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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第二章 双子迷宮
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第六十四話

 

 仮眠から目覚めると腕時計を見る

 何も表示されないので慌てて魔力を流すと一番上の段が三万代を表示した。


 単純計算で朝七時頃。

 しっかりと眠ったことにびっくりしながら、周囲を確認し身だしなみを整えると、軽く朝食を摂る。

 今日は四十階層を目指す。

 二十階層の後半で怨霊(ゴースト)が出たはずなので、それまでには新刀の使い勝手を試してみるつもりだ。


 日本刀を何本も作れるかどうか不安だったけど、昨日無事に作れたので問題ないだろう。

 ガンガン使って試行錯誤した方がいい。




 細々(こまごま)とした通路を歩きながら魔水薬(ポーション)を探して歩いていると蘇生屍体(レブナント)の団体が小部屋にいた。

 経験上、こういう場所で魔物(モンスター)を倒した場合にアイテムが見つかるので、新刀の実験を兼ねて魔力を纏わせると小部屋に飛び込んだ。


 端の方に弓使いの蘇生屍体(レブナント)がいたのでそいつから始末して数を確認する。

 やはり新刀ではイマイチ斬れない。蒼光銀(ミスリル)のような斬れ味が出ない。

 それでも力任せに刀を振り切って、胴体をへし切った。


 残り五体の蘇生屍体(レブナント)が殺到して来るので、頭と首を狙って効率的に倒す。

 胴体でなければ、多少斬れ味が低下しても問題なく斬り落とせた。


 狙い通り赤い魔水薬(ポーション)があったので腰鞄(ポーチ)に入れた。

 (ボード)(ボックス)もいいけど、難易度の高い階層(フロア)を探索するには魔水薬(ポーション)を確保しておきたい。


 前回は麻痺蛾(パラライズモス)の鱗粉で危ない目に遭ったから黄色い解毒薬と赤い治癒薬は少しでも多く欲しい。




 そう言えば銀の短弓も試した方がいいか?

 蘇生屍体(レブナント)が出てきたから遠距離攻撃ができると少し楽になるかもしれないし。


 しかし短弓と日本刀、どうやって使い分けるかな。

 左手に短弓、右手で日本刀を片手持ち。


 ……違和感があるな。


 困るのは日本刀を腰に提げて、銀の短弓で射撃後の弓の扱いだよな。

 矢は自動で生まれるから持ち歩く必要がないし片付ける必要もない。問題は弓の方だ。銀色だから金属製の弓で多少雑に扱っても壊れないと思うけど、流石に弓で魔物(モンスター)を殴る訳にもいかないし。


 腰鞄(ポーチ)に入れるにはちょっと手間がかかる。

 収納庫(ストレージ)は口に出すのが憚られる。


 ……念じただけでいけないか?


 左手で短弓を持ち、矢を射たら心で収納庫(ストレージ)と念じる。

 ……仕舞えました。


 もう一度収納庫(ストレージ)と念じると短弓が掌の上に出てくる。


 慣れてくれば口に出さなくても思ったところで仕舞ったり出したりできるのかも。

 今までそんなトレーニングしてないけど、神授工芸品(アーティファクト)は魔力の流し方とか使い方とか、練習次第で結構応用できるようだ。


 しばらく右手に日本刀、左手に銀の短弓、この戦い方を試してみよう。

 どうせこの後は二十五階層で斬裂百舌(ティアシュライク)枯木巨人(グランツリー)が待っている。

 遠距離攻撃の光の弓をお見舞いしてやろう。




 色々と試しながら二十四階層を彷徨(うろつ)き、二十五階層への階段を見つけた。


 さぁ、狩りの時間だ。






 二十五階層の通路は静かだった。

 大通りに出ればすぐに数で押しつぶそうとする魔物(モンスター)どもが来るだろうが、今はまだ静かだ。


 二十階層より上の階層(フロア)は僕しかいない。

 前回は小さな鉄礫(てつつぶて)を散弾にして飛ばしたが、今回は光の弓で。

 ……いや、やっぱり斬裂百舌(ティアシュライク)は鉄の礫だな。あの数を弓で落とすのは無理だ。


 鉄の礫で先制してから光の弓で蘇生屍体(レブナント)だ。


「ミネラ、鉄の礫いけるか?」


 僕の問いかけに足元の地面が光り、鉄の礫が現れた。

 一山(ひとやま)分の鉄礫を握り締めると、続けて銀の黄金虫(アルゲントゥ・ミネラ)に追加分の鉄礫を頼む。


「大通りに出たら、追加の鉄礫を二山(ふたやま)分だ。

 頼むぞ」


 そう言って大通りに出た。

 僕が出た通路から十字交差点までは三十メートル程度。

 今回も中央に枯木巨人(グランツリー)、その上空に三十羽ほどの斬裂百舌(ティアシュライク)

 交差点には三十体ほどの蘇生屍体(レブナント)

 いい感じに集まっている。


 まずは右手に握った鉄礫(てつつぶて)を全力投擲。

 バチバチッと散弾に撃たれた斬裂百舌(ティアシュライク)が宙で弾ける。

 第二投、第三投と連続して鉄礫(てつつぶて)を投げると斬裂百舌(ティアシュライク)はほとんどいなくなった。


 蘇生屍体(レブナント)が僕に気付いてこちらに迫って来る。

 弓使いだけは遠距離で弓をつがえて狙いを定めている。


 僕は銀の短弓に魔力を流すと弦を引き一体の蘇生屍体(レブナント)を狙って弓を射た。


 その瞬間、四本の光の弓が弓使いの蘇生屍体(レブナント)を撃ち抜いた。


 何?!


 確かに弓を射る直前に弓使いの蘇生屍体(レブナント)の位置を確認したが、四体同時に射れるとは思わなかった。

 魔法的な特殊な矢なんだろうが凄まじい。


 試しに撃ち漏らした斬裂百舌(ティアシュライク)を狙ってみる。

 飛んでるのは、六羽。

 全てを狙って矢を放つと、光の矢が六本。


 六羽の斬裂百舌(ティアシュライク)を一射で撃ち落とした。


 はははっ。

 思わず笑ってしまう。


 この弓があれば遠距離から全て倒せるんじゃないか?


 今度は近づいて来る蘇生屍体(レブナント)の第一陣の頭を狙う。

 つがえた矢で狙うのではなく、視野を広く持って六体の頭を狙って射ると六体の頭が光の矢で爆ぜた。


 六体はいける。

 次は十体を目指す。

 第二陣とその後ろから来る蘇生屍体(レブナント)をまとめて十体ほどの視認して矢を放つ。


 十体の頭が爆ぜた。

 弓矢と言うよりも光の矢を放つ魔導具と思った方が良さそうだ。


 そのまま続けて矢を放った。

 十体の蘇生屍体(レブナント)が倒れて、後は枯木巨人(グランツリー)だけになった。




 取り巻きどもを倒したので十字交差点には枯木巨人(グランツリー)だけが立っている。

 光の弓が硬い樹皮にどこまでダメージを与えられるか分からないが、動きが遅いので色々試せるだろう。


 まずは枝先、暴れ回る枝先を捉えられるか?


 弦を引き、集中してタイミングを待つ。


 ……。


 ……。


 ここだ。


 三本の矢が三本の枝を落とした。


 速さと精度は全く問題がない。

 思った通りの場所を光の矢が撃ち抜いてくれる。


 続いて速射性能。


 あまり深く考えずに弦を立て続けに弾いて矢を放つ。


 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。


 弓なので続けて放つと言っても、こんな感じだ。

 一射一射は正確だし、枝先を確実に落としていくけど、これなら十本の矢をまとめて放った方がいい。


 そらなら、二十本はいけるか?

 ……弦を引いて、視野を広くして、視野全体で狙いを数多く作る。

 これは焦点を合わせるのとは違う目の使い方で、意識しないと結構難しい。

 狙うだけ狙って矢を放った。


 二十本ほどの矢が枝に当たった。

 それでも何本かは外れた。何本もまとめて狙うのは僕の頭の方がついていかない。


 十本ほどを連射した方が攻撃力は上がるだろう。


 パッと見て、十ヶ所ほどを狙って矢を放つ。

 パッと見て、十ヶ所ほどを狙って矢を放つ。

 パッと見て、十ヶ所ほどを狙って矢を放つ。


 うん。

 これだと洒落にならないぐらいの数を倒せる。


 最後は最大攻撃力。

 枯木巨人(グランツリー)を倒せるか?

 幹の硬い樹皮に効かなければ雑魚にしか使えない。


 思いっきり弦を引くと流す魔力も増し増しで矢を放つ。


 バンッ!


 枯木巨人(グランツリー)の幹が大きく抉れてるけど、貫通とはいかなかった。

 けど、これならかなり使える。


 もう一度大きく弦を引くと、増し増しの矢を十本イメージして、射る。


 十本の光の矢が握りから少し弧を描くようにして広がると、再び収束して枯木巨人(グランツリー)の幹に同時着弾した。


 ドンッと言う音とともに幹が砕けて枯木巨人(グランツリー)が折れた。


 おぉ〜。

 蒼光銀(ミスリル)の長剣よりも威力が高い。

 簡単にこんなに威力が出ていいのか?


 魔力を込めても壊れないので、ガッツリ魔力を流してるのが威力に繋がってるんだろうな。

 弦を引くのに少しは力を使うけど、この威力は魔力を込めた矢が作り出しているはずだ。


 僕の作った日本刀と迷宮産の神授工芸品(アーティファクト)では魔力に対する強度が違い、それが威力の違いになってる。




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