クラスのカースト制度の下位層階級に居る “ 覚醒オチ ” は常に馬鹿にされ、貶され、差別され、嫌がらせを受け、パシリ扱いされ、虐められている。
オクス・クロルエード(15)も “ 覚かく醒せいオチ ” の1人りであり、クラスメイトのリーダーでもあるエンブラム・セセリエラージュ(15)と彼かれの取とり巻まき達たちからは、 “ オクズ ” と呼よばれており、クラスの笑わらい者ものにされていた。
クラスの誰だれよりもマーナの扱あつかいに長たけ、剣けん術じゅつでも負まけなしのエンブラムに敵かなわないオクスは、惨みじめで悔くやしい思おもいをしていた。
マーナが覚かく醒せいせず、剣けん術じゅつもエンブラム達たちに敵かなわず劣おとるオクスが、其それでも彼かれ等らの非ひ道どうな行おこないに対たいして、屈くっせず、抵てい抗こうし、負まけずに抗あながい、従じゅう属ぞくしないのには、其それなりの理りわ由ゆうけがあった。
自じ分ぶんが貴き族ぞくの生うまれだからではない。
情なさけない自じ分ぶんを何い時つも心しん配ぱいし、手てを差さし伸のべてくれる心こころ優やさしい幼おさ馴なな染じみみのエイシル・ブロンディル(15)を巻まき込こまない為ためだ。
貴き族ぞくには爵しゃく位いがあり、爵しゃく位い等とう級きゅうは以い下かの様ようになっている。
最さい高こう位いの爵しゃく位いは、〈 大たい信しん陸りく仰こう神しん神しんランビュサダレ 〉に授さずけられる天てん爵しゃく── 例たとえるならば≪ ランビュサダレ大たい陸りく ≫の真しんの持もち主ぬしである〈 皇コウ 〉に当あたる ──である。
其その下したに王おうキイ爵しゃくイグがあり、帝ていコォ爵しゃくティグ,大だい公こうグラデ爵しゃくュク,公こうデュ爵しゃくーク,侯こうマー爵しゃくキス,伯はくアノ爵しゃくール,子しバイ爵しゃくカン,男だんバ爵しゃくロン,騎き士しナイトと下さががっていく。
オクスは伯はくアノ爵しゃくールの息むす子こであり、エイシルは男だんバ爵しゃくロンの娘むすめであり、オクスの親しん戚せきでもある。
エンブラムは公こうデュ爵しゃくークの息むす子こで、取とり巻まき達たちは揃そろいも揃そろって侯こうマー爵しゃくキスの息むす子こである。
最さい悪あくながら、オクスは爵しゃく位いでもエンブラム達たちに勝かてていない。
オクスがエンブラム達たちに白しろ旗はたを揚あげてしまえば、忽たちまちエイシルとエイシルを慕したっているエイシルの大たい切せつな友ゆう人じん達たちの身みに危き険けんが及およぶ可か能のう性せいがあった。
其その為ため、オクスは自じ分ぶんがどんなに辱はずかしめを受うけ、惨みじめな思おもいをしても決けっして白しろ旗はたを揚あげて降こう参さんだけはしないでいた。
エイシルに惚ほれているエンブラムは、ボロ雑ぞう巾きんの様ように傷きず付ついているにも関かかわらず、一いっ向こうに折おれずに1人りで抵てい抗こうを続つづけているオクスが気きに入いらなくて仕し方かた無なかった。
“ 覚かく醒せいオチ ” としてクラスメイトに馬ば鹿かにされているオクスを一いち途ずに想おもっているエイシルを自じ分ぶんの女おんなモノにする為ためには、どうしてもオクスが邪じゃ魔ま者ものだった。
エンブラムは取とり巻まきと共ともに、無む抵てい抗こうなオクスを公こう衆しゅうの面めん前ぜんである広ひろ場ばにてコテンパンに痛いため付つけて負まかし、大おお恥はじを掻かかせてやろうと企たくらんでいた。
──*──*──*── マーナ学院
──*──*──*── 広場
エンブラムと取とり巻まき達たちの予よ想そうでは、計けい画かくは大だい成せい功こうし、上う手まくいく予よ定ていだったのだが、然そうは問とん屋やが卸おろさなかった。
其その日ひはエンブラムと取とり巻まき達たちにだけでなく、オクスにとっても運うん命めい的てきな日ひとなった。
エンブラムと取とり巻まき達たちに囲かこまれ、公こう衆しゅうの面めん前ぜんで寄よって集たかって痛いため付つけられたオクスは煉れん瓦がの道みちに尻しり餅もちを付ついてしまった。
トドメを刺ささされると思おもったオクスの目めの前まえに、見み知しらぬ少しょう年ねんが颯さっ爽そうと現あらわれ、マーナを纏まとわせたエンブラムの剣けんを見み事ごとに受うけ止とめていた。
オクスよりも背せが低ひくい小こ柄がらな少しょう年ねんは、剣けんではなく落おちていた木きの枝えだを持もっており、涼すずしい顔かおで受うけ止とめている。
少しょう年ねんはマーナを使つかっておらず、目めにも止とまらぬ速はやさで瞬しゅん時じに動うごくと野や次じ馬うま達たちやオクスが「 あっ! 」と声こえを上あげる間まも無なく、エンブラムと取とり巻まき達たちを甚いとも簡かん単たんに倒たおしてしまった。
クラスの誰だれよりもマーナを使つかいこなし、マーナを剣けんに纏まとわせ、剣けん術じゅつの腕うで前まえもクラスでNo.ナンバー1であるエンブラムを秒びょうで倒たおし、地じ面めんに尻しり餅もちと背せ中なかを付つかせたのだ。
取とり巻まき達たちも威い張ばるだけの事ことはあり、エンブラムに続つづく実じつ力りょく者しゃだった。
強つわ者ものである彼かれ等らが、マーナも使つかわずに木きの枝えだを構かまえた小こ柄がらな少しょう年ねんに呆あっ気けなく負まかされてしまったのだ。
ピンッ──と張はり詰つめていた空くう気きは一いっ変ぺんし、エンブラム達たちの面めん目もくは潰つぶれ、野や次じ馬うま達たちからは初はじめて辛しん辣らつな野や次じが飛とばされ、笑わらい者ものとなった。
生うまれて初はじめて公こう衆しゅうの面めん前ぜんで醜しゅう態たいを晒さらし、笑わらい者ものにされ、言こと葉ばにすら表あらわせられない程ほどの屈くつ辱じょくを味あじわったエンブラムは、自じ分ぶんよりも幼おさないであろう少しょう年ねんの口くちから止とどめとなる言こと葉ばを掛かけられた。