焦げたカレー
すとんと足下がなくなるような感覚。落ちる。目の前が真っ暗になる。
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「は?え?リン、ジェイル!?」
ツクツクボウシが鳴いている。
ひんやりとした風が入ってくる。
焦げ臭い匂い。
そうだ、カレーを作っていたんだ、となおは立ち上がった。
急いで鍋をかき混ぜる。
涙が目に浮かんで、なおの視界はぼんやりとしいていた。
「ただいまー、って、あんた、カレー焦がしたでしょ!」
母の声がすると、なおは涙を拭った。
「なに泣いてんの」
「泣いてねえよ」
「それに、変な紐腕につけて」
「へ?」
「その、ピンクの紐」
「あ?ああああああ!?何番だっけ、リンは、二番、二番だよな?!」
「どうしたの、って、あんたどこいくの!?ちゃんと仕事探したの!?」
「まだ!」
「今日一日なにしてたの!?」
「すとっぷばいざげ〜む」
「はあ!?」
怒る母を背に、なおは玄関を出ようとした。が、立ち止まると、再びリビングへと戻った。
「ごめん、母さん、仕事、本気で探すよ」
「また急にどうして。嬉しいけど」
「こっちでもジョブレスマンだとまずいかなと」
にやにやと笑うなおに、母は「ゲームと現実の区別ぐらいつけなさいよ」とため息をついた。




