拍子抜け
チュートリアル開始。
俺は先輩を伴って、廃屋がずらりと並ぶ元々街だったかのような場所をゆっくりと歩いていた。……いや、ゆっくりなのは前方が暗くて、転んだら危ないからで、決して怖いから千鳥足になっているわけではない。
と、俺はこんな感じに慎重な足取りであるのだが、平岩先輩に限っていえば……。
「なんか、思ったより大したことないね」
ひたすら歩いているこの状況に飽きを感じているようであった。
「最初はきゃー怖い。何が出てくると思う? とか言ってはしゃいでいたくせに」
「だってー、歩いても歩いても古いオンボロ屋敷しかないんだもん。つまんなくない?」
いや、確かにそうだけども……。
「それに思ったより人多いし」
「まあ、チュートリアルですし。人が多くても不思議ではないですよ」
「なんか雰囲気ないよねぇ」
「はぁ」
これはチュートリアルクエスト。当然他にも新規で参入してきたプレイヤーが多く集まっている。ちらほら人影が見えてもおかしくはない。
雰囲気諸々のことを言っても仕方がないし、なんなら他のプレイヤーについていけばなんとなくでクリアできる可能性だってある。
「……先輩、このクエストは単なる余興みたいなもんです。さっさと終わらせて本編を楽しめばいいじゃないですか」
「うーん。……ああ、それもそっか」
チョロ過ぎ。
「チュートリアルのくせに思ったよりフィールドが広いので、他のプレイヤーの動きとかも観察しながら歩きましょう」
「はーい」
これは思ったよりクリアが難しそうである。というか、どこでに向かえばいいのか分からない。
フィールドのどこにいけばいいのかという細かな案内がない分ちょっと不親切な感じがする。チュートリアルでこの放任っぷりはいかがなものかと。
「あ、田中。あそこじゃない?」
先輩は気がついたように視線の先に指を刺す。
「だから、田中はやめてくださいって……」
「ほらほら、そんなこといいからさ」
「よくないんだよなぁ……」
「さあ、どんどんいきましょー!」
強引過ぎる。
とはいえ、平岩先輩の示した先には確かに何か光っているところがあって、恐らくあれが今回の目的地なのだろう。
それにしても、あんな遠くよく見つけたものだ。
軽く目を通す程度に見ていたら見逃していたかもしれない。流石に細かいところまでよく見ている。
急いで、光のある方へと近づいていくと、ふいに光は消え去りまた何もない状態へと戻ってしまった。どゆこと?
「なんか消えちゃったんだけど」
「そうらしいっすね」
「田中が走るから」
「いや、なんで俺のせいになるんですか!」
「なんとなく」
言いがかりじゃん……。
にしても、どうしたものか。手掛かりっぽいものも無くなってこれは手詰まりか?
そう思ってると前方から物音が聞こえてきた。
「ん?」
足音のようなもの。他のプレイヤーが来たと考えるのが普通であるのだが……。
「田中、もしかして待望のモンスターじゃない?」
「かもしれませんね。準備しましょう」
その足音は一定のリズムを刻んでおり、とても感情を持った人が歩いているようには思えなかった。
そして……。
「うわぁ……」
その足音を鳴らしていた者の姿があらわになった。
「……ねぇ田中」
「なんですか? あと田中はやめてください」
「これがチュートリアルの討伐対象?」
「恐らく」
「なんかさ……」
「はい」
目の前には俺と背丈が同じくらいの。
ヨロヨロした人形の爬虫類みたいなのが存在していたのだ。
まあ、当然拍子抜け。しかも数も多くなく、三体だけ。
「しょぼくない?」
「……先輩と同意見ですね。こんだけ歩いて、出てきたのがコレだとは思いませんでした」
接敵したはいいが、あまりにも残念な初戦となりそうである。