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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第二章 双子迷宮
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第六十一話

 

 僕とミユは商業地区で少し早めのお昼を食べている。

 これまた女性客の多いお店だ。

 スープとサラダの種類がたくさんあって好みでトッピングも追加できる。

 少し早い時間帯にも関わらず客席は八割方埋まっている。


「ワンシーさんって薬師として凄そうでしたね。

 ……年齢分からないですけど」


「あ、女性の年齢は内緒だからね。

 でも、ホント腕がいいんだよ。

 魔水薬(ポーション)はワンシーさんのところで買うって決めてる冒険者も多いんだから」


「確かに、魔水薬(ポーション)は信頼できる工房で買うのがいいですね」


「それにしても色々とびっくりしちゃった」


「そうですか?」


 テーブルの向かいに座ったミユは顎の下に手を当ててこちらを見ている。

 椅子に座っている分、立ってたときよりも顔が近い。


「シルバー君が強いのは知ってたけど、なんか知らないことだらけだった」


「色々と伝えてないこともありますから」


「そうだね。

 冥界の塔(ハデスタワー)で初めて会ったとき、シルバー君は全然迷宮のことを知らなさそうだった。

 今日も魔水薬(ポーション)のことを全然知らないように見える。

 それなのに見たこともない神授工芸品(アーティファクト)を持ってて、お金もたくさん持ってるでしょ。

 どっちが本当?」


 ミユがちょっと寂しそうに訊いてくる。


「どっちも本当ですよ。

 ミユさんに初めて会った日に、僕は冒険者になったし、初めて冥界の塔(ハデスタワー)に入りました。

 ただ、逃げるのが得意で、少し強いみたいです」


「嘘……」


「嘘じゃないですよ。

 ただ少し、強い魔物(モンスター)について話してないですけど……」


「強い魔物(モンスター)?」


「例えば黒妖犬(ヘルハウンド)とか。

 十階層の階層主(フロアマスター)に会ったとき、周りには腐死体犬(ゾンビドッグ)が三十頭ほどいました。

 そいつらを倒し続けてから黒妖犬(ヘルハウンド)を一騎討ちで倒してこの魔法鞄(マジックバッグ)を手に入れました」


「シルバー君そんなに、強かったの?」


「そうみたいですね。

 色んな人に驚かれます」


「そう、だったの?」


「最初から僕が強いって言ったのはモンテリ商会のヘンリーさんぐらいです」


「えっ、ヘンリーさんてそんな能力あったの?」


「よく分からないですけど、初対面の僕に色々と便宜を図ってくれました。

 僕が今お金を持ってるのは、ヘンリーさんのところで加熱板(ヒートボード)とか冷却板(クールボード)を買い取ってもらったからです。

 実際は魔晶石交換筒(エーテルカートリッジ)とかもありましたから、一日で大金持ちになりましたよ」


「……そうなんだ。

 謎が解けたけど、とっても不思議」


 昨日のことで僕の身辺調査をする人が出てきそうだし、ミユの誤解を解いておきたかった。

 ミユが知らないと言っても、相手が勝手に勘違いして、隠し立てするなとか言いそうな人もいるから知らないままでいるのは危険な気がしたのだ。


 僕がある程度強いのを知っていれば、ミユが無理をして守ろうとすることもないだろう。


 お店の外に、今朝金の麦(ゴールデンウィート)館で感じたのと同じ気配を感じたような気がした。

 こんな探るような気配があるから心配になる。




 ちょっとだけ謎解きをした後は具沢山スープを頂いて、のんびりしてきた。

 ミユも安心したら好奇心が出てきたようで妙にウキウキしてる。


「次はどこに行こうか?」


「ついでなんて、ギルドに寄ってもいいですか?」


「お休みの日にギルドに行くって物好きね。

 私も一緒にいていいの?」


「多分、すぐにすみますし大丈夫ですよ。

 モンテリ商会にも行きたいんですけど、まだ少し早いですし」


「そう?

 リナさんが私たちを見たら何て言うかしら? ウフフ」


「私は仕事なのに〜、って怒りそうですけど」


「あ、それも楽しそう」


 悪戯小僧みたいだ。

 まぁ、リナを驚かせるネタは幾つかあるから、どんな風になるか楽しみだ。




 商業地区から大通りに出て冒険者ギルドに向かう。

 お昼を終えた人たちが午後の仕事に向かう中、ミユと二人でのんびり歩く。


 まぁ普通に見て姉弟、でも毛色が違うから近所の知り合い、今日は普通の服だし冒険者には見えないよな。


 普通に冒険者ギルドに入って行くと、相変わらず周りの視線が痛い。


 いつもと同じ一番右のカウンターにリナがいる。


「こんにちは、ギルドマスターのギャレットさんいますか?」


「あ、シルバー君。 と、ミユ?」


 ギルド受付嬢のリナの表情が目を見開いて固まった。

 おい、何をそこまで驚くんだ?


「リナさ〜ん」


 ミユが小声でリナの名前を呼ぶと再起動した。


「あ、えっと、シルバー君が来たら会議室に案内するように聞いてるんだけど、何かあったの?」


「ちょっと色々ありまして。

 そうですか、会議室なら仕方ないです。

 ミユさん、しばらく飲み物でも飲んで待ってて下さい」


「は〜い。それじゃあの辺りにいるね」


 ミユはさっさとカウンター横の丸テーブルの空いてる席の方へ移動した。

 僕だけがリナに連れられて二階に上がって行くと、初めてギャレットと会ったのと同じ会議室に連れて行かれた。

 僕だけが中に入り、六人がけのテーブルのの真ん中に座ってギャレットを待つ。


「待たせてすまない」


 しばらくするとギャレットが慌てて入って来た。


「慌ててますけど、何かありました?」


「いや、色々とお前との窓口になってしまったからな、会えるときに会っとかないと、こっちはややこしいことになるんだよ」


「そうですか。大変ですね」


 まぁレドリオン公爵の指示に真面目に従おうとすると、そりゃ大変だろうな。

 放っておいても周りを固められるし逃げようが無い。


「そうだ。大変なんだよ。

 だから順番に進めるぞ。

 まず、ライセンス証を預かる。あの後、正式にBランクへの昇格が決まったから書き換えさせてもらう」


「早いですね」


 言いながら銀色のライセンス証を渡すと、ギャレットはすぐに扉の外に控えてたリナに渡して戻って来た。


「本当、異常な速さで手続きを進めたからこっちはバタバタだよ。

 次が三頭冥犬(ケルベロス)の頭と前脚の買取りは白金貨二枚、普通の金貨で二千枚。

 双頭番犬(オルトロス)三頭冥犬(ケルベロス)、その他の魔物(モンスター)の情報が金貨二百五十枚。

 神授工芸品(アーティファクト)の買取りが、

 原生樫(プリミヴァルオーク)の弓、金貨百枚

 原生樫(プリミヴァルオーク)の杖、金貨百枚

 捻転鉄刀木(ツイストタガヤ)の杖、金貨二百枚

 魔晶石(エーテル)クラスター、金貨三百枚

 魔晶石交換筒(エーテルカートリッジ)三種、合計七つで金貨四百十枚

 魔水薬(ポーション)四種、合計八つで金貨二百枚

 (ペン)二種、金貨二百枚

 (ボックス)三種、金貨三百枚

 (パイプ)三種、金貨三百枚

 (ボード)三種、金貨百枚

 神授工芸品(アーティファクト)合計で金貨二千二百十枚。

 これは買取りは自由に判断してもらっていい。

 全体の合計だと金貨四千四百六十枚だ。

 一応すぐに払えるように金貨と白金貨を用意してる。

 どうする?」


「凄いですね。白金貨を見てみたいので、白金貨を四枚にして残りを金貨でもいいですか?」


「あぁ、もちろんだ。

 パーティで配分するために白金貨を金貨に崩して買取りっていうのはあっても、一人で合算分全部白金貨にまとめてなんて要望聞くのは初めてだよ。

 それは置いといて、すぐに全部買取りで金額を用意する」


 そう言うと、今度は会議室を出て行った。

 三頭冥犬(ケルベロス)が想像以上の高額買取りになった。……どうせなら丸ごと持って来れば良かったと少し後悔した。

 けどまぁ、普通は買い取らないだろう。

 あんなの剥製にするために大金使うなんて、今回初討伐とか記念的な需要だと思う。


「待たせたな。金貨はもうしばらく待ってくれ、今、最終確認してる。

 ちなみにあのとき持って帰った深淵黒檀(アビスエボニー)の弓を金貨五百枚出すから、追加で買い取らせて欲しい。

 あのとき見せたアイテムでも幾つかは意図的に持って帰ったんだろうが、それでももし良かったら考えてみて欲しい」


「仰る通り、売っていいものだけ置いていったので、あのとき引き上げたものは売るつもりありません。

 すみません」


「そうか、やっぱそうだよな。

 分かった。それは問題無い。大丈夫だ。

 後は、永精木(エタニティウッド)のことだな」


 ……そう言えば魔力を纏える木のことを訊いてたわ。




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