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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第二章 双子迷宮
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第四十四話

 

「確かに腐死体(ゾンビ)は弱いけど、それ以外は別に弱くないと思う。

 屍肉喰鳥(ハーピー)なんかは速いし初心者には難易度が高いだろう。

 継続的に稼げるかどうかの問題だと思うが……」


「それは冥界の塔(ハデスタワー)は稼げないってことですか?」


「そうだな。

 毎日冥界の塔(ハデスタワー)に入って稼ぐのは難しいと思う。

 あの小部屋を一つずつ確認して回るのは大変だからな」


竜の洞窟(ドラゴンケイブ)の方は簡単なんですか?」


魔物(モンスター)の強さは似たようなもんだろう。

 それでも、腐死体(ゾンビ)は売れないけど、巨大蛙(ヒュージフロッグ)は売れる。

 毎日稼ぐという点では巨大蛙(ヒュージフロッグ)を倒せば食事代になるけど、腐死体(ゾンビ)じゃ食えないからな」


「じゃあ、何で初心者が冥界の塔(ハデスタワー)に行くんです?」


竜の洞窟(ドラゴンケイブ)の方は自然と縄張りみたいなものがあるからな。

 どこに何がいるか知らない初心者には難しいんだよ。

 そこは人の少ない冥界の塔(ハデスタワー)ならトラブルにもならないし、戦闘練習にもなる。

 そんなところだ」


「ふ〜ん。ま、行ってみれば分かるか……。

 でも、どうして攻略階層数で差がつくの?」


「それは、挑戦者の数の違いだ。

 常にチャレンジするパーティがいれば、自然と攻略が進む。

 冥界の塔(ハデスタワー)にそんなパーティがいなかっただけだ」


「そうですか……。

 あ、そう言えば、訓練場の木剣の材料を教えて欲しいです」


「……あれか?」


「うん? あんなに堂々と置いてるのに秘密なんですか?」


「いや、そんな訳じゃないが、来て二日目の冒険者に聞かれるとな……。

 レドリオンの冒険者でそれを気にするヤツにはこの数年会ったことが無いからな」


「じゃあ、やっぱり特別な木なんですね」


「あぁ、竜の洞窟(ドラゴンケイブ)で取れる木だ。

 今はここまでだ」


「ふ〜ん。

 この(パイプ)の情報よりも大事なんですね」


「そうだな。

 (パイプ)は階層も聞いてるから、何とかなるだろうし。

 木剣はそんなに簡単に教えるとお前さんのためにもならないだろうからな」


「それじゃ自分で調べるしかないですね」


「あぁ、そうしてくれ」


「この(パイプ)はどうしますか?」


「どうせギルドじゃ値段をつけられねぇ。

 オークションになるだろうな」


「そうですか……。

 面倒ですね」


「仕方ないな」


「それなら、ここで一応検証しときましょう」


「あん? 何するつもりだ?」


「あぁ、実は三種類あるんですよ。

 それと魔晶石交換筒(エーテルカートリッジ)も幾つかあります。

 せっかくなので、ここで試しときましょう」


「いや、ここでか?」


「はい、どうせそんな威力のあるものじゃないですよ」


 僕はテーブルの上にある(パイプ)を触ると、裏面のカバーを外した。

 中に(ボード)のときと同じような窪みがあるので、魔晶石交換筒(エーテルカートリッジ)の中サイズをセットした。


 側面を探すと中央に小さなボタンがある。

 これがセレクターのようだ。


「行きますよ」


 カチッ。


 ボタンを押すと(パイプ)の先から水が溢れ始める。バシャバシャと出てくる。

 すぐにボタンから指を外した。


「便利ですね。これは湧水筒(ウォーターパイプ)です」


 次の筒は(パイプ)の先から火が出た。

 一メートルほどの火が出るので見た目は派手だけど、それほど威力がある訳じゃない。


 最後の筒は最初何か分からなかったけど、何も変化がなくて触りながらあーでもない、こーでもないと言ってたら、拡声器らしい効果が見つかった。


「一応、火炎筒(ファイアパイプ)拡声筒(メガホンパイプ)ですね。

 いつのオークションか分かりませんが、頼みます。

 オークションの前に公爵が買われるのであれば、それでも構わないです」


「おい、本当にそれでもいいのか?」


「はい。問題ないです。

 公爵がご存知ないよりは、公爵がご存知の上で買取りされるか、オークションに出されるかの判断に従いたいと思います」


「そう言ってもらえると助かるが……」


「貸しにしときます。

 どうせもう少し迷宮に潜るので、また出て来ますし」


「ははっ、この際だ。

 階層主(フロアマスター)も倒してくれるといいんだがな」


「情報次第で挑戦しようと思ったんですけど……」


「まぁ、そう言わずに何か情報があれば買取りするから教えてくれ」


「そうですね。

 ちなみに幾らぐらい出しますか?」


「今までは階層主(フロアマスター)を倒した一番手(プレミア)のヤツには情報料として金貨百枚出してる」


「安いですね」


「そう言うなよ。

 神授工芸品(アーティファクト)が高額で売れるんだから、ちょっとしたご祝儀みたいなもんなんだ」


「そうですね。情報だけで金貨百枚って言うのはかなり高額です。

 でも、簡単に確かめられないんじゃないですか?」


「そこは少なくとも階層主(フロアマスター)がいるかどうかで、倒したかどうかぐらいは確認できるさ」


「その場合、神授工芸品(アーティファクト)も見せないとダメですか?」


「そりゃ売らないにしても、見せてもらわないと証明にならないし、素材が無いんだから神授工芸品(アーティファクト)を見なけりゃ判断できねぇだろうよ」


「なるほど。分かりました」


「でも無理すんなよ。

 お前はまだ小さいんだから」


「そうですね。もう少し稼ぐ程度で抑えときます」


「あぁ、それじゃあな。

 私は部屋に戻らせてもらうが、何か他に用事があればリナに確認してくれ。

 じゃまたな」


 ギャレットは話すだけ話したら勝手に戻って行った。

 ギルドマスターって言うのは冒険者がなるのだろうか?

 礼儀に関しては言葉遣いも含めてグズグスだった。


「あのシルバー君。

 君、そんな強かったの?」


「えっ? 別に普通ですよ。

 神授工芸品(アーティファクト)はたまたまです。

 それに不思議なんですよね。皆さん何で魔物(モンスター)を倒して進むんですかね?

 逃げて進んだ方が早くないですか?」


「あ、そうね。

 腐死体(ゾンビ)とか放っておいて進んだ方がいいわね」


「ええ、そうです。腐死体(ゾンビ)と近距離で戦うのはとても無理ですよ」


「あぁ、なんだ。私も勝手に思い込んじゃってたみたい。

 そうよね、全部倒して進む必要ないわよね」


「まぁ、囲まれそうなときは戦いますけど、一番数の少ないところから逃げます」


「本当、無理しちゃダメよ」


 とりあえず戦闘狂みたいなイメージは払拭できたかな?

 ギャレットのおっさんと話してると、ただ魔物モンスターを狩りに来た冒険者みたいなノリだったから、もう少し控えめにしとかないとトラブルが寄って来て大変そうだ。


「そうですね。

 そう言えば冥界の塔(ハデスタワー)で男性二人、女性二人の四人組パーティに会いました。

 ボロンゴさんとミユさんっていう方がいたんですけど、リナさん知ってますか?」


「えっ? マユとミユたちに会ったの?」


「ええ。五階層で会って少し話しをしました。

 また今度、レドリオンの街の美味しいお店を教えてくれるそうです」


「それぐらいなら私も案内できるわよ」


「あ、いや、そうじゃなくて。

 今日の話は内緒にしておいて下さい。ボロンゴさんたちにはお世話になったので、階層のことで距離ができるのが嫌なんです」


「あぁ、それぐらい任せといて。

 ボロンゴもデクサントも意識しちゃって無理しちゃうかも知れないもんね」


「それと、ミユさんが迷宮を出たらリナさんに言伝してねって言ってたので、ソロですけど無事に帰って来たことを伝えてもらえると助かります。

 なんだか凄い心配してくれてたので……」


「うん。そうね。

 ミユはそんなところがある、ある。

 分かったわ。

 他に困ったことはない?

 私にできることなら教えてあげるよ」


「いえ、今のところは大丈夫です。

 昨日、調子に乗って頑張り過ぎたのでちょっと休みたいですし、また今度お願いします」


「そう? それなら休んだ方がいいわね。

 オークションが決まったら連絡するので泊まってる宿屋さんとか教えてくれる?」


「えっ? それ必要ですか?」


「何言ってるのよ。買取りとかオークションの内容によっては緊急で連絡を取る必要があることもあるの。

 だから、必要なの」


 僕は逃げきれずに金の麦(ゴールデンウィート)

 の名前を伝えてトボトボと宿屋に帰った。




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