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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第三章 碧玉の森
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第九十三話

 

 碧玉の森(ジャスパーウッズ)を素材を探しながら三人で奥に進む。


 先週、薬師の三人に教えてもらったのはヒノキカグラの葉、白胡桃の実、裏白桔梗の根、人参菖蒲の葉など魔水薬(ポーション)の素材になるようなアイテム。


 魔水薬(ポーション)が値上がりし、同調して値上がりしてる魔水薬(ポーション)の素材も狙い目なのだろう。


 木を見つけても実は無く、葉っぱも大きなものは採取された後。場所によっては根っこを採取したのだろう。地面を掘り起こしたままボコボコになっていたりする。

 碧玉の森(ジャスパーウッズ)の浅いところは他の冒険者たちによってことごとく採取され尽くしている。


 他の冒険者に会ったことは無いけど、森に入ってるのは間違いない。


 昼休憩をとりながら午後の方針を考える。


「他の冒険者も入ってるし、もう少し奥に入るしかなさそうだね」


「あぁ、この辺りを彷徨(うろつ)いても採取され尽くしてるだろう」


「と言うことは、もう少し強い魔物(モンスター)が出てくるってことか?」


「うん。ハイリスク、ハイリターンだよ。

 リスクが高くなって利益を得られる可能性が上がる」


「それでいいんじゃないか?」


「私もいいと思う」


「それじゃ気をつけて奥に入ろう。

 危ないと思ったら自分の身を優先すること。

 念のために魔水薬(ポーション)を渡しておくよ。

 多分、かなり強力な魔水薬(ポーション)だから大きな切り傷とかを負ったら躊躇わずに使うこと」


「いいのか? 高価じゃないのか?」


「高価だけど生きるためには気にせずに使った方がいいから」


「ハクはそんな経験あるのか?

 なんか説得力があるな」


「……調子に乗って毒を吸ったことがある。

 あのときはヤバイと思った。

 結局軽い痺れだけだったけど、知らない魔物(モンスター)と戦って魔水薬(ポーション)で生き延びたから、魔水薬(ポーション)を使うべきだと思うし、魔水薬(ポーション)を作る薬師を尊敬するよ」


「そうか……」

「そうだったんだ」


「そして少し強くなった。

 だから、そんなこともあると思うんだ」


 値段を気にしたネグロスと経験を聞いて来たクロムウェルに赤の魔水薬(ポーション)を渡して歩き出す。






 徐々に森が濃くなる。

 樹々の密度が違う。


 人の出入りが少ない魔物(モンスター)領域(テリトリー)

 その中をネグロスを先頭にして歩く。

 クロムウェルも問題なくついて来ている。森の中を歩くことに慣れてないはずだけど、午前とは違う濃い森の中でも頑張っている。


「右手五十メートル先、香梅猪(プラムボア)


 ネグロスが足を止めて言った。


 樹々の隙間から香梅猪(プラムボア)の焦茶色の背中が見える。

 こちらを警戒してる雰囲気はない。


「どうする?」


 クロムウェルが聞いてくる。

 今日は僕とネグロスの指示に従うことに決めてるようだ。


「新しい剣を試してもいいか?」


「もちろん」


「それなら、ハクが短剣でバックアップ。

 俺とクロムウェルで挟み撃ちだな」


「了解」

「分かった」


 僕が腰鞄(ポーチ)から石製の短剣を二本取り出して、刃を研いでるうちに二人はかなり香梅猪(プラムボア)に近づいている。


 先にポジションに着いたネグロスが反対側のクロムウェルの様子を確認しながら細剣を抜いた。


 香梅猪(プラムボア)の動きを警戒しながら、クロムウェルを待つ。


 香梅猪(プラムボア)は相変わらず木の根に顔を突っ込んでいる。


 クロムウェルも無事にポイントに着いたようだ。

 二人がこっちを見て手を振ってきたので、小さく手を上げて返すと、作戦が始まった。


 二人が音も無く隠れていた茂みを抜け出して走り出す。


 僕も木の影から出て短剣を投げるための射線を確保するするけど、そのときには既に勝負がついている。


 前脚の付け根にネグロスの突きを受けた香梅猪(プラムボア)が動きを止め、直後にクロムウェルの大きく振り被った一撃で首を半分落とされた。


 一応、短剣を構えて走り寄ると二人に声をかける。


「早かったね」


「あぁ、この剣を早く試したかったからな」


「この剣の斬れ味は凄いな。

 今まで感じたことのない斬れ味だ」


「二人とも新しい剣を気に入ってくれたようで嬉しいよ。

 香梅猪(プラムボア)を仕舞うからこの周辺を調べようか。香梅猪(プラムボア)が何かを食べてるようだったし、何かあるんじゃない?」


「そうだな。香梅猪(プラムボア)のいるところには大抵、木の実か根があるもんな」


「それなら私も頑張らないとな」


 二人とも機嫌よく周りに散った。

 僕は香梅猪(プラムボア)の傷口を確認する。

 首への一撃はクロムウェル。骨の途中で止まっているので、もう少し力があれば斬り落とせただろう。


 前脚の付け根はネグロスの細剣。今回は一本だけ、突きだけに集中している。

 銀角犀(シルバーライノ)の皮を貫けなかったから一撃に集中したに違いない。その一撃は脚を骨を砕いて脚を貫いてる。


 午前中の銀角犀(シルバーライノ)には効かなかったけど香梅猪(プラムボア)なら一人で一匹を相手にしても倒せそうだ。


「お〜い。こっちだ。

 この葉っぱの裏が白いのが裏白桔梗だと思うんだけど、土を掘るのを手伝ってくれないか?」


 裏白桔梗の根は解毒薬の素材になる。

 ただし、その根は地中の深くに向かって真っ直ぐ伸びるので掘るのが大変だ……。


 三人分の鉄製のスコップを作ったけど重くて使いにくい。厚みとか加工がまだまだ下手だった。


 苦労して一帯を掘り起こして一メートル超の根を六本採取する。

 時間を忘れて土を掘り続けてたので、ソイツ(・・・)に気付くのが遅れた。


「ちょっと待って、静かに」


 咄嗟に声をかけて、耳を澄ます。

 二人も一緒に耳を澄ますと微かに唸り声のような音が聞こえた。


 ?


 何だ?


 裏白桔梗の根を腰鞄(ポーチ)に入れてスコップをその辺に放り出す。

 日本刀に手をかけて周囲の様子を探る。


 自然と三人でゆっくりと広がりながら周りを調べると、さっきネグロスが身を潜めていた茂みの方から音が聞こえる。


 再びネグロスが先頭になって進み茂みの向こうの様子を伺うと、また犀がいる。


 唸り声を上げながら木を押し倒して、木の根を剥き出しにしてそこから何かを食べている。


 遠目に見てると、その仕草と一緒に鮮やかな赤色の角が見えた。

 鼻先と両方の耳の上にあるトゲトゲの角。


 狂暴犀(バーサクライノ)だ。


 銀角犀(シルバーライノ)よりも体格が大きく、凶暴で力も強い。

 赤い角は暴れて倒した魔物(モンスター)の血がこびりついて赤くなったとか、興奮すると自分の血が充血して赤くなるとか言われてる。


 さっき二人には傷つけることさえできなかった銀角犀(シルバーライノ)よりも格上の魔物(モンスター)


 少し剣が良くなった程度では敵わない。


 ここは逃げだ。


「二人とも、今日は撤退だ。とにかく森に入って進んで来た道を戻る。いいね?」


 グォッ!


 さぁ走って逃げようとした瞬間に狂暴犀(バーサクライノ)がこちらに気付いた。


 マズい。


「二人はすぐに逃げて!

 僕は後から追う!」


 ネグロスがすぐに飛び出したけど、クロムウェルが動かない。


「何してるんだ!

 早くここから離れて!」


 狂暴犀(バーサクライノ)が木をへし倒しながら、突進してくる。


「早く!」


「嫌だ。私も戦う!」


 狂暴犀(バーサクライノ)との距離は三十メートルを切った。

 こうなっては狂暴犀(バーサクライノ)を撒いて逃げるのは難しい。

 一度は攻撃しないと逃げ出す隙も作れない。


 ネグロスだけが距離を取った位置から不思議そうにこちらを見てる。


 こうして二対一の戦いが始まった。




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