チュートリアル
二千五十年、四月。
今日は新作のVRゲーム発売日である。
フルダイブ型ゲームは以前からあるものの、クォリティが特に高いと期待される今回のゲームは、あちこちの売り場で即完売状態。早い人は1週間前から売り場に並ぶほど。
テレビでもニュースになるほどの熱狂ぶりに俺もつい、そのゲームが欲しくなってしまった。
……まあ。俺はと言えば、事前予約をしていたため難なく入手することができたんだが。
「ソフト一本で十五万って、いくらなんでも高過ぎだろ……」
想像以上に高額であったため、今月分の娯楽費を全て注ぎ込む形となった。
しかし、そうまでして手に入れたゲームソフトだ。楽しまなくては損でしかない。
「取り敢えず、起動して……って、ん?」
ソフトを本体に差し込み起動させようとした時、机に置いてあったスマホが震えた。
「誰だ? 日曜の昼間だぞ」
画面に目を向けると、会社の先輩からの無料通信アプリにチャットが届いていた。
『田中、もうクラウディア・オンライン買った?
買ってたらさ。悪いんだけど、チュートリアル手伝ってくんない?』
……うわぁ、面倒くさ。
『平岩先輩、会社の連絡用に作ったアカウントに私用の連絡するのはやめてください』
そう打ち込んで送信するとすぐに既読が付く。
『固いこと言うなって笑。
そんなんだから、真面目くんって呼ばれてるんだぞ』
うわぁ、マジでうぜぇ……。
というか、この人俺のこと好き過ぎでしょ。昨日からめっちゃ連絡くるんですけど。
会社で真面目に仕事して、あまり無口で周りと会話してない俺であるが、この平岩先輩だけは妙に絡んでくる。
相対的にこの人の前では饒舌にならざるを得ないのだが、はっきり言って迷惑である。ゲームも一人で黙々としたい派。誰かと共闘してワイワイする系ではない。
『すいません。
今日は少し予定があるので、お手伝いできそうにないです』
嘘であるのものの、こうまで言わないとこの人は納得しないだろう。多少の罪悪感を抱きつつ送信するとすぐに返信があった。
『なにそれウケる笑
休日の田中に予定なんかないでしょ。あ、私のプレイヤーID送るから手伝いよろしくー』
……この人酷い。嫌い。
忘れてた訳ではないが、この人は基本的にこちらの話を聞いてくれないんだった。いや、俺が嘘をついてこの状況を乗り切ろうとか考えていることとかお見通しなのだろう。
態度はとてつもなく軽い平岩先輩。
しかし、仕事は出来るし、人とのコミュニケーションも優れている。俺のこともよーく理解しているんだろうな。
どうやら、俺はこの人から逃げる事はできないようだ。……てか、最初から思ってたけど、なんで俺がクラウディア・オンライン入手出来てるって知ってたんだよ。怖っ!
ネット予約してたこと先輩に話してないんだけど。
「はぁ、仕方ないな」
俺は諦めて、憂鬱な気分のままにチャットを打ち込んだ。
『……分かりましたよ。キャラメイクとかあるんで、十分ほどお待ち下さい』
『サンキュー!』