、近隣の国境警備隊に、騎士団長だった俺に剣技の指導をという手紙が来たんだが。」
「行ってやればいいじゃないか。ただし、金を取れ。お前の労働力は貴重だ。俺と子供達も一緒に行ってやろう。」
「金か。確かに…今は金が少しでも欲しいからな。解った。一緒に行ってくれ。」
国境警備隊へ子供達を連れて行けば、子供達は警備隊の騎士を見て大喜びで。
騎士達に面倒を見て貰い、
エリオットとジオルドは、室内に入り、警備隊長に金の交渉をする。
「俺の浮気が原因で、修道院にいるから、金に困っている。剣技を見てやるのはいいが、その見返りが欲しい。」
「エリオットの言う通りだ。食べるのがやっとの修道院だからな。」
警備隊長は頷いて。
「解った。金を渡すから、剣技を指導してやって欲しい。週1度でどうだ?」
「了解した。」
金額を決める交渉をしてから、外に出て、
まず、ジオルドが警備隊の一人と剣を交える。
ジオルドの強さに、あっというまに相手は剣を弾き飛ばされた。
「剣の使い方が甘い。もっと脇を占めてだな。」
エリオットも警備隊の一人一人に指導をしていく。
「基礎体力からなっていないな。腕立て伏せ腹筋、色々として筋肉をつけろ。」
等アドバイスをした。
子供達は騎士達にお菓子を貰って食べながら、椅子に座り楽し気にその様子を見て騒いでいる。
修道院へ戻ったら、畑で芋を収穫するのを一緒に子供達に収穫させたり、
一日はあっという間に過ぎた。
一緒のベットで眠る子供達の寝顔を見て、エリオットは思った。
ここも楽しいが、やはり王都に帰って、妻と子供達と共に暮らしたい。
何だか急に寂しさが襲ってきた。
子供達の髪を優しく撫でて、何とも言えぬ気持ちで眠りにつくエリオットであった。
こうして色々と子供達に経験させて、一週間があっという間に過ぎ、子供達をサリア自身が迎えに来た。
馬車に子供達を連れて行こうと、外へ出て見れば、久しぶりに見る妻サリアがそこに居た。
子供達に向かってサリアを指さし、
「ほら、母上だぞ。」
「わぁ母上っ。」
「母上っーー。」
サリアの元へ走って行くフェリクスとアイラ。
サリアはまずアイラを抱き上げて馬車に乗せようとすると、アイラが。
「父上も帰るよね?母上。」
フェリクスもサリアのマントを引っ張って。
「父上も一緒じゃきゃやだ。」
そう言って二人とも泣き出した。
サリアは二人の子供達に向かって。
「エリオットは一緒には帰らん。我儘言うではない。」
「うわーーーーん。父上っーーー。」
「父上っーーーーー。」
エリオットは心の底から辛さを感じた。あんなに子供達を泣かせてなんて俺は罪な事をしてきたんだろうか。
「サリア。本当に申し訳なかった。お前が俺と離縁したいと言うのなら、しても構わない。
その場合、お前は子供達と共に隣国へ戻るだろう?王位継承権がお前と子供達にはあるはずだからな。」
そう、サリアの兄にはまだ子供がいない。サリアはイーストベルグ公爵家に嫁いできたとはいえ、隣国の王女様なのだ。王位継承権は第二位である。子供達にも当然、第三位と第四位の王位継承権があるのだ。
「その場合は、二度と子供達には会わないつもりだ。泣かせたくはないからな。
慰謝料はそれなりに払う。本当に申し訳なかった。」
サリアはエリオットの近くへ行きその顔を見上げて。
「お前は浮気については反省していないのだな。子供達に対する反省はあっても。
私の心はどうなるのだ?私が傷ついた事をお前は思いやってはくれぬのか?前回もそうだった。反省する。しかし、また浮気をする繰り返した。今回許してもまた繰り返すだろう。私はお前とり…」
離縁するとサリアは言いたかったのだろう。だが子供達がワンワン泣いてそれを阻止する。
「わーんっ。父上と母上っ。一緒に帰るっ。」
「うわーんっ。別れるのやだっーー。」
ジオルドがとりなすように。
「親の離婚は子供達の心に大きな傷を残す。どうかサリア殿。離縁を思いとどまってくれないだろうか?」
その時、修道院から修道女達が庭に出て来た。
マリアーヌが、叫ぶ。
「エリオット様を連れ帰って貰っては困ります。エリオット様はわたくし達を助けて下さいました。ですからどうかこのまま、この修道院に居て下さいませ。あんな恐ろしい奥様の元へ帰らなくてもいいではありませんか。」
アイスリーヌがエリオットに近づき、その右腕を取り。
「エリオット様程の素晴らしい方はおりません。エリオット様の導きにより、わたくし達は幸せを賜りましたわ。どうか行かないで下さいませ。」
メリアーテもエリオットの左腕を取って。
「エリオット様を王都へお返しするのは寂しく存じます。どうかわたくし達と共に。
あんな恐ろしい奥様の元へ帰る必要ありませんわ。」
サリアは凄く不機嫌に眉を寄せて。
「エリオット。お前、修道院で何をやらかしていたんだ。」
「浮気なんてしていないっ。ただ、生きるための方法をだな。教えていただけだっーーー。」
その時、馬車が止まって、そこから、ジオルドの義父のアレン・キルディアス宰相と妻のイデランヌが出て来た。
「何だ。この騒ぎは。」
ジオルドが慌てて、アレンに挨拶をする。
「これは義父上。今、エリオットとサリア殿が揉めていた所です。」
アレンは非常に不機嫌に眉を寄せて。
「まずはエリオット・イーストベルグ。王都への帰還を命じる。一月も修道院にいたのだ。反省しただろう。ファルト王太子殿下から、しばらく王宮勤めをするようにとの事だ。これは王太子命であり、断る事は死罪を意味するぞ。」
そして、ジオルドの方を向き。
「ジオルド・キルディアス。王宮騎士団長へ復帰を命じる。副団長が悲鳴を上げている。
こちらは王命だ。」
エリオットは、アレンに向かって。
「ジオルドから話は聞いているとは思います。御覧の通り、この修道院は修繕が必要な所が多々あり、生きて行く食事を確保するのがやっとの状態です。せめて修繕する費用を捻出しては貰えないでしょうか?」
アレンは修道院の様子を見渡して。
「解った。善処しよう。」
結局、サリアと子供達と共に、修道院の皆に見送られながら、馬車に乗るエリオット。
エリオットの両脇にくっついて眠る子供達。目の前のサリアは不機嫌に。
「お前になんで罰が当たらないのか…」
「結局、離婚はするのか?」
サリアは思いっきりエリオットの頬をぶった叩いた。
「お前が無能な男だったら、とっくに離縁しているのに。なんでお前は魅力的なのだ。」
「そもそも、無能な男だったら、女が相手をしないと思うが…。」
「ああ…愛しているっ。愛しているっ。気が狂いそうにエリオット。愛しているっ。
ああ、どうして私はお前と別れられないのだろう。他の女に愛を囁いた他の女を見つめたお前の首を斬り落として抱きしめたい。他の女を触ったその手を、その腕を切り落として、私だけの物にしたい。他の女を…」
「もう、いい。サリア…。だから泣かないでくれ。」
エリオットはサリアの手を正面から両手で握り締めて。
「もう、酒は飲まない。浮気はしない。そうだな…。信じられないと言うのなら、誓約書でも作るか?サリア。お前だけだ。本気で愛しているのは。だからもう、浮気は絶対にしない。」
「それならば今度浮気をしたその時には…。お前の首を貰う。それでよければ、婚姻を継続しよう。」
「解った。その時には俺の命をお前に捧げよう。」
今度こそは、エリオットは反省した。
前は命が惜しかった。
だが、サリアになら殺されてもいい。そう本気で思えるようになった。
なんて幸せなんだろう。こんなにも愛されるなんて。こんなにも激しく愛をぶつけてくれるなんて。
そして、自分もサリアの事を愛している。
勿論、愛する子供達の為にも殺される訳にはいかないが。
その後、エリオットはジオルドと相談し、それぞれの公爵家からも世話になった修道院に多額の寄付をした。
少しは生活も潤うであろう。
ジオルドは騎士団長に復帰し、真面目な彼は生涯、妻子を大切にし、国の為に尽くした。
浮気者のエリオットは、色々あったけれども、今度こそ妻子を大切にし、王太子ファルトにも気に入られ、生涯王国の為に尽くしたと言う。