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すとっぷばいざげえむ  作者: ジョブレスマン
36/39

いざ、夜の街、アンヘーレへ

「で、ウィズはどうする?村に戻る?」


 ジースは、ウィズに訊ねた。

 日が傾きはじめている。アンヘーレまではまだ距離がある。


「わたしは、この馬鹿を村に返して旅に出ます」


 とウィズは気を取り戻したザックをこつりと殴った。


「いって、やめろよねえちゃん」


 ザックいわく、本当に何も覚えていないとのこと。壷を持った男に魔法をかけられたらしいのだが、色々と情報が曖昧でなんとも言えなかった。


「その子はどうするんだ?」


 ジェイルは、ウィズの袖を持って歩く灰色の少女を見た。


「グレコは」


「グレコ?!」ジェイルが間髪入れずに反応する。


「え?ええ、私が勝手につけた名前です」


 ウィズが恥ずかしそうに答えた。


「ぐ、グレコってまた、ははは、グレーの女の子だからか?ひひひ」


 ジェイルの周囲に灰が舞い始める。グレコがジェイルを睨んでいる。


「いや、すまん、冗談。グッドネームよ、グッドネーム、なあジョブレス」


「は?ああ、いや、いい名前だよ!」


 絶対怒らしちゃダメだぞ!


「と、とにかくグレコは、私と行くといっているので。それに、壷の男に少し力を奪われたと言っているので、それを取り返さないと」


 グレコに視線が集まる。視線に気づいたグレコは、頬を黒くしながらも何度も頷いた。


「で、でも、また、操られるかも」


 ノアがぼそりと言った。


「あれは、騙されたのです。次は大丈夫です!」


 かくかくじかじかと、ウィズはあらましを話しはじめた。

 ウィザの一族がサントンから地図にない集落に移って間もない頃。サントンへ行くことは固く禁じられていたが、ウィズはこっそり集落を抜け、サントンの自宅に置いてきた服を取りに帰ったという。その時出会ったのがグレコであった。それからというもの、時折集落を抜け出してはグレコと森で遊んだり湖で泳いだり、パナラボ山へ行ったりと


「それはそれは楽しいものでした」


 遠い目をするウィズとグレコ。村の長老たちよ、お母さんよ、結構好き勝手やってるぞこの子。 

 しかし、事件が起きる。弟、ザックの失踪である。失踪後、監視の目が厳しくなり、ウィズは村を抜け出せなくなる。グレコにも会いたいし、弟も放ってはおけない。そこで、村を出る決意をしたという。


「サントンは、灰で覆われていて、明らかにいつもとは違いました。それだけでなく、なんとなくですが、グレコの怒りのようなものを感じたのです」


 しかし、肝心のグレコがいない。そこにひょっこりザックが現れる。連れて帰ろうとしたウィズであったが、意外にもにこやかなザックに「こっちへきて姉さん、おいしいスイカがあるんだ」と言われ、スイカに目のないウィズは、のうのうとついていく。すると、地面に描かれていた円陣が光り、黒いもやに包まれたという。


「そんときにはもう俺、操られてたんだって」 


「うるさい、この馬鹿。とにかく、私が騙されたせいなのです。そこで強力な暗示をかけられた私は、グレコに村を訪れるマーセナリーを襲うよう指示していたのです。本当にすみません」


 申し訳なさそうに、ウィズが俺たちを見た。いや、その状況でスイカについていくって。


「いや、君のせいじゃないよ」


 ジースが優しく微笑んだ。聖人ってのはいるんだな本当。


「ウィズよ、知ってたか?スイカって実は野菜なんだぜ」


 ジェイルが言うと、「え、本当ですか!?果物だと思ってました!」とウィズが驚く。


「うそだよ、うそ、ははは、これじゃあまた騙されるぞ」


「ジェ、ジェイル、ス、スイカは本当に野菜に分類されるよ」


 ノアがぼそりと言った。


「え?」


 前途多難。

 あれ、なんか忘れているような。



ーーーー

 ジェイルの腕に巻かれていたピンクの紐が、黒くなる。


「あっちだな。思ったより遠くない」


 とジェイルが歩き出す。


「なんでわかるんだ?」


「なんか頭に入ってくんだよ、ジョブレス。魔法だろ、魔法」


 一行は、ジェイルの先導で、アンヘーレとサントンの間にある森を進む。


「あ、いたいた」


 木々の開けた場所をジェイルが指差した。

 マスクをした女シーカーとハルバードを担いだ男のファイター。

 装備がぼろぼろになっている。しかも、明らかに二人の間に流れている空気が悪い。


「ルドルフ、大丈夫だったか?」


 ジースが歩み寄る。


「あ?ああ、って、ノア、お前どこほっつき歩いてたんだ?」


「いや、本当、今回ばかりはごめん」


 ノアが舌を出す。ルドルフは頭を掻いて「しょうがねえな」と顔を赤らめた。

 ん?あやすい。

 さて、リンに話しかけたいところだが、ぶつくさ言いながらこちらへ向かってくる彼女は、なんとも不機嫌そうで。


「リンさんよお、ずだぼろじゃねえか」


 空気を読まずにジェイルが話しかける。


「五月蝿い、こいつのせいだ!」


 リンがルドルフを指差すと「ああ!?」とルドルフがキレ返す。「まあまあ」とジースは苦笑いを浮かべる。

 ワープ魔法で飛ばされた二人は、その先で大型モンスターに相対したらしい。しかし


「こいつ、攻撃のことしか考えてねえし、チームプレイのかけらもなくて、私が何度フォローしてやったと」


「ダメージソースほぼ俺だったろうが!シーカーの攻撃力じゃ、倍の時間はかかってたぜ」


「はあ!?なにを」


 リンのことばを「カアー!」とヤタガラスが遮った。そして、なぜか俺の肩に止まる。


「てかお前はどこいってたんだ?」


 問うと「カアー、カアー!」と鳴いた。何言ってるかわかんねえが、このカラス、にたにた笑って誤摩化している感じはある。


「そうだ、あと変な壷のやつが逃げるように走って来てよ」


「壷の男!?そいつをどうしたんだルドルフ!?」


 とジースが興奮気味に訊ねた。


「こいつの小型爆弾が暴発して、壷の男も吹っ飛んだ」


「いや、なんか落としちゃって、やばかったかな?」


 とリンは顔を赤らめ俺を見た。


「いや、まあ、お手柄、なのか?」


 と俺は答えた。


「ははは、本当、君たちは面白いね。そうだ、ジョブレス、僕たちは地図にない集落へ一度寄るよ。ウィズの家族にことのいきさつを話さないといけないしね。ザックくんも僕たちが送り届けよう」


「ああ、なら俺たちもいくよ」


「いや、君たちはエイロンくんが待っているだろうし、それにーー」


 ジースは、横目でリンとルドルフを見た。まあそろそろ別れた方が懸命だな。


「そうだな。そうさせてもらうよ」


 クランルームの住所を交換し、ジース一行と別れのときがきた。


「君たちと組めてとても良かったよ。こんな優秀なパーティ、なかなかいなんじゃないかな」


「ジース、お世辞言い慣れ過ぎだって」


 と俺は照れながらに言った。


「い、いや、そんなこと、ない。ジェイルも、ジョブレスも、頼もしかった。また、組もう」


 ノアが言うと、シゼイも続く。


「塔からウィズを救う作戦、あの短時間であれだけのことができたんだ。本当に楽しかったし、ジョブレスとジェイルには感心しちゃったよ」


 いや、俺なんて、たまたま炎竜が使う炎系の魔法がつかえただけなんだが。


「いや、俺はそんなに」


「素直に喜んどけ、ジョブ」


 とジェイルが言った。

 自虐はほどほどがいいよな。


「そうだな。ありがとう、俺たちも楽しかった」


「っけ、俺がいたら一発だったっての」


「ル、ルドルフ、嫉妬?」


 とノアが言うと


「そんなんじゃねーよ!」


 ルドルフは拗ねた。

 ジースたちと別れ、アニマルプラネット、老魔法使いと戦士、旅に出たいからついていくと聞かないウィズとグレコを引き連れ、我らブラッディドールズは森を行く。

 森を抜けると、平野に出た。空が大きい。一本道の先に、ぽつりと街が見える。


「こっからが本番よ!」


 ジェイルは、にたりと笑った。

 眠らない街、アンヘーレ。リアルじゃおしゃれすぎる場所には行けないが、今はジョブレスマンだしね。カジノでナイスバディのディーラーとポーカーして、薄暗いバーのカウンターでカクテルを頼んで。いや、やっぱ恥ずかしいな。一人でルーレットでもしよ。


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