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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第二章 双子迷宮
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第四十六話

 

 レドリオンの街、冒険者ギルド。

 前日と同じ三階にある小部屋に同じメンバーが集まっていた。


 ギルドマスターギャレット、Bランク冒険者ジェシー、Cランク冒険者パトリック。


「今日の結果ですけど、ここ二週間ほどで八組、四十三人の冒険者が行方不明のようです」


「八組? 多いな。

 ランクは分かるか?」


(ブロンズ)一組、(アイアン)二組、新人五組です」


「新人狩りか?」


「まだ分かりません。(ブロンズ)も被害に合ってるので、難航するかも知れません」


「分かった。

 今日の様子を詳しく聞かせてくれ」


「はい。今日は十組のパーティで冥界の塔(ハデスタワー)の一階層から十五階層までを手分けして探しました」


「十組の内訳は?」


(シルバー)一組、(ブロンズ)二組、(アイアン)七組です。

 (シルバー)咱夫藍(サフラン)のフランシスたちが入ってくれました」


咱夫藍(サフラン)か。若手の五人組だな。

 女性ばかりで黒猫のフランシスがリーダーだったか」


「はい。上の方を探すには魔術師が必要だろう。と言って協力してくれました」


「なかなかしっかりとしてるようだな」


「はい。連携も速いですし、やはり(ブロンズ)(アイアン)とは違いますね」


 主にパトリックが報告してジェシーが確認している。

 ギャレットはそれらを聞いている。


「それで、中の様子は?」


「別にいつもと変わりません。

 ただ落ちてるアイテムが多い印象です。

 ひょっとしたらパーティが少ないので、拾われずにポップしたまま放置されてる可能性もあります」


「感覚的にしろ、落ちてるアイテムが多いというのはパーティが減ってるのを裏付けているか……」


 皆が思案気に口をつぐむと、パトリックが何かを思い出したように話し出した。


「そう言えば、白毛の子供に助けてもらった、というパーティがいました」


「白毛の子供?」


「ほら、あの黒妖犬(ヘルハウンド)を倒した子供です」


「あぁ、シルバーか。

 アイツが冒険者を助けたのか?」


「はい。最近の様子を聞いてたら、碧落の微風(ブルーブリーズ)っていう新人パーティが子供の冒険者に助けてもらったって」


「そんなこともしてたのか?」


「そうみたいですよ。

 昨日、黒妖犬(ヘルハウンド)を倒す前の話みたいですけど……」


「ふ〜ん。

 シルバーは今日も冥界の塔(ハデスタワー)にいたのか?」


「いえ、いなかったです」


「シルバーなら、今朝ギルドに来たぞ」


「「えっ?」」


「昨日黒妖犬(ヘルハウンド)を倒した後、十九階層まで行ったらしい」


「「本当ですか?」」


「あぁ、ここにシルバーが持ってきた神授工芸品(アーティファクト)があるから見てくれ」


 ギャレットが予め用意していた湧水筒(ウォーターパイプ)火炎筒(ファイアパイプ)をテーブルに置き、ジェシーとパトリックに見せた。


「触ってもいいですか?」


「あぁ、好きに触ってくれていい。

 ただし、一つは火を噴くから注意してくれ」


「え? 火を噴く?」

「俺も見たことないアイテムですね」


 二人が同じタイミングで話してしまい顔を見合わせると、パトリックが頭をかいた。


「私も見たことのないアイテムです。

 横のボタンを押すんですよね」


 パトリックが(パイプ)を覗き込んだままボタンを押そうとしたので、ジェシーが慌てて止めた。


「おい、覗き込むんじゃない。

 筒先から火が出たらどうするんだ」


「あ、そうか。

 そうっすね。離した方がいいっすね」


 今度はパトリックが(パイプ)を握った右手だけを必死に伸ばしてボタンを押した。


 ゴウッ。


 筒先から一メートルほどの火柱が上がり、パトリックがビクリとした。


「結構な火力ですね」


 ジェシーが冷静に観察して、自分の持ってる(パイプ)と見比べてる。

 パトリックがボタンを離すと火が止まった。


「使い道が分からないですけど、凄いですね」


「金貨三十枚ぐらいになりそうです」


 ジェシーが値踏みした後、湧水筒(ウォーターパイプ)のボタンを押すと今度は筒先から水が流れ出た。


「おっと」


 すぐにボタンを離し、またボタンを押して、離して、押して離した。


「こっちは水ですね。

 火よりは水の方が人気ありそうです。

 水の方は金貨五十枚かな。

 ……これをシルバーが持って来たんですか?」


「そうだ。

 黒妖犬(ヘルハウンド)を倒して魔法鞄(マジックバッグ)を手に入れ、そのまま十九階層まで行ったらしい。

 ギルドに来たのは二十階層の階層主(フロアマスター)の情報が欲しかったみたいだな」


黒妖犬(ヘルハウンド)を倒してそのまま上がった?」

魔法鞄(マジックバッグ)を手に入れた?」


 ジェシーとパトリックがそれぞれ違うところに食いついて疑問の声を上げる。

 ジェシーにとってはソロで潜って階層主(フロアマスター)を倒した後も先に進むことが想像できないらしい。

 パトリックにとっては魔法鞄(マジックバッグ)が出たことが衝撃なようだ。


「そのようだ。

 十五階層の影を影隼(シャドウファルコン)だと言い切ってたし、十九階層に幽霊(レイス)が出たと言ってた。

 そして出して来たのがこの火炎筒(ファイアパイプ)湧水筒(ウォーターパイプ)だ。

 使い方が分からないと言いながら、普通にボタンを押してたぜ」


「十五階層の影が影隼(シャドウファルコン)ですか?

 影隼(シャドウファルコン)って迷宮の中にいるもんなんですか?」


「十五階層は大通りがあって天井が高いだろ。高いところから急降下してくるから壁際を歩くといいとか言ってたし、影隼(シャドウファルコン)なんじゃねぇか?」


「それで十九階層で幽霊(レイス)を見て、帰って来たって……。

 初見(しょけん)じゃ無理じゃないですか?」


「難しいだろうな。

 しかし原生樫(プリミヴァルオーク)の木剣は知らなかったようだ。

 訓練場にある原生樫(プリミヴァルオーク)が気になったらしくて聞いてきたからな」


「あれ? シルバーは登録試験で木剣を魔力で強化してましたよ」


「それは聞いたが、原生樫(プリミヴァルオーク)で練習した訳じゃないんだろう。

 何か別の訓練か、偶然か?」


「何かちぐはぐです。

 これまでどこにいたんでしょうね?」


「さぁな。それは分からないが失踪事件に関係してるかも知れないから、十分に警戒して動いてくれ」


「「はい」」




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