表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すとっぷばいざげえむ  作者: ジョブレスマン
4/39

ぼっちのシーカー、リンとマーセナリー登録2

 リンも一緒に、ルビイのいる一階へと向かう。


「登録の済んだ方はこちらへ」


 ルビイと思わしき白いローブを着た女に、個室へと案内される。「どうぞどうぞ」とルビイに言われるがまま、とりあえず仲良く4人ソファーへ腰掛ける。


「マーセナリーのみなさまへ、登録ありがとうございます。まずは現状の説明をさせていただきますね。みなさまのいるこの城塞都市『ブレーメン』はポリス共同体国家の中心的役割を担っております。人間以外にも、獣人族の方たちとも仲良くさせていただいております。しかし街の外にはゴブリンやオーガなど、我々と敵対している勢力がございます。国家の安全を守るため、広範囲に兵を派遣しております。都市の私兵団だけではなかなか補えず、マーセナリーのみなさまに助力をしてもらっている、という現状になります。クエストは岡の下にあるアゴラにて、ボードがございまいすので、そちらで情報を得ることができます」


「クエスト受注した、とかは確認いらないのか?」


 リンが訊ねた。


「ボードには国防省が承ったクエストのみが書かれております。もしそのクエストを受けたい場合は、一階の受付で申請する必要がございます。クエストの達成は、完遂された時点でマーセナーリーウォッチが知らせてくれます。報酬も国防省でお渡しさせていただきます。また、ボード以外にも、住人から直接クエストを受注することもできます。その場合は、国防省を通さずとも、その住人から報酬を受け取ることができます」


 ウォッチの説明ですが、とルビイは一息おいて、再び話し始める。


「ウォッチのボタンを一回押せば、マーセナリー様のデータが現れます。そこに、銀行に預けているコイン情報も存在します。ウォッチのボタンを二回連続で押していただければバーコードが出ますので、そちらを使って買い物もできます。現金化には、銀行に寄っていただく必要がございます」


 ふう、とルビイが息をついた。これを一日に何回してるんだろう。


「銀行なんてあったっけか」


 俺の問いに、「橋を渡って、商店区の手前にございます」とルビイはさらに続ける。


「特殊なクエストもございます。パーティ専用クエスト、クラン専用クエストなど。こちらのクエストを受けたい場合は、この部屋を出て左手に進んでもらえれば、管理のものがいますので、一度行ってみてください。また、まだ実装されておりませんが、円形闘技場で行われるパーティ戦、クラン戦も、その部屋で登録することができますので」


 まあこの辺はゲーム中にもあったな。俺らは人数少ないからやったことないが。


「あともう一種類。緊急召集クエストがございます。緊急にマーセナリー様を招集することがある、ということですね。その際は、ウォッチからお知らせがありますので、できるだけ多くの方に集まっていただきたいと思っております」


「強制ではないのか」


 リンの問いに、「うーん。強制ではございませんが、大切なお知らせなどもあるかもしれませんので。また、経験値やゴールド、報酬アイテムはかなり良いものが用意されております。さて、なにか、質問はございますか?」


「え、ああ、まあそんなもんか」


「馬鹿かジェイル!あるある、まだまだあります!まず、アイテムバックは?使えるの?あと、モンスターのレベルとか、ダメージは表示されるの?それにそれに、ダメージ受けたらどうなるとか」


「ああ、えーっと、アイテムバックがですね。残念ながら四次元ポケットのようには使えなくてですね、まあ回復薬ぐらいは入れられるかと。まだお配りしておりませんでしたね」


 ルビイが、それぞれに巾着を手渡す。


「そちら、腰に引っ掛けることができます」


 にっこりと笑うルビイに、唖然とする。まじでただの巾着じゃん。


「おいおい、早くしてくれよ。いつまでまたせんだあ?」


 ノックもせずに男が入ってくる。ハルバートを背負った、無精髭の男だ。

 リンが睨む。男も睨み返す。

 あわあわあわ。俺とエイロンはあわあわする。どうするよこれ、とジェイルの方を見た。

 ジェイルは、喜々としてにらみ合う二人の様子を見ている。このままだと逆に焚き付けかねない。


「ま、まあまあまあ。お互いこの世界に来たばかりですしね」


 俺は、へこへこしながら間に入る。


「新入りか?おれたちゃ装備の更新に来ただけで、今日来たばっかじゃねえぞ」


 装備の更新?とルビイの方を見た。ルビイは我関せずという感じで、ぼーっと俺たちの様子を見ている。俺の視線に気がついたのか、説明を始める。


「ああ、言い忘れておりました。装備の更新。装備を変更した場合は、ウォッチのみでは更新できませんので、一度こちらへ来ていただく必要がございます」


「えらく冷静ですね、ルビイさん」


 俺が訊ねると、「ええ。マーセナリー同士ではダメージが与えられないようになっておりますので、口論で終わるかと」とルビイが淡々と答えた。

 リンも無精髭の男も沈黙する。なんか気まずい。


「こらルドルフ!」


 白装束の男が部屋に入って来た。


「またもめ事を起こして!すみません、みなさん」


 雰囲気的にクレリックかな。メガネをかけた、優しそうな人である。


「おせえんだよジース。ノアは?」


「・・・いる。ここに」


 消えるような少女の声。ジースと呼ばれたクレリックの後ろに、自分の体ほどの大盾を背にかけたおさげの少女がいた。


「なんでこの子が盾職なんだよ!」


 とエイロンが急に怒りだす。さっきまであわあわしてたのに。沸点がわからん。


「ノアが自分で選んだんだからいいだろうがよ」


 無精髭の男、ルドルフが言い返した。

 エイロンはさらにつっかかる。


「いや、あの子が盾職は違うだろ!お前がやれよ!」


「は?俺は火力重視なんだよ、うっせえな、じじい」


「・・・べつに。・・・いいじゃない」


 ノアと呼ばれた少女が、小さな、しかし怒りのこもった声で言った。


「え?あ、ああ、うん。いいよ!盾職いいよね!」


 とエイロンは態度を一転させ、何度も頷く。


「あのーすみませんがそろそろいいですかね?後ろも混んでくるので」


 ルビイがドライに言った。なんかビジネスライクな人だ。


「ああ、またなんかあったら聞きにくるよ」


 ジェイルが言うと、俺たちは出口へと向かった。エイロンはノアに手を振りながら、リンはルドルフを睨みながら、俺はなんとなくへこへこしながら。もっといろいろ質問したかったが。


「あ、最後に、この世界の住人をnpcと思わずに接してください。彼らにも生活があり、喜怒哀楽があり、意志があります。あと、リアルの話はマーセナリー間でもしないようにしてください。この世界を楽しんでいただくためにも。では、エンジョイ!」


 エンジョイ、ってことばがマニュアル化されているのか?とにもかくにも、俺たちは国防省を出て、アゴラへと歩いていく。


「変なやつらだったな」


 先頭を歩くジェイルが言った。


「ノアたん可愛かったなあ」


「エイロンよ、ゲーム内だからいいが」


「リアルではなんねーよ、ジョブレス。それが紳士のたしなみさ」


 エイロンは胸を張って返した。


「しかし、あいつら有名なプレイヤーだぜ。クランランキングはそんなにだが、あいつらのパーティーはランカーだ」


 リンが、険しい表情で言った。


「パーティーランキング?ってなんだっけ」


 ジェイルが訊ねた。


「なんだ、あんたら知らないのか?ゲームではパーティ戦、クラン戦が2ヶ月前ぐらいに実装されてただろ?そのランキングが毎週でてたんだよ」


「へー、ランキングまででんのか。パーティ戦って4人必要じゃなかったっけ?俺らじゃ足んねえからでてなかったんだよ。てか、ソロマーセナリーなのによく知ってんな」


 ジェイルが言うと、リンは「ま、まあね」とぎこちなく答えた。


「で、とにかく、どうするよ」


 とシェイルは俺を見た。


「うーん、わからないことが多すぎる。情報がほしいな。回復薬、商店の方に売ってんのかな。とりあえずそっちに向かって、そこらへんでマーセナリーっぽいやつから情報もらうか」


「ま、妥当な行動指針だな。さ、いくぞ」とリンが言うと、俺たちは歩きはじめた。


 ん?まてよ。


「って、お前はいつまでついてくんだよ!」


 ジェイルがリンに言った。俺と同じことを考えてたらしい。


「え?」


 リンは、驚いた顔で俺たちをみると、マスクに半分かくれた頬を赤くして「いいよ!なんだよ!」と走り出した。


「ま、まて、リン!」


 俺は、リンを呼び止めた。

 意外にもあっさりと、リンは立ち止まった。


「ジェイルよ、リンのレベルを考えると俺たちに有益だ。今後何があるかわからない」


 ジェイルはちいさくため息をつき、「俺も冗談でいったんだよ」と小声で言った。

 黙って立っているリンに、俺が声をかける。


「リンよ、仲間になってくれ」


「しょ、しょうがないね、なってやるよ」


 リンは、少し震えた声で、振り返らずに言った。もしかして泣いてる?めんどくさいやつだとは思ってたけど、かなり面倒なやつなのかもしれない。


「ついてこい!」


 リンが振り向いた。マスクごしにもわかるほど口をにんまりさせている。

 あ、馬鹿っぽいからいいや。


「お前口にやつきすぎい!」


 ジェイルの余計な一言に、「うるさい!」とリンは再び背を向けた。やっぱめんどくさいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ